テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
最近、ゆあんくんが近い。 物理的にも、距離感的にも。 「扇、今日部活ないんだっけ?」 放課後、同じクラスの男子に声をかけられただけ。
それだけなのに。 「あるけど?」 そう返した瞬間___ 「へぇ」
背後から声。 「えとさん、人気じゃん」 振り向くと、そこにはゆあんくんがいた。 腕を組んで笑ってる。
「なにその言い方」 「別に?」 そう言いながら目線はさっきの男子に向いている。 「誰?」 「クラスの人です」
「ふーん」 それだけ。なのに空気が変わった。 男子は気まづそうに去っていく。 「……なんでああなるんですか」
「え?」 ゆあんくんはわざとらしく首をかしげる。 「俺、何もしてないけど」 自覚ないタイプ、厄介。
「ゆあんくん!」 じゃぱぱが近づいてきて肩を叩く。 「お前さ、分かりやすすぎ」 「は?」 「独占欲」
「ねーし」 即答。でも否定が早すぎる。 「えとさん、気にしないでね」 じゃぱぱは苦笑して去って行った。
「…独占とかじゃないですから」 私が言うとゆあんくんは一瞬だけ黙った。 「じゃあさ」 少し低い声。
「俺が嫌なのは?」 「……」 「軽く扱われるのも、他の男に取られるのも」 冗談みたいな言い方なのに、目が冗談じゃない。 「俺、チャラいけど」
一歩近づく。 「興味ない相手にはここまでしない」 心臓がうるさい 「……離れてください」
「無理」 即答。でも触れない。 「逃げないでくれれば、それでいい」 その言葉が妙に優しくて。
のあさんが遠くから小さく手を振っている。 (見られてる…) 「…今日は帰ります」 「送る」 「断ります」 「じゃあ、見送る」
それも断れなかった。 校門までの短い距離。並んで歩くだけなのに。 「ねぇ、えとさん」 「なんですか」 「ちゃんと嫌いになってから否定してよ」
それはずるい。 嫌いになれないって気付かされる言い方。 私は答えられないまま校門を抜けた。 背中に残る視線が、さっきよりずっと、熱かった。
NEXT>>750♡
コメント
2件