悠真
んぅ...
悠真
あれ...
ここ...どこ?
まわり一面を見渡す。
...ここに来るのは
はじめてじゃなかった。
この前にも一回だけ来たことがある。
悠真
...ってことは、
夢の中じゃないって
こと...?
愁
まぁ、半分正解かな?
悠真
えッ...
誰かに話しかけられた。
体が震える...声が出なくなった...
...これは間違いなく
人間恐怖症の症状だった。
愁
あ、ごめん!
驚かせちゃった?
愁
俺は愁(しゅう)。
まぁ人間界で言う...
神様的なポジションかな?w
神様...?人間界...?
この人は人間じゃないの...?
全く理解が追い付かない。
悠真
あッ...えと...
愁
ん?あ~...
君は人間恐怖症
なんだね?
愁
大丈夫。
今すぐ楽にして
あげるから。
彼がそういうと、
突然僕の体がほんのり光を発した。
...しばらくすると、
変な緊張感もなく、
身の震えも止まり、
次第には声まで出せるようになった。
悠真
あ...
声...出る...!
愁
ふふっ、びっくりした?w
だから言ったじゃん!
俺は神様ポジなんだって!
悠真
本当に...?
愁
ほんとだよ!w
でないとこんなこと、
できないでしょ?
悠真
そっか...
愁
ところでここ、
君は以前に来たことが
あるみたいだね...
悠真
うん、一回だけ...
愁
そっかぁ...でも
あんまりここには
来ちゃだめなんだよ?
悠真
え...?
愁
ここはね?
生とタヒの境なんだ。
天国でもなきゃ、
地獄でもない。
そんな空間。
悠真
じゃあ僕、
今タヒにかけてるの...?
愁
そういうことになるね。
...君、何かの病気
だったの?
愁
君みたいな子が
来るのは珍しくて...
それしか考えられないから...
愁
ここに来る理由がね?
悠真
...そうだよ。
僕は4つの病気を
持ってたんだ。
愁
4つも!?
そりゃ大変だったな...
で、どんな病気だったの?
愁
...言いたくなかったら
言わなくてもいいけど、
せっかくだから教えて欲しい。
悠真
僕は鬱病と、拒食症と、
人間恐怖症...それと脳腫瘍?
だったかな。
愁
そっか...君、
大変だったんだね。
ありがとう、教えてくれて。
悠真
うん。
愁
そういえば君の名前、
まだ聞いてなかったねw
君、名前は?
悠真
...悠真。
愁
悠真か...
かっこいい名前!
悠真
そんなことないよ...w
愁
そういえば、
悠真はしばらくここから
出られないみたいだよ...?
悠真
え?なんで...?
愁
う~ん...何て言うか...
難しいなw説明がw
愁
...悠真、病気いっぱい
持ってたじゃん?
悠真
うん、さっき話した。
愁
その病気の中に
脳腫瘍ってのが
あったよね?
愁
確かここに来る前に
その腫瘍の
摘出手術をしたんだね...
悠真
...うん。
愁
手術自体は成功
してるんだけど、
体が手術の負担に
耐えるのがやっと
だったみたいで...
愁
手術が終わってから...
起きる、話す、歩く、
食べる...それらのことが
まだできない状態
みたいだよ。まだ体が
それができるまで
回復してない
みたいだから。
悠真
あ、
タヒんでなかったんだ。僕。
愁
...タヒにたかったの?
悠真
...本当は...ね。
愁
なんで?
どうしてタヒにかたったの?
悠真
...僕の友達...?が
みんな大きい病気なんだ。
みんな、ドナーを
必要としてた。
悠真
ドナーの臓器提供が
なかったら、みんな命が
危ないんだって...担当の
先生が教えてくれた。
愁
へぇ...悠真の友達も...
悠真
うん。でもね、
みんなに内緒で
その先生にお願いして、
臓器提供意思表明書を
書かせてもらったんだ。
愁
臓器提供意思表明書...?
悠真
臓器提供意思表明書って
いうのはね?
僕がタヒんだら僕の健康な
臓器とかが、その臓器を
必要としている人に移植
してあげるのを許可する
書類なんだ。
愁
うわ、難し...
でも、悠真がタヒにたい
理由とそれは
関係ないんじゃ?
悠真
ううん、
大きく関係してるんだ。
悠真
僕は脳腫瘍
だって言ったよね?
愁
うん、言ってたね。
悠真
僕のその脳腫瘍って
言う病気はね?
助からなかったら
脳死になるんだ。
愁
脳死...植物状態のことか。
悠真
そう。...脳死になったら、
みんなに僕の臓器を
提供することができるんだ。
悠真
つまり僕がタヒんだら、
みんなが助かる。
愁
悠真はそれで良かったの?
悠真
...うん。
もともと鬱病だったから、
タヒにたかったって
いうのもあるけどね。
愁
...まわりの人とかは
気づかなかったの?
愁
鬱病ってこと知ってたら、
自我って保てるもんなの?
悠真
僕はなんとか自我は保てた。
例えタヒにたいって
気持ちがあっても、
みんなには隠してたから。
悠真
...ただ、やっぱり
自傷行為は
やめられなかった。
愁
自傷行為...?
悠真
自傷行為って言うのは、
自分で自分のことを
傷つけること。
悠真
例えば...(腕を見せる)
愁
!!
悠真
...ごめん、
見たくなかったよね。
愁
いや、そんなことない。
俺は自傷行為って
何か知らなかったから、
むしろありがたいかな。
悠真
...まぁ、こんな風に
カッターとかの刃物で
首とか、腕とか、足首とか
切ったりするんだ。
愁
それは何のためにするの?
悠真
僕は、気持ちを
落ち着かせるため。
悠真
...僕、たまにパニックに
なっちゃったりするんだよ。
何でかは知らないけど。
悠真
パニックになっちゃって、
気づいたら自分で
切ってたってことも
あった。
愁
そうなんだ...
俺は逆にパニックに
なるかもw
愁
傷とかは見るのは
全然大丈夫なんだけど、
血を見るのが苦手でさ...w
悠真
あ、そうなの?
愁
悠真は血とか見るの、
大丈夫なの?
悠真
うん。
いつも綺麗だな~って
思いながら見てる...って
言っても、切ってるときは
感情がなくなっちゃってる
っぽいから、
わかんないけどね。
愁
綺麗か?w
悠真
うん。
人によると思うけど。
悠真
...じゃあ僕は
しばらくここに
いればいいの?
愁
そうだな。
悠真の体が回復したら
教えてあげるよ!
愁
それまで悠真のこと、
もっと教えて欲しい!
悠真
いいけど...不快に
思うかもよ?いいの?
愁
全然いいよ!
俺も暇だしさw
愁
俺の話もいっぱい
聞かせてやる!
悠真
えぇ~
愁
なんだよ、えぇ~って!w
悠真
...いや別に?
愁
なんなんだよ!w