【登場人物のご紹介】
干河
緋羽
この物語は、 探偵緋羽に翻弄される助手 干河 詩人の性と霊に塗れた 日常を描く、 あほエロホラーである。
いや、幽霊はいるよ。見えるし、触れるし、声も聞こえるさ。 しかし存在はしない。 だから科学では扱えない。 でも科学で扱えないから絵空事だ、 存在しないというのは間違ってるよ。 実際いるんだから──…
なんて、いつだか読んだ誰かの小説に書かれていた一説がふと頭をよぎった。
哲学的で、存在という言葉の意味を深く考えたくなるような、 そんな事象に現在進行形で立ち会っているからだった。
干河
深夜11時。 まるで世の中から人が消えてしまったかのような錯覚に陥るほど静まり返った住宅街を、息を切らしながら も僕は駆け抜ける。
思わずついた悪態は、 30分ばかりの全力疾走による焼ききれそうな喉と脚の痛み、そして後ろから追いかけてくる気味の悪い化け物に追いつかれまいと焦る気持ちによるものだ。
干河
世の中には普通の人間の目には見えない人ならざる者がいるという。 それは俗にいう幽霊というやつで、 彼らを見ることが出来る人間は極わずからしい。 そしてそんな極わずかのうち、更に希少価値な体質…霊を引き寄せる体質が僕、干河 詩人が生まれながらに持ってしまっているものだった。
そして、今現在僕は たまたま目(?)が合った 数十人の人間の手足を纏めてくっつけたようなヤバい奴と チェイス中である。
逃げても逃げても 何故か住宅街の入口に戻ってしまって 街の大通りまで出れないのが明らかに弄ばれている気がするが、そんなことを考えている余裕はなかった。
干河
これが僕の日常だからだ。 幼い頃より心霊に好かれてきたが 見えるだけであって、払えたり直感で居そうな道が分かったりなんてこともない。 しかも、未だ慣れずに必ずと言っていいほど目が合うし、対処法もないから全力で逃げるだけだ。 逃走しなければ即捕まる。 おかげで足腰は強くなったが。
干河
一定距離で追ってくる "ヤツ" に体力の限界を感じて、僕は民家の隙間に滑り込んだ。 荒い呼吸をゆっくり整えて、気配を殺す。
ぺた、ぺた、ぺた、ぺた…
ぺた、ぺた
ぺた
干河
ぺた、ぺた、ぺた…
濡れたような足音が近づいて、段々とその距離が離れていく。
干河
干河
そう、つい声を漏らしてしまったのがいけなかった。
ぺた、ぺた、ぺた
干河
一気に近づいてくる足音。 ついさっきの探し回る間隔とは打って変わって急速に距離を詰められて、逃げるに逃げられなかった。
干河
袋小路の通路に禍々しいオーラを纏った影が立ち塞がる。 顔などないはずのソイツと 明確に目が合った感覚がして、 気がつけばあっという間に絡め取られて、
干河
身体中を手足にまさぐられる。 厄介なのは、 ヤツらに捕まったら最後、散々身体を弄ばれることだった。 ひやりとした生気のない体温は 明らかに人間のものではなくて、 気持ち悪い。 おまけに霊障なのか重圧と倦怠感で身体が動かずまともな抵抗だってできやしないのだ。
干河
助けを請おうともヤツらに静止は効かない。 最後の足掻きとばかりに 泣きそうな声を上げた、その時だった。
干河
ふっと身体が楽になって、 のしかかっていたヤツは影も形も無くなっていた。 見上げれば金色の瞳と目が合う。
緋羽
特徴的な赤いメッシュを揺らして、彼は僕に微笑みかけてくる。
それが、その後僕の運命を大きく変える 心霊探偵、緋羽 悠杞との出会いだった。
コメント
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お~っ
( ˙꒳˙ )ほぉ…