煙管

ご本人様には関係ありません 赤桃 遊郭パロ 地雷の方はお引き取りください

煌々と輝く夜の街

男と女の劣情と愛憎が渦巻く

ここへ来た目的は単なる暇潰しというか

父から受け継いだ呉服屋もそこそこにいい調子なので

日常の中でわくわくするようなことが無かったからいうか

まぁ、理由はなんにせよ

この時間を楽しむことにしよう

からん

からん

花魁の下駄の音が鳴る

簪が揺れる

動く度に人々を魅了していく

透き通るような白い肌

流れるような所作

緩く輝く耳飾り

桃色の髪

異国の宝石のような鮮やかな瞳

その花魁は

一瞬で俺の心を魅了した

花魁道中を見てからすぐに桃華花魁に会いに来た

先程使いの者に

「桃華花魁は男だ」って言われたけど関係ない

男でも女でもなく、この人のことを好きになったんだから

部屋に入って向かい合うと、その美しさが余計に目立つ

挨拶もそこそこに話を切り出す

まずは廓言葉をやめてもらいたいな

怖がられないように距離は保ったままで話しかける

ぼそりと聞こえた言葉

本当は敬語もやめて欲しいけど、今はいいか

うつむき加減で話す君

その姿さえも絵になる

あっけにとられている桃華花魁を前に

名前の候補を考える

在り来りなものは似合わないし

かと言って特徴的すぎるのも……

いい加減だと思われただろうか

俺はただ-ないこ-という名前をつけて

その名前を反面教師のようにして

何も無いなんて言わせないようにしたいんだ

余程嬉しいのかきらきらとした目でこちらを見てくる

可愛い、やっぱり全部俺のものにしたい

俺の名前、言ってなかった

名前聞いてくれるってことは

少しは興味持ってくれてるってことだよね？ (驚異のポジティブ)

頑なって感じだけど、いっか

俺が微笑むと少し顔を赤らめる

甘い言葉なんていくらでも囁かれてきただろうに

意外と初心だったりするのかな、

ないくんが服の裾を引っ張ってくる

ここは何する所かって

欲を満たす所だもんね

変な人だなって、思った

廓言葉外してとか言うし

俺に名前なんてつけちゃうし

挙句の果てには

恋仲みたいに甘やかしてくる

もっと激しくすればいいのに

もっと酷くすればいいのに

なんでそんな、

優しくて甘い目で俺を見るの？？

少し煙たくて目が覚めた

脳裏にくっついて離れないないくんの姿

かたん

物音がしてそちらを見ると

煙管をふかしながら窓の外を見つめるないくん

俺が話しかけると慌てて燃えかすを捨てようとする

渋々、と言ったようにもう一度煙管に口付けるないくん

その後ろからそっと近づいて

汚れていない羽織を着せる

そのまま抱きしめる

自虐的に言うないくんにいらついて語気を強める

ぽそりと聞こえてきた本音