蒼
(そろそろ、かな)
蒼
(和樹先輩と会う約束の時間は…)
矢野 和樹
おまたせ。蒼
和樹はベンチで蒼が座っている横に腰掛けた。
蒼
ううん。待ってないよ
蒼
……
矢野 和樹
………
矢野 和樹
俺、蒼に聞きたいことがあるんだ
蒼
……なに?
矢野 和樹
別に蒼との関係を終わらせたいわけじゃない
矢野 和樹
ただ……
蒼
……
蒼
(なに。なんだか嫌な予感が……)
矢野 和樹
俺のこと、好き?
蒼
……えっ
蒼
な、なんで?
蒼
好きだよ!
蒼
(なんで?本当にどうして?)
蒼
(僕は心の底から先輩が好きなのに……)
矢野 和樹
……
矢野 和樹
俺、蒼が好きだよ
そう言う和樹の目は真っ直ぐに蒼を見つめていた。
蒼
…!
蒼
私も、好きだよ
蒼
なんでそんな事言うの?
蒼
本当に大好きなのに
矢野 和樹
ごめん……
矢野 和樹
俺も、よく……わかんない
蒼
(なにそれ……)
矢野 和樹
……この前のことかなって思って
蒼
……!
矢野 和樹
確かに俺、怖かったよね
矢野 和樹
ごめん
蒼
違うよ!
蒼
和樹くんが怖かったんじゃない
蒼
(和樹先輩、こんなこと思ってたの?)
矢野 和樹
俺の手、強く振り払ったじゃん
蒼
それは……!!
蒼
(僕が蒼介であることがバレると思って……)
矢野 和樹
…なに?
蒼
……
蒼
(今、言うべきなんじゃないか)
蒼
(本当は男だってこと。)
蒼
(これから弁解したとしても、いつかは言うことになるんだ)
蒼
(後になればなるほど、先輩が深く傷ついてしまう)
蒼
(言え、僕……)
蒼
……実は
矢野 和樹
……
和樹は蒼のことを見つめた。
蒼
(あれ?)
蒼
……
蒼
(口は開いているのに声が出ない)
矢野 和樹
蒼…?
矢野 和樹
(なにか大切なことを言おうとしてる?)
蒼
……っ
蒼
(やっぱり言いたくない)
蒼
(先輩との関係を終わらせたくない……)
矢野 和樹
蒼……
蒼
(終わらせたくないけど、先輩が傷つくのも見たくない)
蒼
とにかく…
蒼
私は和樹くんが好き
矢野 和樹
……
矢野 和樹
気持ちは伝わってくる。
矢野 和樹
俺のは伝わってる?
蒼
もちろん!
蒼
(和樹先輩の気持ちは僕に伝わってる!!)
蒼
(僕に伝わって……)
蒼
……?
蒼
(「僕」に伝わってる…?)
矢野 和樹
蒼はやっぱり……俺のことが
蒼
ごめん……
矢野 和樹
え?
蒼
ごめんごめんごめんっ
矢野 和樹
な、なに?蒼?
蒼
(何してんだろ、僕)
蒼
(今気づいた)
蒼
(先輩が好きなのは僕じゃなくて「蒼」なんだ)
蒼
(僕と蒼は同じでも別物だ)
蒼
(先輩はきっと、「蒼」が本当に好き……でも僕は蒼介)
蒼
(「蒼」は結局はこの世にいない存在なんだ。)
蒼
(だから和樹先輩は……っ)
蒼の目から涙が流れた。
蒼
ごめん…っ
矢野 和樹
蒼!?泣いて…っ!?
矢野 和樹
(なんでっ!)
蒼
……ぅうっ!
蒼はその場に立ち上がった
矢野 和樹
蒼!待ってよ
和樹は立ち上がる蒼の腕を掴んだ。
蒼
放して…!
矢野 和樹
!!
和樹は蒼から手を離した。
矢野 和樹
(蒼…。)
蒼
うっ……
蒼
(最悪だ)
蒼
うわぁ~んっ!
蒼
もう嫌だぁ~……
蒼
どうすればいいんだろう……
???
……何してんの?