LAN
すちと目が合った瞬間、 咥えたタバコは、ズボンの上に落ちた
LAN
思わず声を上げる。
白いフードも、はらりと 捲れる。
LAN
なかったことにしようと、 新しく咥えたタバコを地面にぐっと押し付ける。
勿体無い、 それが一番大きかったかもしれない。
すち
…引いたか?…
いや、こいつは昔一度…
ああ、そうだ、記憶、ないんだ。
LAN
もう一度こんな気持ちを味わうなんて
笑ってごまかす以外に、 方法はなさそうだ。
昔は怒られたっけな。こいつに。
知ってんのもこいつだけだったな。
また同じやつに見つかった。
記憶があってもなくても 鋭いやつだほんとに。
すち
ゆっくりと近づくすちに、 心臓の鼓動は徐々に早まる。
やめろ、来んな。
その思いでいっぱいだった。
やっと目の前に来て、 俺に向かって手を伸ばされる。
謎の威圧感。
LAN
咄嗟に目を瞑った。
…え?
すち
すちはそういった。
驚きが隠せない。
さっきまで瞑っていた目は いつのまにか大きく開かれていた。
そんな俺をみて小さく笑って、 すちは隣に座った。
すち
LAN
すち
そのすちはなぜか、 少しいつもと違う。
怒りもせず、引もせず、 責めもせず、殴りもせず、
すちは落ち着いて口を開いた。
すち
LAN
LAN
すち
LAN
すればすちは口を開いた。
俺がいじめられていることは 誰にも言ってない。
ひまちゃんにも、らんらんにも。
迷惑がかかる、と思ったから。 黙っていた。
らんらんたちが受験で忙しい日。
俺は学校の裏に呼び出されて、 いつも通り、殴られ、蹴られしていた
すち
体中の痣が、 悲鳴をあげた。
輝(あきら)
あきらたちの笑い声が聞こえる。
今日いたのは輝と緋奈樹と、水月と瀬菜。 それとあと、俺を押さえる二人ほど。
何も抵抗はできない。
すち
涙なんて出ない。
すでに出尽くしていたから。
すち
少し霞む視界。
輝の顔は笑っていた。
赤い光が入ってくる。
もう夕方らしい。
輝(あきら)
輝(あきら)
取り出したのは一本のタバコと、 ライター。
すち
それを俺の口へ押し込む。
変な味がする、
すち
つい吐き出してしまう。
変な臭いの煙も、 吐き気を誘う。
対抗しようにも、抑えられてるのと あざによる痛みのせいで、 動けなかった。
落ちたそれをまた、口に入れられる。
輝(あきら)
顎を上げられる。
みたくもない顔が目の前にある。
輝(あきら)
そう言えば、俺の腕を離す。
地面に突きつけられ、
最後には水月に背中を蹴られた。
水月(みつき)
水月(みつき)
…あれのどこが好きなんだよ。
口に入れられたタバコを吐き出す。
喉にまだ、何かがある気がする。
すち
すち
なんで俺がこんな目に、
タバコなんて吸いたくもない。
喉に住みつくその悪魔が、 俺の体を蝕んでくから。
…おれも、よわいな。
すち
心臓はまだ飛び跳ねていた。
何もかも、知らなかった。
こいつがいじめられていたこと。
こいつがタバコを吸っていたこと。
こいつが辛い思いをしていたこと。
それであって、あんな辛い思いを しているのに
LAN
そう呟けば、すちは俺をみた。
すち
LAN
すち
すち
その一言に、 すちの全てがかかってる気がした。
ずっと、胸を押される。
すち
すち
すち
すち
そう言って、立ち上がって、 すちはみんなの下へ走って行った。
口に咥えたタバコはもう短かった。
LAN
LAN
コメント
11件
師匠自分涙腺崩壊寸前ですわ( ˇωˇ )
話書くのうますぎです… 続き楽しみです!
すちくんも吸ったことあるんだなぁ 無理やりだけど。責めないところが優しいわぁ