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リュウイチ
サナエは俺の運命の相手だ。長男である俺に譲れ！
リュウジ
は？なんだよ兄さん！
リュウジ
サナエは俺の婚約者だぞ！
リュウイチ
でも俺の嫁になるべき相手なんだ
リュウイチ
俺は今日、サナエと話してすぐに分かった
リュウジ
馴れ馴れしく呼ぶなよ
リュウジ
これまで『三次元女との結婚なんて男の墓場だろｗお前カワイソーになｗｗ』
リュウジ
とか言って両家顔合わせにも来なかったくせに、今更なんだよ
リュウイチ
彼女はそこらの三次元のバカ女どもとは違う！
リュウイチ
確かに髪は茶髪でビッチっぽくてそこは減点だが、それだけで判断してはいけなかったな
リュウジ
ビッチとか減点とか、弟の婚約者に対して何様だよ
リュウジ
彼女が茶髪なのは、クォーターだからだよ
リュウイチ
何だよ褒めてるんだぞ。彼女は俺の話を笑顔で、頷いて聞いてくれた
リュウイチ
『すごいですね～』って、俺の類稀なる知性を彼女はわかってくれたんだ！
リュウジ
それは婚約者の兄だから、下手なこと言えなくて笑って頷いただけだ
リュウジ
というか、初対面の女性にネットの男女論の話するなんて、
リュウジ
俺もう恥ずかしくて仕方なかったぞ！！
リュウイチ
何が恥ずかしいんだ
リュウイチ
俺の信奉するアルファツイッタラーの唱えてる内容だぞ！
リュウイチ
それを恥ずかしいと思うお前の方が、トレンドについて行けてなくて遅れてるんだ！
リュウジ
はぁ…
リュウイチ
まぁともかく、あの話を分かってくれる女なんて貴重だからな
リュウイチ
だから、サナエを嫁にもらうことにした
リュウジ
勝手に決めるなよ
リュウジ
第一、兄さんには既に嫁がいたはずじゃないか？
リュウジ
あの、魔法少女のルミカちゃんだっけ
リュウイチ
違う！ルミカちゃんは前の嫁だ！今はアイドルアニメに出てくる、エリナちゃん推しだ！
リュウジ
あーはいはい、じゃあその何とかちゃんと添い遂げてればいいじゃないか
リュウジ
『三次元女なんかよりあらゆる点で優れてる』んだろ
リュウイチ
お前バカかよｗ現実と架空の区別くらいつけろよなｗｗ
リュウジ
はぁ？
リュウイチ
ルミカちゃんもエリナちゃんも画面から出てこない
リュウイチ
その点、サナエは画面の外にいてくれる。触れ合えるんだ！
リュウイチ
つまり、俺も童貞卒業できるってことだ！
リュウジ
気持ち悪いこと言うなよ！！
リュウジ
言っとくけど、サナエには指一本触れさせねぇから
リュウイチ
嫉妬すんなよｗｗ
リュウジ
は？嫉妬？
リュウイチ
俺の知性に彼女が惹かれてるから、嫉妬してるんだろｗｗ
リュウジ
その惹かれてるっての、思い込みだから
リュウジ
長年ニートの引きこもりやってる兄さんに惹かれるとか、
リュウジ
それ本気で思ってんのか？
リュウイチ
あのなぁ、だからこそ彼女は俺に相応しいんだ
リュウジ
はぁ？
リュウイチ
サナエはバリバリ働いてるらしいからな。結婚後も働きたいと言っていた
リュウイチ
俺と結婚したら、専業主夫の俺を養ってくれたらいいんだ！
リュウイチ
どうだ、ぴったりだろう！彼女だって、働かせてやる寛大な夫が欲しいだろうし！
リュウジ
専業主夫ねぇ…。俺だってサナエの希望はわかってるし、結婚後は共働きの予定だぞ
リュウジ
第一兄さん、一日中家にいるくせに家事も碌にやらないじゃないか。母さん愚痴ってたぞ
リュウイチ
結婚したらやるに決まってんだろ
リュウイチ
なんてったって今の家事はボタン一つ！
リュウイチ
女どもが喚くほど大変なことじゃないってわかってるからなｗ
リュウジ
碌にやらないくせにわかってるのかよ…
リュウイチ
うるっせぇな、サナエは俺に賛同してくれるはずだ
リュウイチ
部外者のお前がケチ付けんな
リュウジ
あのなー、俺とサナエは婚約してるの
リュウジ
もう両家顔合わせも済ませたの
リュウジ
兄さんこそが部外者なんだよ、勘違いすんな
リュウイチ
往生際悪いねぇ
リュウイチ
ここは大人しく、長男である俺に婚約者を譲るべきだぞ
リュウイチ
お前は高給取りのエリートだからこそ、他にいくらでも女は寄ってくるだろう
リュウイチ
対して、弱者男性である俺はこの機会を逃せば
リュウイチ
二度とチャンスは巡ってこないんだ！
リュウイチ
だから、お前は婚約者を俺に譲るべき。それが世の中の為なんだよ
リュウジ
そもそも一度目のチャンスだって巡ってきてないと思うんだが…
リュウジ
っていうか、なんで世の中の為なんだ？
リュウイチ
俺が結婚できた方が、少子化解決に貢献するだろうが！
リュウイチ
そうやって弱者男性は救い上げられていくべきなんだよ！
リュウジ
引きこもってＳＮＳに溺れるようになってから、
リュウジ
屁理屈に磨きがかかってきたな…
リュウイチ
大体にして、お前はずっとズルいんだよ
リュウイチ
子供の頃から成績もスポーツも万能で、女子にモテモテでよ！
リュウイチ
俺は兄なのに、キモいキモいと女子どもに蔑まれて、
リュウイチ
どんなに惨めな思いをしてきたことか！
リュウイチ
その埋め合わせをするために婚約者くらい譲れよ！
リュウジ
別に万能でモテモテって程でもないが…
リュウジ
兄さんがキモいって言われてたのだって、兄さんが女子更衣室を
リュウジ
執拗に覗いたのが悪いんだろ。逆恨みすんな
リュウイチ
うるさい！お前には弱者男性の気持ちはわからねぇんだよ！正義ぶりやがって！
リュウイチ
見てろよ、俺達弱者男性を見下すお前に、思い知らせてやるからな！
リュウジ
俺達って、兄さん以外誰がいるんだよ…
～数日後～
リュウイチ
なぁ、今日ってサナエも家に泊まるのか？
リュウジ
そうだよ。外が急に大嵐になったからな
リュウジ
父さんも母さんも大歓迎してるよ
リュウジ
サナエには、兄さんに気を付けるように言っといたけどな
リュウイチ
おっ、俺を警戒してんのかぁｗｗ
リュウジ
兄さんの思う通りの意味じゃないだろうけど、警戒しないわけにいかないだろ
リュウジ
サナエに手を出したら容赦しないからな
リュウイチ
容赦しないったって、サナエが心変わりしたら終わりだろｗｗ
リュウイチ
いいか？単純なお前にはわからないだろうけど、女は強引なのが好きで、乱暴な男が好きなんだ
リュウイチ
加えて、俺にはAVで勉強したテクがある
リュウイチ
サナエが堕とされてから吠え面かくなよｗ
リュウジ
兄さんまさか、サナエを襲う気なのか！？
リュウイチ
さぁな。ま、せいぜい警戒してろよｗｗ
～数時間後～
リュウイチ
お、おい何考えてんだよ！！
リュウイチ
こんな、外の物置小屋に俺を閉じ込めるなんて！！
リュウイチ
早くここから出せ！家に入れろ！
リュウイチ
外が嵐だから風と雨が入り込んできて、冷たくて寒いんだ！！
リュウイチ
それに、スマホの充電もできない…頼む！！
リュウジ
は？誰が家になんか入れるかよ
リュウジ
サナエを襲おうとしやがって。俺も父さんも母さんも、許さねぇからな
リュウイチ
サナエの方から俺を誘惑しやがったんだ！！
リュウイチ
それをいいことに、こんな騙すような真似をしやがって…
リュウジ
だから誘惑なんかしてないっての
リュウジ
こっちこそ、兄さんのことまだ心のどこかで信じてたのに、がっかりだよ
リュウジ
それにしても兄さん、性欲に目がくらんで面白いくらいひっかかってくれたなー
リュウイチ
だ、だってまさかサナエがシャワー浴びて、居間に布団を敷いて寝るって会話を聞いて、
リュウイチ
覗いたら案の定サナエが寝てると思って襲ったら、
リュウイチ
それがまさか、茶髪のカツラをかぶった母さんだったなんて…！
リュウイチ
お、俺自分の母さんを…！！
リュウイチ
う、うわぁああああああああああああ！！
リュウジ
すげえよなー母さんも
リュウジ
昔柔道を習ってたからって、兄さんをすぐに組み伏せるんだもんな
リュウジ
ついでに言っとくけど、脱衣所で兄さんが嗅いでた女性物の下着も、
リュウジ
母さんの物だからな
リュウイチ
う、嘘だ嘘だ嘘だ…
リュウイチ
俺、母さんの下着を…お、おぇええええええええ！！
リュウイチ
許さねぇ…そこまでして俺とサナエを引き裂くのかよ！
リュウイチ
せっかくの運命の相手なのに！！
リュウジ
そのサナエは兄さんにこう言ってるぞ
リュウジ
『勘違いされて気持ち悪い』
リュウジ
『リュウジを愛してるのに、無職で拗らせた性格のお義兄さんに惹かれるわけない』
リュウジ
だそうだ
リュウイチ
ふ、ふざけんなよあのアバズレ！！
リュウイチ
この俺が、せっかく良い女だと見込んで結婚してやろうとしたのに！！
リュウイチ
俺を勘違いさせておいてこんな仕打ち…！
リュウイチ
結局あの女も、俺をキモいと言っていじめた女どもと同じかよ！！
リュウイチ
こうなったら、ここから出たら容赦しねぇぞあの女！徹底的に俺の力を分からせてやる！
リュウジ
その前に、兄さんが家から追い出されるけどな
リュウイチ
へ？
リュウジ
父さんも母さんも、兄さんに前からうんざりしていたが、今回の件で見限ったそうだ
リュウジ
追い出して勘当するってさ。もうニート生活はしてられなくなるぞ
リュウイチ
嘘だろ！？俺、息子なのに！大切な長男なのに！
リュウジ
いつまで長男だって威張ってるんだ？それしか威張れるものがないのか？
リュウジ
うちは別に、長男だからって贔屓するような家じゃないだろ
リュウイチ
うるさい！
リュウイチ
なぁ助けてくれよ。父さんと母さんを説得してくれよ
リュウイチ
俺達、兄弟だろ
リュウジ
冗談じゃない
リュウジ
俺も、大事な婚約者を襲おうとした兄さんを許せないからな
リュウイチ
結果的に襲わなかったろ！？むしろ嵌められた俺が被害者だ！！
リュウジ
でも、兄さんにとって喜ばしいニュースもあるぞ
リュウジ
ニートの兄さんに、職が見つかるんだから
リュウイチ
職？
リュウジ
あぁ。父さんの知り合いのやっている住み込みの工場に、兄さんを入れるんだってさ
リュウイチ
ふ、ふざけんな！！この俺を、工場なんていう底辺の職場で
リュウイチ
働かせようっていうのかよ！！
リュウジ
底辺？兄さんがそれを言えた口かよ
リュウジ
プライドだけ高いニートの方がよっぽど底辺だろうが
リュウイチ
俺は底辺じゃない！類稀なる知性と才能があるんだ！！
リュウジ
ちょっとはその甘やかされたプライドを、
リュウジ
ブラックな工場で叩き直してもらわなきゃな
リュウジ
そこは、元犯罪者が大勢働いていて、更生施設も兼ねているそうなんだ
リュウジ
兄さんにピッタリじゃないか
リュウイチ
は、犯罪者…そんなところで働かせようってのか…？
リュウイチ
ぴったりってどういうことだよ…俺を、そんなクズどもと一緒にするな！！
リュウジ
わからねぇのかよ。兄さんは犯罪者も同然だぞ
リュウジ
兄さんが襲い掛かったのが本物のサナエだったら、
リュウジ
そのまま最後までやってたんだろ？それが目的だったんだろ？
リュウジ
それが犯罪になることくらい、兄さんにもわかるよな？
リュウイチ
な、何が悪い！気持ち良くしてやろうとしたんだ！
リュウイチ
俺の偉大さを教えてやろうとしたんだ！！
リュウジ
つくづく救いようがないな…反吐が出るよ
リュウジ
二度と女性に近づくんじゃねぇぞ、犯罪者
リュウイチ
何でそんなこと言われなきゃならねぇんだよ！
リュウイチ
それより出せよ！スマホの充電がそろそろ切れそうなんだ！
リュウジ
知るか。あ、言っとくけど、工場には兄さんのお気に入りの
リュウジ
ルミカちゃんやエリナちゃんのグッズは持ち込めないからな
リュウイチ
そ、そんな…俺の癒しがぁあああああああああ！！
～後日談～
リュウジ
その後兄は、父に無理矢理押さえつけられ、
リュウジ
やってきた父の知り合いの車に最低限の荷物と共に乗せられていきました
リュウジ
現在では強面で筋肉質の前科者達にいびられ、
リュウジ
ミスを叱られながら、
リュウジ
朝から晩まで必死に働かされているそうです
リュウジ
あまりの多忙ぶりに、ネットでイキったり好きなアニメを見る時間もなく、
リュウジ
無駄に肥大した兄のプライドもすっかり萎み、疲弊しているのだとか
リュウジ
ニートの兄がいなくなって、家はすっかり明るくなりました
リュウジ
俺は無事にサナエと結婚し、幸せに暮らしています
リュウジ
兄が俺達を突き止められないように、実家も俺達夫婦も、遠くに引っ越しましたがね
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
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