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これは主人公の夢の中だったんだね😊💭 確かにどれだけ願っても過去を変えることは出来ないけど、未来なら自分で作って変えることが可能だもんね✨ 主人公が先生と結ばれるといいなぁ……👀
何故かドキッとしてしまいました!もっとお話読んでみたいのでフォロー失礼します。
夢の中で恋に気づかされるなんて、とても素敵な物語ですね!
『…ごめんね』
身に覚えがないのに、 どこか懐かしく感じる…
言葉、声のトーン、声色。
荒々しい海が激しく 波打つような音。
鼻をくすぐる、 潮の香り。
あれ、私…
誰だったっけ……
「あの子」は
誰だっけ……
ふわふわとした感覚。
朦朧とする意識。
そんな中、 瞳に映ったのは…
釣竿を手にした男性。
服、靴、帽子……
まるで、 旅人のような格好___
淀みない滑らかな発音。
『過去を釣る』
言葉の響き。
人懐っこい笑顔で 微笑む姿。
何処か懐かしく感じるのは、 気のせいだろうか。
心地よい春風が 私の何かを攫っていく。
釣り人は、慣れた手つきで
釣竿に、薄桃色の花弁を 括り付ける。
出来た『仕掛け』を すっと投げた。
彼は、じっと 沖合いを睨んでいる。
まるで、置物のように___
その時
釣り人の手に 惹きつけられるように
水面が跳ねた。
釣り人はすかさず 目の色を変え____
仕掛けをゆっくり 巻き戻していく。
透明で丸いものが、二つ 釣り針にかかっている。
…釣れた。
私の、過去が。
釣り人は、そのうちの 片方の容器を開けた___
Episode 1_______
桜吹雪が舞い散る春の日。
入学式を終え、 木目の入った椅子に座る。
友達なんて出来なくて、 私は俯いていた。
『ねぇ、麻里ちゃん。』
『お友達に なってくれない?』
『私、夏菜っていうの。』
「えーっと……」
「夏菜、ちゃん。」
『ううん、夏菜でいいよ!』
「…わかった。」
「夏菜、宜しくね。」
『…うん!!』
屈託のない、 弾けるような笑顔。
栗色の、綺麗な髪。
そうだ、あの子の名前は…
夏菜____
『麻里〜!!』
『最近できた クレープ屋さん知ってる?』
「えっ知らない〜!!」
『じゃあさ、一緒に 食べに行こっ!!』
「…うん!!」
「ねぇ、夏菜。」
「そういえば、もうすぐ テストだね……」
『うっわ、忘れてた…』
『あっでも 麻里には負けないから!!』
「望むところっ!!!」
『麻里、お誕生日 おめでとーーーーー!!!』
「えっ…覚えていて くれたの!?」
『あったりまえじゃん!』
『親友なんだから!』
「ふふっ、ありがとう。」
夏菜の仕草、癖、声色…。
何となくだけど、わかる。
不意に、あの言葉が 脳裏をよぎる。
『…ごめんね』
あぁ、そうか。
私の過去は…
きっと、辛いんだ。
私は、きっと。
過去を知らない方が、 幸せなんだ。
それでも、私は___
『…ごめんね』
夏菜のこと、ちゃんと 思い出したい。
あの日、何があったのか。
ちゃんと、知りたい。
たとえそれが、私の身を 滅ぼす事になるとしても__
釣り人は、優しく 微笑んで___
残っていた もう一つの容器を開けた。
Episode 2____
暖かく麗らかな、春の日。
満開だった桜が 葉桜になった頃のこと。
卒業式を迎えた私は、 ある決心をした。
「夏菜___」
「………っ」
彼女の隣には、制服を着た 知らない男の子__
呼びかけた、彼女の名前を 静かに噤む。
…気づいちゃったから。
きっと、夏菜は あの子の事が____
この恋は、報われないなんて…
分かっていたはずだった。
それなのに…
涙が、止まらなかった。
現実を受け入れる事など 出来なかった。
やがて、私に気づいた夏菜は、 優しく駆け寄る。
『そっか、辛いよね…』
『今日で卒業だもんね……』
…違う、そうじゃない。
伝えたいのに、 うまく伝わらない。
きっと、言わなきゃ後悔する。
…もう、どうにでもなれ。
「ねぇ、夏菜。」
「……好き、だよ」
ぎこちない発音。
恥ずかしくて、今すぐにでも 消えてしまいたくなった。
『…ありがと!』
『私も好きだよ〜!!』
「…そうじゃなくて。」
「私ね、夏菜に… 恋してた。」
重い沈黙。
言わなきゃ良かったって、 今更後悔した。
後悔したって、 時は戻らないのに。
『…えっと、……』
『…ごめんね』
そう言って、彼女は急ぎ足で 駆け出した。
私から、逃げるように。
ドキドキと高鳴る鼓動。
私は、きっと…
先生に恋、 しちゃったんだ。
いつか絶対、 振り向かせてみせる。
だから、それまで…
待っててね、先生。