テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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氷華の悪魔

第1話 - まいた種は①

2023年08月31日

#氷華の悪魔

#テノコン2023夏

夏海

秘密の園に迷い込みし蝶は希望の薔薇より愛の蜜を吸い世界に希望を咲かせる使者となる

その蝶は、いつになったら飛んでくるのだろう

───そう思っていた

おじさん

……そこで浮気がバレちまったんだが
俺ぁ、昔から頭が切れるんでね

おじさん

うまく言い訳して丸め込んだのさ

ウィリアム

はぁ、あの……

ウィリアム

(もうそのセリフは3度目だ……)

ミライ

……

ミライ：窓の外を眺めている

ウィリアム

(なんでオレばっかり……)

リナ

う〜ん……？ここどこ？

リナ：寝ぼけながら目をこする

ミライ

あと2駅で降りるよ
10分かからないくらい

リナ

10分……まだ寝られる！

リナ：再び眠ろうとする

ウィリアム

いや、いいかげん起きろよ！

周囲の乗客に白い目で見られる

ウィリアム

あ、

ミライ

ほら、降りる準備しなさい

おじさん

ふむ、ところでお前さんのカノジョは
どっちのねえちゃんだ？

ウィリアム

はぁ!?そーいうんじゃねぇし！

ミライ

ちょっと、静かにしてくれない？
公共の場なんだから

ウィリアム

いや、お前も否定ぐらいしろよ！

ウィリアム

さっきからずっとオレが
1人でジジイの相手してんのに

ウィリアム

お前は知らん顔、もう1人は
ぐーすか寝やがって！

おばさん

アンタ！さっきからうるさいわよ！

ウィリアム

ひっ、すいません……

ミライ

はぁ……

リナ

ふわぁぁぁ〜長旅で疲れた〜

ウィリアム

ずっと寝てたろうが

ミライ

で、目星はついてんの？

ウィリアム

あぁ、まずはこの辺りで
情報を集める

ミライ

なんもわかってないってことね

ウィリアム

すみません、この街に腕の立つ
魔術師がいると聞いたんですけど……

通行人

魔術師？なんだいそりゃ
大道芸人かなんかかい？

ウィリアム

大道芸人ではないと思うんですけど……

ミライ

奇妙な噂とかありませんか？

通行人

噂……あ、そういえば───

ミライ

胎児の連続死、ねぇ

リナ

それは確かに奇妙よね

ウィリアム

街に産科医は1人らしいから
そこにかかるしかねぇんだろうな

ミライ

町を出ればいいのに

オフィーリア

───そうなんですよ！今5ヶ月で！

オフィーリア

今から検診に行くんです

通行人

あらぁ、でも気をつけないと

通行人

最近、流産とか死産とか
多いらしいじゃない

リナ

あれは、妊婦さん？

ウィリアム

今から検診ってか
ちょうどいい

ミライ

そんなことより
誰かに見られてない？

リナ

え？

ウィリアム

おい、尾けるぞ

ミライ

尾けなくたって、場所はさっき
聞いたのに……

ウィリアム

どんな診療か気になるだろ

リナ

えっ中に入るのはまずいよ！
明らかに用事ないし！

護衛

そこで何してる

ウィリアム

ひぃっ！いや、これは違うんです
怪しい者では……

ミライ

(ありがちなギャグパートだな)

オフィーリア

そこで何をしているのかしら

ウィリアム

(本人にバレた！終わりだ……)

ミライ

ここに有名な産科医が
いらっしゃると聞いて来ました

オフィーリア

有名な産科医？

ミライ

はい

ミライ

妊産婦さんやご家族に寄り添った
医療を施しておられるとか

オフィーリア

まぁ！そんなウワサが!?

ミライ

はい！私たち将来は医療従事者に
なりたいと考えていて

ミライ

勉強の参考にお話を伺えないかと

リナ

もしよろしければ実際の診察も
見てみたいなーなんて！

ウィリアム

(こいつらベラベラと
口からでまかせを……!!)

オフィーリア

まぁまぁそういうことでしたら
早くおっしゃってくださいな！

オフィーリア

どうぞ！私ので良ければ
診察をごらんになって！

ミライ

うわぁ、ありがとうございます！

リナ

お優しいのですね！

オフィーリア

そんなことないわよ〜オホホホ

オフィーリア

……あなた、もう下がっていいわ

護衛

はっ

ウィリアム

(ヒヤヒヤしたぜ……)

オフィーリア

じゃあ早速入りましょうか

ミライ・リナ：はーい！

ミライ

お前、役に立たねぇな))

リナ

演技の一つや二つできなくて
どうすんのよ！))

ウィリアム

お前らが異常なんだよ……

ケイン

うん、順調だね

オフィーリア

良かったぁ！

ケイン

君たち、医療に興味が？

ミライ

はい！彼なんて先生と同じ
産科医を目指してて！

ケイン

そうかい！

ウィリアム

え、あははー……💦

ケイン

医療の道は、もちろん
楽しいことばかりじゃない

ケイン

ときには手の施しようもなく
見送ることもある

ケイン

特に産科医は、新しい命を迎える
仕事だけど100%幸せな現場じゃない

ケイン

……だけどやっぱり元気な赤ちゃんが
生まれてきてくれると

ケイン

お母さんやお父さん、ご家族、
僕を含めたスタッフみんな嬉しい

ケイン

やりがいのある仕事だよ

ウィリアム

……そうなんですね

ミライ：ウィリアムを蹴る　　　 (もっと興味持て)

ウィリアム

ますます意欲が湧いてきたなぁ！(棒)

ケイン

だから君も健康に気をつけて
元気な赤ちゃんを産んでくれよ

オフィーリア

ケインが取り上げてくれるんだもの
絶対に大丈夫よ！

ミライ

……

オフィーリア

ふぅ……さすがに疲れちゃったわ

オフィーリア

帰りは車にしましょう
ケインも一緒に

ウィリアム

お2人は……

オフィーリア

ウフフ、婚約者よ

ウィリアム

あー、そうだったんですね！

ミライ

さっきの方
もしかして護衛ですか？

オフィーリア

えぇ、実は私の父はここの市長なの

ミライ

あぁ、そうでしたか……

ウィリアム

市長の娘さんが徒歩で
検診に来られるなんて

オフィーリア

適度な運動は必要ですもの

オフィーリア

家からはそんなに遠くないから
大丈夫よ

オフィーリア

そういえば、赤髪の子の姿が
さっきから見えないけど……

ミライ

あぁ、彼女は胃腸が弱くて
すぐお手洗いにこもるんです(嘘)

オフィーリア

まぁ大丈夫かしら

オフィーリア

ところで、あなたたちは
お住まいはどちら？

ウィリアム

実はオレたち、旅の者で……

オフィーリア

あらそうだったの！
今晩のお宿はお決まりで？

ウィリアム

いえ、まだ……

オフィーリア

でしたら、ぜひうちに
泊まりに来てくださいな！

オフィーリア

とびきり豪華な夕食を
用意させますわ！

ウィリアム

そこまでしていただくわけには……

オフィーリア

遠慮なさらないで！

オフィーリア

って、まだお名前も
聞いてなかったわね

オフィーリア

私はオフィーリアよ

ウィリアム

ウィリアム・リリーです

ウィリアム

今ちょっと外してるのが
リナ・カメリア

オフィーリア

ウィリアムくんにリナちゃんね
あなたは？

ミライ

ミライ・ローズです

市長

いやぁ、ようこそモルガン家へ

ミライ

この度は突然の
訪問にもかかわらず……

市長

堅苦しい挨拶はなしだハハハ！

ミライ

……

市長

きけば、ケインの仕事に
興味があるとか？

ウィリアム

とても勉強になりました

市長

そうだろう！私の自慢の
義息子だからな

市長

最近はまぁ、そのいろんな声も
きかれるが……

オフィーリア

お父様！

市長

おっとすまない
飯が不味くなるところだった

市長

遠慮せず食べるといい！

ウィリアム

……いただきます

ウィリアム

(って、超形式ばった食卓じゃん！
ナイフもフォークもありすぎだろ)

ウィリアム

(どれ使えやいいんだよ！)

ウィリアム：ﾁﾗ(ミライを見やる)

ミライ：全く動じず食事をしている

ウィリアム

(なんで普通に食えるんだよ！)

オフィーリア

そういえばリナちゃん
お腹はもう大丈夫？

リナ

お腹……？

ウィリアム

あー食った食った

リナ

誰のおかげで行儀良く食べられたと
思ってんのよ

ウィリアム

感謝してまーす

ウィリアム

ってか、お前腹壊したって聞いたけど

ミライ

あれ、嘘だから

ウィリアム

えっ！じゃあどこ行ってたんだよ

リナ

あ、それは……

ミライ

待って

ミライ

その話はまた明日

ウィリアム

はぁ？

ミライ

とにかく今日はもう解散

ウィリアム

(なんだってんだ、いきなり)

ミライ

おはようございます

オフィーリア

あら、おはよう！
よく眠れた？

ミライ

はい

オフィーリア

あ、見て見て！バラの花が
綺麗に咲いてるわよ

ミライ

はぁ、綺麗ですね

オフィーリア

でしょ？ミライちゃんの
名前の花だものね！

ミライ

……あたし、薔薇好きじゃないです

オフィーリア

えっ

ウィリアム

おい、ミライ！

ウィリアム

あ、オフィーリアさん
おはようございます

ウィリアム

おい、出かけるぞ

ミライ

わかった

オフィーリア

……

ウィリアム

なんでオフィーリアさんの
気に触ること言うんだよ

ミライ

なんでだっていいでしょ

ウィリアム

昨日はあんなに取り繕ってたのに
態度変わりすぎだろ

ミライ

……誰からも気に入られるような
演技はできる

ミライ

でも、なんか……どうしても
言い返したくなった

ウィリアム

は……

リナ

ねぇ、今日も診療所行くの？

ウィリアム

あぁ、そのつもりだ
まだ全然ウワサについて聞けてないし

ミライ

リナ、行ってきてくれるか？
あたしとウィルは情報集めるから

リナ

りょ！

ウィリアム

なんで、別行動!?

リナ：診療所へ向かう

ウィリアム

おい、どーいうつもりだよ！

ミライ

話はまた後でね

ミライ

さっさと情報集めんぞ

ウィリアム

ったく……

リナ

えっと、まずわたしが昨日
見たものについて

リナ

いかにも怪しげなファイルがいくつか
ありましたね！あの診療所

リナ

そんで今日、隙をついて
中を見てきたんだけど

リナ

どうやら全部亡くなったと思われる
胎児のカルテみたいで

ウィリアム

なんだって!?

リナ

でもなんていうか
普通のカルテじゃなくて

リナ

妊娠何日目で何個投与、とか

ウィリアム

薬物投与!?

リナ

まだわかんないんだけどね！

リナ

昨日は盗聴されてるかもと思って
言えなかったんだ、ごめんね！

ウィリアム

今日は、なんでまた
こんな人の多いとこで言うんだよ

ウィリアム

ここだって誰が聞いてるか
わからねぇだろ

ミライ

聞かれても問題ない

ウィリアム

え？

ミライ

もう隠す必要もなくなったからね

妊婦の友人

お願いだから話を聞いて！
あなたのために言ってるのよ！

妊婦

ほっといてよ！

リナ

妊婦さんと……喧嘩？

ウィリアム

どうかしたんですか？

妊婦の友人

あなたたちには関係ないでしょ！

ウィリアム

でも、その人困ってるみたいなんで

妊婦

自分の子が流れたからって
医者に八つ当たりしないでよ！

妊婦の友人

っ!!

妊婦：診療所に入ってしまう

ミライ

……大丈夫ですか？

妊婦の友人

私が、悪いのよ……

妊婦の友人：泣き出す

妊婦の友人

お腹が大きくなり始めた頃には
みんな流産してしまう

妊婦の友人

噂はもちろん知ってたわ
……でもそんなの偶然だって思ってた

妊婦の友人

町に産科医は1人だけ
だからみんなそこへ通院する

妊婦の友人

私もその1人だった

ウィリアム

他の町じゃダメだったんですか？

妊婦の友人

できないわ、私も夫もこの町の出身
もちろん互いの両親も

妊婦の友人

ここで産まれて、ここで産むのが
当然だと思ってたから……

ミライ

だから？

妊婦の友人

へ？

ミライ

当然だと思ってたから何？
それが理由であの医師を選んだの？

ミライ

噂は聞いていたんでしょ？

ミライ

あなたを説得してくれる人は
いなかったの？

ミライ

さっきあなたがやっていたように

妊婦の友人

いえ……だって！

まさか自分が……！

ミライ

それが本音よ

ミライ

上っ面では他人を理解し
同情したつもりになっている

ミライ

だけど結局は
自分には関係ないと思ってる

ミライ

あなたにとって大切なのは“偶然”
不幸に見舞われた

ミライ

かわいそうな妊婦の意見じゃない

ミライ

あなたの自己満足の価値観よ

ウィリアム

おい！言い過ぎだろ！

妊婦の友人

な、何よ！偉そうに

ミライ

あなたは胎児の安全より
自分の理想を優先した

ミライ

何か違うかしら？

妊婦の友人

……

妊婦の友人

もっと、私がちゃんとしていれば……

妊婦の友人：再び泣き出す

ウィリアム

お、落ち着いてください！
あなたのせいじゃ……

リナ

大丈夫ですよ

リナ

わたしたちが仇を取りますから

妊婦の友人

じゃあやっぱり、あの医者が？

ミライ

行こうか

妊婦の友人

待って、最後に
言わなきゃいけないことが

氷華の悪魔

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夏海

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第1話 - まいた種は①

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