名探偵に解けない謎

(刃物を取り出す。)

ジャキッ(刃物を振り翳す。)

バッ(誰かが押し倒す)

(刃物で蘆花の眼が切れる。)

(警察が来る音)

死んでいるんだ。

(行ってしまった。)

ガサッ

(鞄から消毒液と包帯を取り出す)

手当てが終わり……

(外へ出た。)

拝啓、徳富 蘆花 さん へ＿ 多分、此の手紙を徳富さん読んで居るのなら、 私は死んでいるんだね。 済まない。 何一つきっと君には残って居ないね。 若し、一刻でも君と過ごせたら、 もっと出来る事があったのに。 御免。 結局何も出来ずに終わりそうだ。 実際そうでしょう？ 判っているなら一緒に居てよ。 って君なら云うんだろうね。 眼に浮かぶよ。 それでも、どうか死者の勝手な願いを聞いてくれないかい？ 君は江戸川君と一緒に逃げるんだ。 彼は君と同じ様に彷徨っている。 死んでしまった私では君を守れないからね。 江戸川君は信頼出来る。 彼は生意気だけど、 善い人さ。 最後、 君と過ごした期間、本当に愉しかった。 きっと、お父さんに沢山辛い事をされた筈なのに、 君は一切言葉に出さなかったし、 行動にも出さなかった。 辛い事を辛い。と云う事が どれだけ勇気のいる事かは判ってるよ。 でも、 一度限でも善いから、 幸せを願って。 其れが私の願いだ。 生涯一度も伝える事は出来なかったが、 君の事、 好きだったよ。 北村 透谷

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