少し肌寒くなった金曜の夜、
高校から仲のいい女友達が 空になったジョッキを置いて
メニューを睨みながら聞いてきた
私
ちょっとペース早いんじゃないの、と宥めるように言いながら答えた。
私
私
友人はなにか嫌なことがあったらしく、悪酔いしてしまっている。
どうしたものか、と思いながらも
頭の中で 先程の友人の言葉を繰り返し噛んでいた。
私
彼女はここ2年、 恋人がいないそうだ。
2年前彼女が別れた時に
その原因を“方向性の違い”と 聞いた私と彼は
思わず顔を見合わせて バンドかよ、と笑った気がする。
頭の奥で微かに香るキンモクセイが懐かしい。
もちろん、彼女は そんなことは知らない。
私
私
私
と、ここで彼女は店員を呼び さっきと同じものを注文した。
あんたはどーする?と聞かれたのでウーロン茶をお願いする。
もっと呑もうよ、と誘われたが 丁重にお断りした。
注文を終えた彼女はまたこちらを向き直して言った。
私
だって、彼と結婚すると当たり前に思ってたから
そう言おうとしてやめた
もうとっくに忘れたと 思っていたのに
今日はなんだか彼の事ばかりを思い出してしまう
それはお酒のせいか、 結婚結婚と騒ぐ彼女のせいか
はたまた、私のせいか。
私
少し考えて、
私
結局、八つ当たる形で 返事をした。
私
私
私
ああ
こんなことを話していると 思い出してしまいそうだ
甘ったるい香りの君が こちらを見ている
あの日のこと
それを流すように ハイボールを呑み込む
私
私
ねえ、こんなの、馬鹿みたい
そう思わない?
過去の君に問いかけるけれど、 返事は無い。
私
私
お前もだろ、と返して 2人で笑いあった
PM23:30、金曜日の居酒屋
似た者同士の女2人の夜は まだ始まったばかり
コメント
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はじめまして またいつか.といいます 夜風に当たっていると色々なことを思い出してしまうなと、そんなことを考えながら書きました。 これからひっそりと自分の世界を描いていこうと思っています。 見つけてくれてありがとう。