白尾邸の愉快な6人

あと数分で正午

目を覚ましたぶるーくは まだ寝足りない表情で部屋を出る

静かな家の中 平日の昼間のいつもの風景だ

ゲーム作りをしている『ぶるーく』 楽しいことが大好きでよく笑い 人当たりもよくて外交的 だけど嫌なことは絶対に動かない 料理の腕前はプロ級でもっぱら夕飯担当 だけどやらかすことが多いので お皿を割る回数も多い

洗面所へと向かったぶるーくは 歯磨きと洗顔を終えると

空腹を解消すべく キッチンへと足を向けた

キッチンへ行くと 一足先に起きていたシャークんが 朝食兼昼食を食べていた

リビングのソファにはなかむがいて 膝の上にノートパソコンを乗せながら 珍しくゲームをしている

なかむのツッコミにそう答えながら ぶるーくは冷蔵庫から ミネラルウォーターを取り出した

シャークんがダイニングテーブルから コップを差し出している

何かを極める事が得意な『シャークん』 ゲーム好きが高じて ぶるーくと一緒にゲーム作りをしている ちなみにどのゲームも上手い 最近はゲーム実況もしているようだ とても天然で脊髄で喋ることがしばしば シャイな一面もあわせ持つ

ぶるーくは シャークんの差し出すグラスを取り ミネラルウォーターを注いで渡した

そして きりやんが作ってくれていた朝食を 冷蔵庫から取り出して温め直す

電子レンジが回る間 キッチンからなかむに声をかける

3人の間で笑いが起こる

もの作りに携わる人として 3人には共有できる点もある しかし それゆえに理解し合えることも 喧嘩することも多くなる

比較的顔を合わせやすい3人だが それぞれに適度な距離感を保って 上手くやっているようだ

2人してソファに座るなかむを見る

その情景を思い出したのか なかむはだんだんと口角を上げていき そして1人で笑い始める

そう言いながら コントローラーを置いたなかむは

キッチンへと歩いてくる

思わせぶりな発言をするなかむは 冷蔵庫からプリンを取り出して 満面の笑みを浮かべている

その笑顔は 朝の面白いことのせいか

それともプリンのせいか

その手には3個のプリン

食事を摂っていたぶるーくだが そのプリンの数に

胸焼けを感じずにはいられなかった

なかむが 1個目のプリンを食べ終えたその時

ピロン

3人のスマホから通知音が鳴った

きんときからのメッセージが グループトークに届く

とぶるーくが言う

なかむもスマホを手にした瞬間

スマイルからもメッセージが届いた

なかむは顔がにやけるのを 止めることはできなかった

おかしなやつら(6)

そんな話で盛り上がりながら なかむはトーク画面をスクロールする

今まで気づかなかったけれど

きんときとスマイルが 残業だと連絡してくる日が重なっている

きりやんが言う通り

違う会社の2人が こうも残業が重なることなんてない

付き合い始めて2ヶ月なら 今が楽しくて仕方ないだろう

今夜2人はどんな顔をして 帰ってくるのだろうか

見ているこちらも楽しみでしかなたい

冷蔵庫を覗いていたぶるーくが 顔を上げて言う

シャークんもソファから立ち上がった

いってきまーす

そう言って ぶるーくとシャークんは 楽しそうに出かけていった

冬の柔らかな日差しが窓から差し込む

聞こえるのは鳥のさえずり

風が木の葉を揺らす音

1人になると 睡魔が襲ってくる

大きく伸びをしてから ソファへと横たわった

シェアハウスを始めてから あと数ヵ月で2年

自分もさることながら 皆の色恋沙汰なんて 考えたこともなかった

今回はたまたま

他の皆だって 彼女ないし彼氏(？)がいたって おかしくはない

きんときとスマイルにしてもそう

本当に付き合っているのなら

なかむは目を閉じて 大きく息を吐いた

生活がすれ違うこともあるけれど

6人でいるのは楽しくて仕方ない

一緒に家事をして

一緒にご飯を食べて

一緒に遊んで

一緒に笑って

誰かが病気になっても 誰かが困っていても 皆で助け合って協力し合って

もし誰か1人がかけたとしたら

そういうことも起こり得るかもしれない

それならば 今を思いっきり楽しもう

6人で毎日を楽しもう

そう思いながら

閉じてくる瞼に抗えず

なかむは眠りについた

鼻腔をスパイシーな香りが刺激する

目を覚ますと ブランケットがかけてあった

なかむはゆっくりと体を起こす

キッチンには 手際よく料理をするぶるーくと それを見学するシャークんの姿がある

時計を見上げると午後7時になるところ

6時間ほど寝たらしい 頭はスッキリとしていた

大きく伸びをして立ち上がる

突然のなかむの問いかけに ぶるーくとシャークんは顔を見合わせる

ぶるーくとシャークんの答えに なかむは手を叩いて笑顔を見せた

なかむの言葉に シャークんの顔が輝く

3人はそれぞれに 飲みたい酒を手にした

そして足早にリビングへ向かい

珍味やお菓子の袋を開けて

カンパーイ！

久しぶりの ゲームパーティを始めたのだった