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第1話 - あ

2023年05月17日

#恋愛

結城真矢

イズミ

サツキさん～、悪いけど帰りにお茶請けのお菓子買ってきてくれる？

サツキ

またお義母さんのお友達を呼んでお茶会開くんですか？

イズミ

ええ。私の唯一の楽しみなのよ～

イズミ

お友達にも嫁には苦労してるみたいだからねー

イズミ

こうやって定期的に愚痴でも言い合わないとやってらんないのよー

サツキ

そうですか…先日も私の前でずいぶん盛り上がってましたもんね

サツキ

それはそうと、お菓子はどんなものがいいですか？

サツキ

どら焼きとかカステラとか、具体的なものを言ってくれると助かります

イズミ

お茶に合いそうなお菓子よ

サツキ

この前、私に任せると言うから買って帰ったら

サツキ

「こんなもの出せないって言ったじゃないですか～」

サツキ

また買いに行かされるのも嫌なので、何がいいのかはっきり教えてくれると嬉しいです

イズミ

なんでもいいっていってるでしょ！

イズミ

あ、でも安いのはダメよ。百貨店に売ってるようなものじゃないと

サツキ

わかりました。今日は残業があるので買って帰るのは無理ですよ

イズミ

ええー。なんで？今日中に欲しかったのに！

イズミ

残業なんかより、私の頼み事の方が重要でしょ？

イズミ

必ず、今日買ってきなさい

サツキ

今日は無理ですって

サツキ

どうしても今日じゃなきゃダメなら、カズキ君にお願いしてください

イズミ

え、カズキに…？

イズミ

カズキにお願いするほどのことじゃないからいいのよ

サツキ

でも今日中に必要なんですよね？

イズミ

そうだったんだけど、あなたが無理ならしょうがないわ

イズミ

明日は必ず買ってきなさいよ

イズミ

ほんと、使えないんだから

イズミ

やっぱり働くのは辞めて、家庭に入ったら？

イズミ

私がビシバシ鍛えてあげるから

サツキ

私は働くのも今の職場も好きですし…

サツキ

結婚の後も働くのが、結婚した時の条件でして…

イズミ

そうやって口答えばっかりして。生意気なこと

イズミ

近頃の女性は働き過ぎて思いやりの心っていうのがないのかしらねぇ

イズミ

年上を敬う気持ちが足りないっていうか

サツキ

お義父さんが亡くなって、お義母さんが1人で寂しいって言うから同居してますし

サツキ

旅行に行きたいと言えば、旅費やお小遣いを渡してますよね

サツキ

お義母さんの毎週の病院通いだって、平日休みの私がやってるんですよ？

サツキ

それでもまだ足りないっていうんですか…

イズミ

そういう問題じゃないのよ

イズミ

もう少し私の気持ちを分かってほしいの

イズミ

でも、わからないわよね、所詮は他人ですもの

イズミ

これだったらお姉ちゃんの所に同居をお願いした方がよかったかしら

サツキ

今からでも私がお義姉さんのところに相談してみましょうか？

イズミ

だから！そういうことを言ってるんじゃないの！

イズミ

もっとサツキさんの行動を改めて欲しいって言ってるの！

サツキ

何をどう改めて欲しいのでしょうか

イズミ

ご飯の準備を私にやらせたり

イズミ

保育園に孫を迎えに行かせたり

イズミ

私をあてにするのは辞めて欲しいの

サツキ

それってどちらとも、月に一度あるかどうかのお願いですよね…

サツキ

しかも、食事の準備をお願いした時は、私たちのお金で出前取るじゃないですか

イズミ

だからなに？文句がある！？

イズミ

私だって疲れてるの。しょうがないでしょ。

イズミ

私はね！あなたたちの家政婦じゃないのよ！

サツキ

私も家政婦だなんて思っていませんよ…

サツキ

でも一緒に生活するのなら、もうちょっと協力的でもいいんじゃないかなって

イズミ

そんなこと思うなら、あなたが仕事を辞めて家庭に入りなさい！

イズミ

一家の主であるカズキにまで家事をやらせるなんて、最低よ！

イズミ

あの子だって疲れてるのに、かわいそう…

イズミ

孫達だって朝から晩まで保育園に預けられるより、幼稚園の方がいいに決まってる

サツキ

もし私が専業主婦になったら

サツキ

今まで通り、お義母さんにお小遣いとか旅費とか渡せないですよ？

サツキ

それでもいいんですか？

イズミ

収入が減るなら節約しなさいよ！

イズミ

どうしてまず最初に私の楽しみを奪うって発想になるの？

イズミ

やだわーこれだから嫁って嫌になっちゃう

イズミ

姑に意地悪することしか考えてないんだもの

サツキ

それはお義母さんの方じゃないですか…

サツキ

私が何をしても嫌味かため息ばかり

サツキ

カズキ君には、お礼を言ったりしてるそうですけど、私はお礼言われたことありませんよ

イズミ

安月給の癖に、働いてるってだけで威張り散らかして

イズミ

サツキさんが働けるのだって、カズキが許してるおかげなのよ！？

イズミ

それなのに、夫にも姑にも感謝の欠片もないだなんて

イズミ

ほんとに…こんな嫁で私恥ずかしい…

～数日後～

イズミ

サツキさん、あなたの買ってきたお菓子、やっぱり最悪だったわ

イズミ

センスなし。あんなんじゃ、出さない方がまし

サツキ

でもお義母さん、この前はあそこの和菓子美味しかったって言ってたじゃないですか

イズミ

あれはカズキが買ってきてくれたからそう言ったのよ

イズミ

あのお菓子は食べずに捨てといたから

イズミ

代わりに冷蔵庫にあったものを出させてもらったわ

サツキ

え…

サツキ

冷蔵庫のものって何を出したんですか？

イズミ

冷蔵庫にホールのケーキがあったでしょ？

イズミ

あれを出させてもらったわ

サツキ

冷蔵庫にあるホールケーキ食べちゃったんですか！

イズミ

あら～？なにかまずかったかしら？

サツキ

それ娘の誕生日ケーキなんですけど！！

イズミ

へ？

イズミ

ユイちゃん…今日が誕生日だったかしら？

イズミ

でもケーキの上に誕生日おめでとう、とか何も書いてなかったわよ…？

イズミ

ケーキだって普通のものだったし。ちょっと味が薄かったぐらい

サツキ

娘がアレルギーなの、知ってますよね！？

サツキ

万が一を考えて、そういうのも控えてるんですよ！

サツキ

その代わり、家族で毎年誕生日おめでとうってメッセージカードを作ってるんです

サツキ

私はともかく、娘にまでそんなことするなんて…

イズミ

大袈裟に言って

イズミ

たかがケーキでしょ？

イズミ

私がかわりに違うものを買ってきてあげるわよ

サツキ

特注品なんで、どこにも売ってないですし

サツキ

娘のアレルギーのことも忘れるお義母さんの買ってきたケーキなんて食べさせられません

イズミ

しょうがないじゃない。私何も聞いてないんだもの

サツキ

カズキ君はどこに行ったんですか？今日休みでしたよね？

イズミ

カズキ？カズキならスーパーに行ったけど。

サツキ

カズキ君から何も聞いてないんですか？

イズミ

あー、そういえば行く前に何か言ってた気がするわ…

イズミ

私その時、お友達と電話してたから頭に入ってなかったみたい

イズミ

食べちゃったものはしょうがないわね

イズミ

私も悪気があってやったことじゃないのよ

イズミ

でも私が悪者になるのはいやだから、あなたの手違いってことにしといてね

サツキ

はあ？

サツキ

自分が悪いのに謝りもしないなんて…

サツキ

いっつも自分の都合に悪いことは私のせいにしますよね

サツキ

いい加減やめてください

イズミ

あらやだ

イズミ

怒っちゃったの？

イズミ

こんな下らないことで怒るだなんて

イズミ

融通が利かないんだから

サツキ

くだらない…？

サツキ

今日という日を、ユイがどれだけ楽しみにしてたのか知らないですか！

イズミ

あなたが専業主婦ならこんなこと起こらなかったんだけどねー

サツキ

またそれですか…

イズミ

辞めるまでずーっと言うわよ

イズミ

どーせあなたなんて安月給なんだから、この際辞めちゃいなさい

イズミ

あなたが仕事を辞めたって大して困らないでしょ

サツキ

今までカズキ君の事を考えて黙っていましたが

サツキ

私、カズキ君より多く給料をもらってますからね

サツキ

年収だと2倍ほど私の方が多いです

イズミ

そんな…

イズミ

ウソおっしゃい

サツキ

ウソだと思うならカズキ君に聞いてみてください

サツキ

あと、結婚後も働いて欲しいって言ったのはカズキ君の要望なんですよ

サツキ

「俺が全力でフォローするから、サツキには結婚後も働いて欲しいて言われました」

イズミ

あなたよりカズキの方が年収低いだなんて、信じられないわ！

サツキ

やっぱり信じてくれませんよね…

イズミ

あなたの言うことなんて、何も信じられないわよ

サツキ

カズキ君の言うことなら信じられますか？

サツキ

同居を始めて1年も経ってませんが…

サツキ

今までされた嫁いびりをカズキ君に報告させていただきます

イズミ

嫁いびりだなんて…私はそんなつもりじゃ…！

サツキ

じゃあどういうつもりだったんですか？

サツキ

私だけをターゲットにしてるのなら、もう少し耐えようかと思いましたが

サツキ

娘を巻き込んだ時点で一発アウトです

イズミ

ひどいわサツキさん…

イズミ

私はあなたの為をおもって注意してきたのに

イズミ

そんな風にとらえてたなんて…

サツキ

でもカズキ君の前ではいい姑気取ってましたよね？

サツキ

実はこの前のお茶会の会話、スマホで録音していたんです

サツキ

後は今までのこのメッセージをスクショして…

サツキ

カズキ君がどう思うか確認してみましょう！

イズミ

ちょっと待ちなさい！

イズミ

そんなことするなんて卑怯よ！！

サツキ

裏で嫁いびりする方がよっぽど卑怯だと思いますけど～

～次の日～

イズミ

サツキさん…カズキが言ってたこと本当なの…？

イズミ

私をお姉ちゃんの所に行かせるって…

サツキ

カズキ君が判断したことですしね

サツキ

それにお義母さんも、お義姉さんの所に行きたいって言ってたじゃないですか

サツキ

願いが叶ってよかったですね♪

イズミ

お姉ちゃんは昔から容赦がないから…あっちに言ったらきっと働かされるわ…

イズミ

私は今みたいなゆったりとした老後を望んでるの

イズミ

働くなんてもう嫌よ…

サツキ

そんな悲観的にならず

サツキ

体を動かせば、嫌な事だって忘れられますよ！

サツキ

それに、血の繋がった娘と一緒に暮らせることを喜んだ方がいいんじゃないですか

サツキ

赤の他人と一緒に暮らすより全然マシだと思いますよ～

イズミ

サツキさん、今までのことは謝るわ

イズミ

本当に悪気がなかったの

イズミ

これからはわがまま言わない

イズミ

だから、このままここに居させてくれるよう、カズキを説得してくれない？

サツキ

嫌ですよ

サツキ

悪気なくあんなことする方が問題です

サツキ

素で性格悪いってことじゃないですか

サツキ

そんな人と一緒に暮らすなんて無理ですー！

イズミ

ごめんなさい、私も自分の態度を改めるわ…

イズミ

家事だってもう少しお手伝いするから

サツキ

どーせ口だけですよ

サツキ

今は謝っていますけど、すぐ元通り

サツキ

しばらくしたら嫁いびりに精を出しますよ

イズミ

あなたは私を誤解してるわ！

イズミ

私はそんな人間じゃない！

サツキ

お義母さんがどんな人間なんだろうと興味ないんです

サツキ

だって、私とあなたは所詮他人なんですから

サツキ

カズキ君のお母さんだから大切にしようと思っていたのに

サツキ

思った以上にクソババアだったんで返品させていただきます

イズミ

ク…クソババア…！？

イズミ

あなた、私に向かってそんなこと言っていいと思ってるの！？

イズミ

カズキに言いつけてやるんだから！

イズミ

下手したら離婚問題になりかねないわよ！

サツキ

別に言いつけてもいいですよ

サツキ

それで私を叱るような旦那ならいらないので

サツキ

まぁ…カズキ君は私の味方になってくれると思いますけど

サツキ

カズキ君、お義母さんの本性知って泣いてましたよ？

イズミ

どうせアンタが被害者ぶってカズキにあることない事吹き込んだんでしょ

サツキ

私はメッセージの内容とお茶会の録音を聞かせただけです

サツキ

そしたらすべてを察したようですよ

サツキ

職場で嫁姑問題で離婚にまで発展した同僚がいたようで、随分危機感を覚えてました

サツキ

今後は、私も子供達も、お義母さんと関わらなくていいそうです

イズミ

孫達とももう会えないの！？

サツキ

嫁いびりをする姑なんて、教育に良くないですもの

サツキ

カズキ君が嫁の味方をしてくれる立派な旦那様でよかった

サツキ

お義母さんの教育が良かったんですね♪

サツキ

じゃあ、明後日にはお義姉さんが迎えにきてくれるようなので準備しといてくださいね

イズミ

明後日！？そんなに早く！？

サツキ

お義母さんに手伝ってもらいたいことが多いみたいなので。

サツキ

行く場所がないって人もいるんだから、お義母さんは幸せですよ

サツキ

お元気で！

イズミ

まって！もう一度話し合いましょう！ねえ！！！

～後日談～

サツキ

義母はお義姉さんのお宅で、ビシバシ働かされているようです

サツキ

一度、謝罪の電話がありましたが「私はもう関わるなと言われているのでと聞き流しました」

サツキ

カズキ君も、もう会わなくていいといってくれているので、その言葉に甘えようと思っています

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結城真矢

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