相澤桜子
お母さん、おはよう
私の名前は相澤桜子(アイザワサクラコ)。母と二人暮らしの高校一年生だ。
相澤すみれ
あら、桜子、おはよう
相澤すみれ
朝ごはん食べてく?
二枚目の食パンをオーブンレンジにのせかけた母が私に尋ねる
相澤桜子
あっ…、大丈夫!ちょっと学校遅れそうだから
相澤すみれ
そう、あんまり蒼くんのこと待たせちゃダメよ~
相澤桜子
うん、わかってるよ
成瀬蒼(ナルセアオイ)は私の幼馴染みであり、恩人でもある。私が、こうして普通に高校に通えているのも、彼のお陰だ。
『あの事件』から、ずっとそばにいて私を支えてくれたから…
相澤桜子
じゃあいってきます
相澤すみれ
いってらっしゃ~い
母の声を背に家を出る。私は毎日、蒼と登下校をしてるので、学校に行く前に歩いて五分ほどの彼の家を目指す。
その時だったー。
???
やっと会えた…
???
桜子
相澤桜子
えっ?
名前を呼ばれ、振り向いてみた。目の前に立ってるのは、うちの高校の制服を着てはいるが、見知らぬ青年。
闇夜のような黒髪と、それと相反する陶器ようなの白い肌。端正な顔立ちはゾッとするほどの美しさだった。
相澤桜子
(でも、何でだろ…顔立ちが整いすぎているせいじゃない。なんかこの人、怖い…)
相澤桜子
えっと、どなたですか…?
???
え?おかしいな、絶対に忘れるはずないんだけど…
???
あぁ、そっか、桜子は僕のこと男だって知らなかったから…
相澤桜子
一体何の話を…?
???
僕の名前は一条翡翠(イチジョウヒスイ)。会いたかったよ、桜子。
そう言って、目の前の彼は美しい笑みを浮かべた
相澤桜子
…ッ!?
しかし、その瞳が私にある恐怖を思い出させる
相澤桜子
ウ…ウソ……
相澤桜子
だっ…だって、あ…『あの子』は…、うっ…!『翡翠ちゃん』は…
蓋をしようとしていた過去の記憶が呼び起こされるー。
相澤桜子
嫌だ…嫌だッ!
思い出したくもない、『あの事件』のことをー。