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ルカ
ルカ
その日私は
初めて人を殺した
ルカ
客
ルカ
ルカ
あの日
実の親と一緒に私は業火に包まれて死んだ
はずだった
気が付けば私は装飾なんて施されていない木造の家の中にいて
助かったのか、なんて呑気なことを思いながら起き上がろうとすると
視線の先には、真っ赤に光る炎が見えて
あの日私は自ら炎の中に飛び込んだのに
その時は体がすくんで動けなかった
建物の造りは全て木だったし、今思えば灯油のような臭いもしてた気がする
火の回りが早くて私はあっという間に炎に包まれた
そこから先はよく覚えてない
今ここで働いている居酒屋の店主が助けてくれたらしい
幸い大きな怪我はなかったけど、あとほんの少し遅ければ私は炎に焼かれて死ぬより上から落ちてくる木の下敷きになって死んでいた
その時に掠った傷は今も肩に残ってる
命の恩人
なんだろうけど助けて貰ったことが嬉しい訳でもない
あのまま死ねたら
私は業を背負って生き続けることもなかった
生き続けることが償いになるとも思わない
償いたいとも思わない
ただ、今は楽しいから感謝はしてる
暗い話から一転
私が転生したと思われるこの世界についての説明を少しだけ
客
客
先ずはこの店についてから
この店は所謂万事屋
この店の主と、あとは私含めて2人のバイトがいて、計3人で切り盛りしてる。
普段はただの居酒屋なんだけど
ただの話し相手や落し物探し、人殺しまで
どんなことも受け持つ
ただ、正当な殺人以外はしないのであんまりそういう系統の依頼はない
正当な殺人って言ってもポリにバレないように動くから正当とは言えないかもしれない
いや、人殺してる時点で正当ではないか
罪を犯すような依頼も受けてることは表面には出てないので普段は平和な依頼ばっかなんだけど
今日は珍しく殺しの依頼が入った
なんでも、表ではかっこいいと結構人気のあるジュエリー店の従業員らしいけど
裏では寄ってきた女をいいように使ってるらしい
例えば性処理とか、人身売買とか
客
ルカ
この客は常連だし結構金を積んでくれる良客
まぁ常連だからといって鵜呑みには出来ないんだけど
客
ルカ
この世界には『魔力』と『能力』と呼ばれるものが存在する
『魔力』とは、火、水、草の要するに某ゲームの御三家のことを言う。
この世界の住人は必ず、ランダムでどれか1つだけ『魔力』を持つ。
「水は火につよい」は分かるとして「草は水につよい」は現実世界では成り立たないので、ゲームの世界だけの共通認識となっていたけど…
そもそも『魔力』が存在するこの世界で条理を唱えても仕方ないので目を瞑っておく
そして『能力』とは、風を起こす、や瞬間移動など、『基本能力』とも呼ばれる『魔力』に、さらに1つ加えられた力のことを言う。
これは、必ず一人一つ持ってる『魔力』と違い、特別な力として見られているので『能力』を持っていない人の方が多い
つまり、『能力』を持っている者は特別であり、『魔力』を扱える事がこの世界の前提である。
『魔力』を持っていない者は『破滅の子』と言われ、神に愛されなかった者と見なされ惨殺される。
なぜ『魔力』を使えない者が恐れられるのか。
理由は簡単で、人間は弱いから。
普段から『魔力』を使える者と違って『破滅の子』は使うことが出来ないので、ある日突然強大な『魔力』を放出してしまうのではないか、と。
「もし『破滅の子』が存在し、20になる日まで生きていたなら、その日世界は滅亡するだろう。」
ただ、文書にそう記載されているだけで確かな前例は無いらしい
私は『破滅の子』だ
『能力』なんてないし『魔法』もない
普通、転生系だったらチート能力持って無双しそうだけど…なぜか恵まれなかった
私が『破滅の子』だと知ってる者はここの店主だけ
ただ店主は、あの日の火事のせいで私が『魔法』を使えなくなったとか思ってる。
火事のせいなのか元から無かったのか分からないけど、私が『破滅の子』だということは知られてはいけない。
だからさっきみたいに上手くはぐらかす
まぁ、この世界で『魔法』は当たり前のものだし見せびらかすようなものでも無い。
日常でのちょっとした『魔法』の使用は許可されてるけど大事になるようなものは国が規制してるので、『魔法』を使わないことで怪しまれることはほとんどない。
でも一部の人は私が『能力』持ちで、その内容が魅了系だーとか騒いでる人もいるけど
都合がいいので流しといてる
なんで私が転生したのか
そもそも転生なのか
実は、今居るこの世界が現実であっちの世界はただの夢だったとか
それの逆バージョンも有り得るかもしれない
この世界の記憶を私は2年ほどしか持ってない
だから未知のことだらけだし、不明な点も多い
だけど今の生活は程よいスリルも味わえるし退屈しないから暫くはこのままでもいいかな
──なんて、日常にふけっていたかったのに
カランカラン
ルカ
客
1人の男が新聞紙を片手に、怯えた様子で店内に入ってきた
どうせどこかの家の不倫騒動だ、なんて周りは聞く気も無かったけど
男が次に発する言葉で辺りは一気に静寂に包まれた。
───『破滅の子』が目撃された