瑠愛
いやなんなのよあの先生!!

瑠愛
ふざけないでほしいね!

私は一組の教卓にノートを置き、誰もいない教室でそう放つ。
瑠愛
のこのこついて行ってみれば、「このノート全クラスに配っといてくれ」とか言っちゃってさ!

瑠愛
ほんと意味分かんないわ!

瑠愛
しかもそのせいで外は暗くなっちゃったし……

瑠愛
茉海もいないだろうしな……。夜に一人で出歩くと通り魔に遭いそうで嫌なんだよ

瑠愛
歩いてたらすれ違った人にグサってやられる感じ?

瑠愛
てかちょっと待って!

瑠愛
逢坂瑠愛は今すごいことに気がついてしまった……!

瑠愛
ここ一組ってことは……ヒロくんのクラス!?

瑠愛
待ってここで息をめいいっぱい吸うんだ私!こんな機会二度とないぞ!

独り言が多いのは許してほしい。少なくとも誰もいないので喋ってるだけだ。
瑠愛
よし、これ配ったらもうおしまいだし、頑張ろう!

瑠愛
ちょっと待って!

瑠愛
いやちょっと待ってって口癖なのかな私

瑠愛
まあそんなことどうだっていい!

瑠愛
こ、これは……これはヒロくんのノートじゃないか!

保険のノートだけど別に関係ない。あわよくば数学を見たかったが。
瑠愛
……人のノート勝手に見るって犯罪か?

瑠愛
ま、まあバレなきゃいいってことで!

瑠愛
確か病気とか怪我の予防のとこだっけ

瑠愛
ヒロくんのことだから字も綺麗なんだろうな……

ヒロ
ううん、俺はあんまり字には自信ないよ

瑠愛
であっ!?

瑠愛
げほっげほっ

瑠愛
ひ、ヒロくん!?じゃなくてヒロさん!?

ヒロ
別にヒロくんでもいいよ

瑠愛
へ、いや、その……いつからそこに?

ヒロ
まあそんなことどうだっていい!みたいなところから?

瑠愛
(いや一番キモいところ聞かれてるの死ぬんだけど)

瑠愛
(でも落ち着け瑠愛。ここは焦ってはならない)

瑠愛
いえ、でも違うんですよ!

瑠愛
ヒロくんのだから見たわけではなくてですね

瑠愛
勉強が私壊滅的に苦手なので見ようとしてしまっただけなんです!

ヒロ
え、ああ、別に俺はなんとも思ってないけど……

瑠愛
え!?あ、ありがとうございます!

ヒロ
いや、お礼言われるほどのこと俺はしてないよ

瑠愛
(はあ!?待って尊い辛い!!)

瑠愛
(もうマジで好き!)

ヒロ
ところで瑠愛……さん?

瑠愛
何でもいいですよ!意味わかんないのでもいいですし!

ヒロ
じゃあ……瑠愛ちゃん?

瑠愛
ちょ、ちょっと待ってください!

瑠愛
な、なぜちゃん付けになさったんですか?

ヒロ
そっちがヒロくんって呼ぶから対抗したら瑠愛ちゃんかなって

瑠愛
でも茉海はヒロくん呼びですけど水河さんですよね!?

ヒロ
水河さんはほら、何か年上って感じしない?

ヒロ
大人っぽいっていうか

瑠愛
(ま、まあ確かにそうだけれども)

ヒロ
でも瑠愛ちゃんは同級生って感じするし

瑠愛
そ、そうなんですかね

瑠愛
(いや、よく考えてみろ逢坂瑠愛)

瑠愛
(彼は学校の王子様。性格までジェントルマンなのは想像するのも容易いこと……)

瑠愛
(その場合こうやってちゃん呼びするのも彼の中では普通のこと。茉海が特殊なだけか)

瑠愛
ま、まあそれでヒロくんが呼びやすいなら……

ヒロ
ああ、うん。ありがとう

ヒロ
そうそう、瑠愛ちゃんはここで何をしてたの?

ヒロ
クラス六組だよね

瑠愛
先生から手伝いを頼まれちゃって……

瑠愛
大変でしたけど、もう終わったくらいですよ

ヒロ
そうだったんだ

ヒロ
急に頼まれると大変だよね、そういうの

瑠愛
あんまりないんですけどね

瑠愛
ひ、ヒロくんはどうしてここに?

ヒロ
生徒会があってさ。やっとさっき終わったんだ

瑠愛
(いや改めて思うけど生徒会とかよくできるな)

瑠愛
(私だったら絶対ならないわ)

ヒロ
瑠愛ちゃんはこれから帰り?

瑠愛
え、あ、はい。一応は

ヒロ
ほんと?俺も帰る友達いなくてさ

瑠愛
(ん?これは一緒に帰るフラグが立とうとしているのでは?)

瑠愛
(だとしたら回収する以外に道はない気がする!)

瑠愛
わ、私もいないんですよ!

瑠愛
い、一緒に帰りませんか?

ヒロ
あ、いいよいいよ
