何が正しくて、
何が間違っているのか。
教えてくれるものがあるわけでも無いし、自分で判断しようにもどれが本当に正解なのかはわからない。
医師
今日で検査は終了です。

医師
次回検査結果をお伝えしますので、ご家族とご一緒にいらしてください。

霧華
えっと…。私、一人暮らしで…家族は地方に住んでるんです。

霧華
なので、検査結果は自分一人で聞きます。

霧華
(なんで家族も一緒なんだろ…。何か病気でも見つかったのかな…?)

医師

医師
本当にお一人で大丈夫ですか?

霧華
何か病気でも見つかったんですか…?

医師
…はい。

霧華
(え…。ガンとかだったらどうしよう…。)

霧華
手術とか必要なものですか?

医師
手術は不可能です。

霧華
え…?

医師
認知症はご存知ですか?

霧華
もちろんです。

霧華
祖母が認知症だったので

医師
星野さんの病気は、簡単に言えば、認知症に近い症状が早い段階で訪れるものです。

医師
病名は、若年性アルツハイマーといいます。

霧華
えっと、あるつ…はいまー?

霧華
私、認知症なんですか…?

医師
認知症とは少し違います。

医師
今はまだ初期段階なので症状は軽いですが、時間が経つにつれ、症状が悪化する可能性があります。

医師
……来週以降でも構いませんので、星野さんご本人とご家族にご説明しますので、ご家族が帰ってこられたら直ぐにいらしてください。

霧華

霧華
治らないんですか。

医師
…現段階では不可能に近いかと。

霧華
私、認知症みたいになっちゃうってことですよね

霧華
祖母みたいにみんなに迷惑かけて

霧華
みんなのこと忘れて

霧華
一人になるんですか

霧華
一人で

霧華
死ぬんですか。

医師

医師
星野さん、落ち着いてください。

霧華
無理です。

霧華
なんで…

霧華
どうして……

医師
原因にはさまざまなものがあります。

医師
何が良くて、何がいけなかったのか

医師
それは誰にもわかりません。

医師
どうか、気を落とさないでください。

医師の安定した声が、頭の中に響く。
どうして
気を落とさずにいられるだろう。
霧華
(まだ35歳だよ…?)

霧華
人生やっと落ち着いてきて

霧華
これからだってときに…

霧華
なんで…?

信じられなくて、理解したくなくて
ただ呆然と待ち合いのいすに座っていたら
悠翔
霧仁!

霧仁
なんだよ

悠翔
診察券は?

霧仁
持ってるよ

悠翔
保健書は?

霧仁
持ってる

悠翔
現金は?

霧仁
持ってる…

悠翔
症状のメモは?

霧仁
…持ってる

悠翔
紹介状は?

霧仁
持って……は?
紹介状なんてあったか?

悠翔
おー、引っ掛かんなかったな

悠翔
ちなみに紹介状は先月必要だったやつだ。

霧仁
普通のやつでも忘れてるだろ、それ…

悠翔
えー?俺は覚えてるぞ?

霧仁
お前は記憶力が異常だからな
周りを自分基準で考えんなよ?

受付
受付番号17番の方、
17番の方

霧仁
あ、呼ばれた

悠翔
おー、いってこい

霧仁と呼ばれていた男の子は、少し幼顔で中学生ぐらいだった。
一緒にいた男の子は大人びた感じで、大学生にも見えるけど、たぶん高校生だろう。
霧華
え…?

ここは、大学病院の神経内科。
私も紹介状をもらってここへきた。
そして、
男の子が入っていったのは私がさっき出てきた診察室。
霧華
(いや、考えすぎだ)

霧華
(勝手な被害妄想で自己完結しちゃダメだって…)

悠翔
お姉さん、大丈夫ですか?

霧華
………え?

悠翔
あ、突然すみません。さっきから具合悪そうにしてたから気になって。

悠翔
あと、俺らのこと見てましたよね。

霧華
えっと、ごめんなさい…。

霧華
(なんだ、気づかれてたか…)

悠翔
え?あー、別に謝ってほしい訳じゃないんでいいですよ

悠翔
それより、ほんとに大丈夫ですか…?

霧華
…大丈夫ですよ。

霧華
ご心配かけてごめんなさい。

悠翔
すいません、ホントのこと言います。
…この後お茶しませんか?

霧華
………え!?

SHIBA
はじめまして。
作者のSHIBAと申します。

SHIBA
長いものになってしまい、本当にすみません。

SHIBA
いかがだったでしょうか。

SHIBA
「続きが読みたい!」と思った方はハートを押していただけると幸いです。

SHIBA
それでは、またお会いしましょう。
