百物語体験

「産まれた人形」

気が付けば家庭科室にいた五人は周りを見渡し裁縫セットやミシンなどと共に散乱している布類に目を向けた。

アユに促されるまま「人形」を作り始めた五人は時間をかけて作り上げた「人形」をみて各々思うことを口にし始めた。

各々手にもった「人形」に息を吹き込む。が、特になにも起こらない。

「可笑しいな？」とアユが人形に背を向けた。その時だった。 さっきまで動かなかったハズのアユの人形がカタカタと動き始めたのだ。

腕を引かれ走り出すアユはさっきまで自分が居た場所に居る人の形をしたなにかを見た。

チイの言葉にアユ以外の全員が己のもつ「人形」に視線を落とす。ユユカも人形がわずかに動いた。 そして、

そんなことをいいつつも走り続けた五人は廊下の端に追い詰められていた。騒ぎ立てるユユカとソラの声を聞き流しながらアユは「そういえば階段とか無かったな」と思う。そして、唯一いまだに人形を手に持っているチイを見た。その人形はアユの人形を威嚇するかのようにモゾモゾと動いている。

その言葉に反応した人形はアユに飛び付いてくる。四人は焦ったが、アユは素早く人形を掴むとまるで子供をあやすかのように「たかいたかーい！」と人形を上に投げてはキャッチし、また上に投げてはキャッチを繰り返す。

しばらくアユが人形と遊ぶのを眺めていたが、暇になったのかメイとソラの人形をチイが回収しにいった。

そう言うチイに抱えられた2人の人形は小さく頷く。その足元にはユユカの人形もいた。

暫くして

「動く人形」 終了

気がつけば元の部屋に戻ってきていた。

あとがき