第二章
咲季
咲季
美桜
咲季は次の日、何事もなかったかのように席に座っていた。
いつもと同じ高さのポニーテールに艶のいいサラサラの前髪、短めのスカート。
特に変わった感じはなさそう。でも一つだけ気になることがあった。
美桜
咲季
きっと自分では気づいていないのだろう。昨日とは比べものにならないくらい細くなっていた。
まるで、重い病気にかかってしまったかのように…
咲季
私は席に着いた。
先生
どのくらい眠っていたのだろうか。
4時間目。ついさっきまで1時間目の始まりのチャイムが鳴っていたような…。
先生
私は席を離れてすぐに気づいた。
咲季の席が空いている。リュックも無くなっていた。
美桜
先生は顔を私の方へ向けてこう言った。
先生
私は少し心配だった。
1年の頃から早退など1度もしたことがなかったから。休んた事もなかったから。
2年生になったばかりの頃、咲季は1度だけ風邪をひいたことがあった。
咳が酷く、苦しそうにしている咲季を見て心配になった私は…
美桜
こう言った覚えがある。
でも、やっぱり咲季がいないと寂しいよ
咲季は、幼い頃に病気で母親を亡くし、父子家庭で育てられたという。
歳の離れた兄は、4年前に家を出て行き、それから会っていないという。
咲季のお父さんは夜遅くまで仕事で、家に帰っても誰もいない。
ただ、大きな部屋が広がっているだけ。
叫び出したいくらい悲しくて、苦しい生活を送っているはずなのに…
咲季はいつも笑顔だった。
悲しい顔をしている日は1度もなかった。
私はあの日、初めて咲季の"悲しい顔”を見た。
それは今までの辛い出来事を全て思い出しているかのような、悲しい顔だった。
あの時、私はなんと声をかけてあげればよかったのか。
それは、今でもわからないままであった。
次回に続く
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!