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第1話 - あ

2023年05月30日

#恋愛

結城真矢

メイコ

リン、本当にお父さんについていくのね？

リン

何度も言わせないでよ。しつっこいなー

リン

そんなに自分の味方してほしかったわけ？

メイコ

そりゃそうよ。だってお父さんが不倫したのよ？

メイコ

普通の思春期の女の子は、父親の不倫なんて毛嫌いするものだと思ってたのに…

リン

ダッサwババアが悲劇のヒロイン面しないでよw

リン

家事育児パートしか能のないくたびれたババアなんて、

リン

そりゃ捨てられるに決まってるよ。自業自得じゃんｗｗ

リン

その点ミクさんは若くて美人でお洒落だし、

リン

しかもバリバリのキャリアウーマンでかっこいいし、

リン

その上優しくて、話してて楽しいの！！憧れのお姉さんって感じ！

リン

あんたより年が近いから、話も合うしね！！口うるさいあんたとは大違い！

リン

そりゃあパパだって、ミクさんを選ぶに決まってるよねｗｗ

メイコ

そう…あなたがお父さんに連れられて、あの女と何度も会っていたというのもショックだったわ

メイコ

「ミクさんがママになってほしいなーなんて言ってたらしいのも…」

メイコ

随分と楽しかったようね

リン

あの女なんて言い方やめてよーｗｗババアの僻みダッサｗｗｗ

リン

ミクさんと出かけて帰ってくるたびに、

リン

「なんでこんなババアが母親なんだろうってつくづく残念に思ったものよ」

リン

楽しかったよーwパパと秘密共有して、ちょっとした非日常みたいでｗ

リン

浮気をネタにゆすったらパパ何でもしてくれたしw

リン

誰かさんが浮気に気付いてみっともなく騒ぎ立てるまではね。あーあ

リン

それにぃ、パパについて行った方が経済的にも断然得じゃん？

リン

ババアと共倒れなんて私、死んでも嫌！！

リン

恨むなら、稼げない自分を恨んでねｗｗ

メイコ

あんたって子は…どこで育て方を間違えたのかしら

メイコ

昔からお父さんにばかり懐いてると思ってたけど

リン

そりゃそうだよ。だってパパは口うるさいあんたと違って私を叱らないし、

リン

なんでも好きなもの食べさせてくれて好きなもの買ってくれるしｗ

メイコ

あの人は昔からあなたを甘やかしてたからね…

メイコ

面倒なことは全部私に丸投げしながら、自分はいいとこ取り

リン

もういいでしょ。これ以上ババアの愚痴聞いていたくないんだけど

メイコ

さっきからババアだとか、あんただとか…

メイコ

もう「ママとすら呼んでくれないのね」

リン

だってあんたなんか、もうママじゃないもんｗ

リン

これからはミクさんが私のママ。あんたは赤の他人ｗ

リン

じゃーねー、おばさんｗｗさっさと出てってｗｗ

～五年後～

リン

ママ、久しぶりだね！

メイコ

すみません、どちらさま？

リン

やだーｗｗ実の娘からの連絡なのにｗｗ

メイコ

リン！？どうして急に…ずっと連絡してこないで

リン

嬉しいでしょーｗｗ五年ぶりに私と話せてｗ

リン

今頃ＬＩＮＥの画面見ながら感動で泣いてるんでしょｗ

メイコ

いや別に…だって私たち、赤の他人でしょ

リン

えー、ひどーい！！実の娘に向かって！！

メイコ

あなたがそう言ったんじゃない。忘れてないわ

リン

そんなの、ただの子供の軽口じゃん。いつまでも引きずっちゃって、大人げないよー

リン

それより、今助けてほしいことがあるんだよねｗ

メイコ

助けなら、ミクさんに求めたら？ミクさんが母親なんでしょ

リン

そのミクさんのせいで追い詰められてるんだってばぁ！

メイコ

何があったのよ一体

リン

あのね、ミクさんもパパも沢山お小遣いくれるって言ったくせに、話が違うのよ

リン

ミクさんとパパの間に弟が生まれて、最初は嬉しかったけど

リン

それからすっかり邪魔者扱いで、家に居場所がないの！酷いと思わない！？

リン

もう大学生なんだからバイトでもしろってさ！！

リン

それで、寂しかったのとお小遣いが欲しかったのとで私、パパ活に手を出しちゃった…

メイコ

パパ活！？なんでそんな馬鹿なことを！！

リン

自分でも後悔してるよ！！

リン

そしたら、太パパの奥さんが私に慰謝料請求するってさ！！

リン

パパとミクさんに言ったら「厄介事を家に持ち込むなって」

リン

すごく、すごく怒られて…

リン

弟の養育にお金が要るから、慰謝料肩代わりなんかしないって

リン

私の大学の費用を慰謝料にあてるって言ってるの

リン

どうしよう、このままだと大学通えなくなっちゃう！！

リン

しかも、「疫病神の娘は要らないって家を追い出されそうなの！！」

メイコ

あらあら、大変ね

リン

困り果てていたときに、ママの現状を知ったのよ

リン

ママ、社長やってるんだって！？凄いじゃん早く教えてよ！！

リン

どうやってそこまで成り上がったの！？体でも使ったの！？

メイコ

あなたと一緒にしないでよ…

リン

まーそこはどうでもいいんだよね

リン

ママの現状知って、まさに渡りに船！って思ったの！

リン

私、今ならママと一緒に暮らしてあげられるよ？

メイコ

は？結構ですけど…

リン

またまたぁ。あの時ママ、私に付いてきてほしがってたじゃんｗ

メイコ

あの時はあの時、今は今ですので

メイコ

あの時に、私とあなたは親子ではなくなったはずです

メイコ

あなたがそう言ってましたよね？

メイコ

あんなこと言っといて今更頼ってくるなんて、虫が良すぎです

リン

いつまでも根に持たないでよーｗ子供のやったことだよ？

リン

天地がひっくり返ったって、私達の親子関係は変わらないんだからね！

リン

それに、まさか可愛い娘がピンチなのに、見捨てたりしないでしょ？

リン

社長なんだから、沢山お金持ってるんだしｗ

メイコ

私のお金で、あなたの不始末の慰謝料を肩代わりしてほしいと？

リン

そうそう！ついでに、大学費用も出してほしいの！！

メイコ

お断りします

リン

なんでよ！！子供のために親がお金を出すのは当たり前でしょ！！

メイコ

ミクさんが母親なんだから、ミクさんに出してもらったらいいじゃない

リン

だからぁ、それが叶わないからこうして連絡してるんだってば！！

メイコ

あなたはもう大人の年齢でしょ。大学行かなくても働けるでしょ

メイコ

世の中には自分で働いて学費を稼いでる子もいるわ

メイコ

頑張って、自分の不始末は自分で片づけなさい

リン

なんでさっきから冷たいわけ！？愛しい娘に会いたいでしょ！

リン

一緒に暮らしたいでしょ！？それを叶えようとしてあげてるのよ！？

メイコ

生憎、間に合ってます

メイコ

私はもう、愛しい娘と一緒に暮らしていますので

リン

は？何言ってるの？ママの娘は私しかいないでしょ？

メイコ

血縁上はね。でも私は、あなたのことを愛しい娘だとは思いません

メイコ

あなたへの愛はあの時に消えました。二度と会いたくないわ

リン

酷い！！実の娘を見捨てるなんて！！

リン

こうなったら無理矢理でも会いに行ってやる！

リン

娘の顔を見たら、きっと親子愛が蘇るはずよ！！

ユキ

さっきから見てたら、勝手なことばっか言ってんじゃねえよ

リン

へ？

リン

ママ…？

ユキ

失礼、申し遅れました。私の名前はユキ

ユキ

あなたとやりとりしていた、メイコさんの娘です

ユキ

ずっとやり取りを見ていたんですが、見かねて一時的にスマホを借りました

リン

ちょっと何なのよあんた！！

リン

ママの娘は私だけって言ってるでしょ！？

ユキ

正確には私は、連れ子の娘ですね

ユキ

６年前に実の母親を亡くし、4年前に父親がメイコさんと再婚しました

ユキ

当時は父の会社でパートとして働いていたそうです

ユキ

恥ずかしながら、当時の私は母親を亡くしたことをきっかけに

ユキ

手の付けられないほど荒れていました

ユキ

多忙な父は、私と向き合う時間を取れていませんでしたしね

ユキ

それでも、メイコさんは私の心の傷に一生懸命向き合って

ユキ

私を更生させてくれたんですよ

ユキ

本当に、感謝してもしきれないです

ユキ

当時まだ小さかった私の弟も、メイコさんに救われました

ユキ

殆ど笑わない子だったのが、メイコさんのお陰で笑顔を取り戻したんです

ユキ

今では、弟は本当の母親のようにメイコさんに懐いています

ユキ

二年前に今度は父が亡くなりましたが、メイコさんは私達を見捨てませんでした

ユキ

元々経営を手伝っていた父の会社を継いで、

ユキ

実の子じゃない私と弟を女手一つで育ててくれてるんです

ユキ

私と弟も、メイコさんのために家事をしたり

ユキ

バイト代を家に入れたりしています

ユキ

三人で仲良く暮らしていますので、あなたの出る幕はありません

リン

な、何よ連れ子のくせに偉そうに！！

リン

あんたが何を言おうとママの実の娘は私なんだからね！！

リン

血は水よりも濃い、って知らないの！？

リン

他人がしゃしゃり出て、私達親子の再会の邪魔しないでよ！！

ユキ

メイコさんが会いたくないって言ってるんです。諦めてください

ユキ

私のことを「愛しい娘って言ってくれて、本当に嬉しかったですね」

ユキ

母さん、ありがとう

ユキ

って、こんなところで言っても意味ないか

ユキ

後でしっかり伝えなきゃ

リン

何よ何よ、ママ、おかしいんじゃないの！？

リン

実の娘の私を見捨てて、連れ子なんかを選ぶなんて！！

ユキ

でもあなたも、実の母親のメイコさんを見捨てて

ユキ

ミクとかいう他人の女を母親に選んでましたよね？

ユキ

お互い様じゃないでしょうか

リン

生意気言って！！いいからさっさと出て行きなさいよ！！

リン

そこは私とママが住む家なんだから！！

ユキ

だから、メイコさんが嫌がってるんですって。わからない人ですね

リン

出ていけないなら、しょうがないから一緒に住まわせてあげてもいいよ

ユキ

は？

リン

あんた、何歳よ。私は21歳だけど

リン

姉か妹か、それによって変わるわ

ユキ

私も21ですけど、あなたと姉妹なんて死んでも嫌ですね

リン

同い年かー。だったら、友達になれるかもねｗ

ユキ

絶対に嫌

ユキ

実母を亡くした者としても、不倫された実の母親に対して

ユキ

暴言を吐く人間は理解できません

リン

な、なによぉあんなの子供の反抗期でしょ！？

リン

さては、あんたがママに変なこと吹き込んで、会わせないようにしてるのね！？

ユキ

そんなことしてません。あなたに会いたくないのはメイコさんの意志です

リン

そんなの許さない！私はママの娘なのに！

リン

押しかけてあんた達を追い出してやるんだから！！

ユキ

あんた、私の正体知ってんのか？

リン

何よ正体って

ユキ

ブラック摩天楼の加賀美ユキ。この名前聞いたことねぇか？

リン

え？

リン

ちょっとそれって、4年前解散した不良グループの…しかもリーダー…

ユキ

そうだよ。ま、荒れてた時代は黒歴史だし、

ユキ

本当にいろんなところに迷惑かけたって反省してる

ユキ

だから別に何もしねぇよ。ただし、私の大事な母さんに無理矢理近づいたら、

ユキ

その時は昔の仲間を呼ぶし、容赦しねぇからな

リン

ひっ！？

ユキ

わかったらもう連絡してくるんじゃねえよ！

〜後日談〜

メイコ

その後、リンは結局大学をやめさせられ、

メイコ

今は慰謝料と生活費を賄うべく、安いアパートで独り暮らしをしながら

メイコ

バイトを掛け持ちして必死で働いているのだそうです

メイコ

元夫の家庭の方はというと、なんでもミクさんの産んだ子供が

メイコ

元夫の子ではなかったのが発覚して、揉めているのだとか

メイコ

愛情はないと言ってリンを突き放しましたが、今は痛い目を見ることで

メイコ

いずれ反省して立ち直り、幸せになってほしいと

メイコ

産みの母親としては思っています

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結城真矢

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