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ここまで一気見しました … 表現力 , 想像力 , 言葉の選び方まで全てが綺麗で … とてつもなく圧倒されました … 続きも楽しみです 😖❤︎
主
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 花魁パロ
主
主
主
23,華の行列
朝、吉原はいつになくざわめいていた。
路地に人が溢れ、声が飛び交う。
噂は夜明け前から広がり、いつもなら遊女の支度を急ぐ人々さえ足を止め、道中が始まる通りへと群がっていた。
桃野屋の座敷。
らんは静かに白粉を塗られ、紅を差されていた。
衣装は鮮やかな深紅に金糸を散らし、背には豪奢な打掛が幾重にも重なる。
重みに耐える肩は震えていたが、その瞳は決して逸らされなかった。
紅鶴
なつが扇で口元を隠しながら笑う。
桃李
らんは低く息を吐いた。
桃李
こさめが頷き、裾を整える。
蒼霞
蒼霞
黈羽
みことが小さな声で呟いた。
やがて、鼓の音が遠くから聞こえ始めた。
それが合図だった。
楼主の声に導かれ、障子が開かれる。
光の中、桃李はゆっくりと足を踏み出した。
重たい下駄がぎしりと鳴る。
緊張で心臓は暴れそうだったが、一歩ごとに呼吸を整えた。
――転ばない。
――俺は花だ。
その想いを胸に、桃李は通りへと歩み出る。
外に出た瞬間、群衆がどよめいた。
好奇の目、侮蔑の声、そして圧倒される沈黙。
すべてを浴びながら、桃李は堂々と歩を進めた。
腰を沈め、八文字を描き、袖を翻す。
その一歩ごとに、豪奢な裾が地を流れ、陽光を反射して輝く。
黈羽が胸を張って後ろを守り、茈月は艶やかな笑みを浮かべる。
蒼霞は冷ややかに群衆を見据え、紅鶴は扇で華やぎを添える。
翠嵐は少し離れた楼の縁側から、その姿を見守っていた。
翠嵐
弱々しい声が、誇らしさに震えていた。
通りの中央に立つ桃李の歩みは、やがて一つの「舞」に変わった。
観衆は息を呑み、誰もが視線を奪われる。
罵倒の声は、次第に掻き消されていった。
代わりに、圧倒される囁きが広がっていく。
桃李はそれを耳にしながら、胸の奥で熱を燃やした。
――見たか。
これが俺たちの華だ。
やがて道中は折り返しに差し掛かる。
桃李の足は鉛のように重くなっていたが、その歩みは崩れなかった。
黈羽
群衆の中から、思わず黈羽の声が漏れる。
黈羽
紅鶴は目を細めた。
紅鶴
蒼霞は微かに笑みを浮かべる。
蒼霞
茈月が軽く扇を広げた。
茈月
茈月
その言葉に、四人の胸にかすかな不安がよぎった。
その背後、群衆の影の中。
一人の男がじっと桃李を睨みつけていた。
吐き捨てるような声。
男の手の中で、火打石が再び火花を散らした。
群衆の歓声に紛れ、その音を気づく者はいなかった。
桃李は最後の一歩を踏み出した。
高下駄が石畳に響く。
その瞬間、群衆から拍手と歓声が湧き起こった。
顔を上げた桃李の瞳は、緊張を超えた輝きに満ちていた。
桃李
その姿は、誰よりも華やかで、誰よりも危うい光を放っていた。
23・了
主
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡240
主
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