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やっぱMelt@🫠さんの作品最高だわ.....
初めて喫茶海風にお邪魔したあの日以来、私はすっかりあの喫茶店がお気に入りになってしまった。
穴場にあって佇まいが落ち着いているからか、何時行っても私以外の客を目にすることはほとんど無かった。
中也は『昼時にはお客さんが沢山来る』と云っていたので、恐らくタイミングが合わないだけだろうけど。
まあ、私はゆったり出来るので此の誰も居ない時間の方が屹度居心地が善いだろうと思う。
中也
今日も今日とて、私は『海風』へと足を向ける。ドアベルがカランカランと音をたてた。
太宰
中也
店内には今日もお客さんは誰も居ないようだった。
キッチンの奥からエプロン姿の中也が出てきた。カウンター席に座ると、私の前に水の入ったコップが置かれる。
太宰
太宰
中也
中也
太宰
私は中也にそう答えると、鞄の中からノートパソコンを取り出した。電源を入れて其れをカウンターの上に置く。
中也
太宰
太宰
私がそう云うと中也は納得した様に頷いて、またキッチンに戻っていった。
私は仕事のときにしか掛けない眼鏡をして、パソコンに向き合う。
カタカタとキーボードを叩く音が暫く店内に響いた。其の間にも、私は中也が持ってきてくれた水を時折飲みながら、只管仕事に集中していた。
太宰
中也
太宰
中也
仕事が終わった私が中也にそう云うと、彼は少し笑って云った。私が伸びをしていると、席の上にまた、ハーブティーが。
太宰
中也
太宰
私はグラスの中の桃色をまじまじと見つめる。聞いたことの無い名前だ。
中也
太宰
グラスを持ち上げて、中の桃色をまじまじと見る。少しとろみのある液体がゆらりと揺れた。
一口飲むと、レモンの爽やかな酸味が広がる。後に残る風味に、微かに花の甘い香りを感じた。
太宰
中也
中也
太宰
私はグラスの中の桃色をまた見つめる。
中也
中也
太宰
中也が微笑んで私を見た。彼の笑顔を見ると何だか安心する様な気がする。
私は其の綺麗な双眸から逃げるようにハーブティーに目を落とした。
太宰
中也
中也
太宰
私がそう云うと中也はキッチンの奥に引っ込み、直ぐにガトーショコラを皿に載せて持ってきてくれた。
慣れた手つきでフォークを添えて、私の前に出してくれる。私はありがとう、と礼を云ってから一口頬張った。
口一杯に広がるチョコレートの味に思わず頬が緩む。しっとりとした食感に、ほのかなバニラの香り。
舌触りも滑らかで、疲れた身体が一気に生き返る様だ。
太宰
中也
中也が頬杖をついて私の顔を見ていることに気付いた。
太宰
中也
そう云うと中也はまたキッチンの奥に引っ込んだ。私は少し恥ずかしくなって、誤魔化す様にハーブティーを啜った。
太宰
太宰
中也
代金を支払って帰ろうとカウンター席から立ち上がると、ふと『ティーパック売ってます』の文字に目が付いた。
其れに気が付いた中也が一瞬目を丸くして、其れから少し微笑む。
中也
太宰
中也
中也が棚の方を指差す。其処にはハーブティーのパックが何種類か並んでいた。
中也
太宰
太宰
中也
私が少しだけ睨みつけると中也は楽しそうに笑った。
太宰
中也
太宰
中也
太宰
中也
太宰
私はそう返事をして、お会計を済ませる。
太宰
私は其のまま店を出て帰路に着いた。夕日が西に沈む中、私の心は少しだけ踊っていた。