本田菊
フェリシアーノ・ヴァルガス
ルート・ヴィッヒ
フェリシアーノは絵を描くのが苦手、いや嫌いだと言うのだ。美術の時間では絵の具の使い方も熟知しているようなそんな絵を描いていたのに対し、全くもって思ってもなかった事実を聞かされる。
それはルートも同じだったらしい。
聞けば二人はとても仲がいいとの事だがそんな二人にも分からないことがあるのだと少しだけ安心する。
菊は長年の付き合いの二人の間に急に入った。ただの同級生というだけの存在だからだ。
まだ知っていけることが沢山ある。それに対し遅れることがないと思うのが菊の心を救った。
そして菊は気づいていない。 それは目の前にしている二人が一番気にしている。 菊はミステリアスで心の内を誰にも話していないように見られる。そう知られているような人間だ。
営業スマイルとでも言うべきか笑顔は貼り付けられており、礼儀正しく誰にでも愛想良く振る舞う。だがそれは気味が悪く距離を置かれがち。 ルートとフェリシアーノはそんな菊のことを知っていける自信が到底なかったのだ。
そんな不思議な三人が机で輪を作りご飯を共にしている。
そんな時
ドアの奥から聞こえて来る声は聞き覚えのある声だ。
なんというか菊はつくづく運が悪い。 勇気を出してみると言ったものの実際にやろうと思えば動悸が酷いものだ。
フェリシアーノ・ヴァルガス
ルート・ヴィッヒ
いい切る前に菊は声を出した。 だがか細く小さなその声は余計に二人を心配させただけであった。
王耀、三年生の厚く慕われる沢山の経験を積む素晴らしい人。そう伝えれば大抵分かる人は分かる。不思議でそれでいて伝説にでもなりそうな一人。
委員会等は全くもって生徒会とは関係がないはずなのに、生徒会のある二人と関わりを強く持つ。
小刻みに震える菊を見てフェリシアーノはすぐに察した。
フェリシアーノ・ヴァルガス
本田菊
その瞬間フェリシアーノは菊の手を引き菊を抱きしめ、菊はフェリシアーノの思うがままにされる。菊はそれに甘えフェリシアーノの胸で呼吸を整える。
喧嘩をする声が聞こえる。聞き覚えがある声がふたつ、それが聞こえた時落ち着いてきた菊はさらに震え出した。
こういう時に真っ先に動くルートはフェリシアーノが菊を落ち着かせている事実に口を出さなかった。
それどころか体調の悪化を心配し喧嘩を止めようとしドアに手をかけていた所を見た菊はハッとした。
本田菊
ルート・ヴィッヒ
本田菊
菊は叫んでしまったことを後悔し先のことを考えては震えが大きくなった。菊の顔は青ざめ胃は痛く頭痛もする。 大きなストレスが菊を襲う。
本田菊
フェリシアーノ・ヴァルガス
事情を知らないルートはどうしたらいいのかがさっぱり分からず菊に近づく。 生真面目なルートはただ指示を待つのみ、だがドアの奥はずっと何があった?と話しておりもしかしたらこの教室に入ってくるかもしれない。
ルート・ヴィッヒ
フェリシアーノ・ヴァルガス
そんなフェリシアーノの問に悩んだのも数秒、ここまでしたなら話すのが礼儀だろう。菊はこくりと小さく頷いた。
菊は気が遠くなる思いでドアの先の声を聞いていた。フェリシアーノは端的に菊の事情を話している。
間が空いてドアの奥から聞こえる。それに反応したフェリシアーノはルートに対応をしてと願う。
フェリシアーノは未だに菊を抱きしめてくれているのだ。
フェリシアーノ・ヴァルガス
菊は何も言うことが出来ず、ただこくりと首で返事をしただけだった。 連れられるがまま教室の端に方に行き座る、さらにフェリシアーノが菊のことを隠すように座る。
ルートは何やら言い訳を話している。 ちらりと見えた髪の色にゾッとし涙が出そうになる。
自分が悪いのに、昨日と全く同じ考えが頭を支配する中フェリシアーノはずっと背中を摩ってくれている。
ルート・ヴィッヒ
ルート・ヴィッヒ
フェリシアーノ・ヴァルガス
フェリシアーノ・ヴァルガス
フェリシアーノ・ヴァルガス
慰めの声さえ菊の心をズタボロにしていく。 情けない、申し訳ない。そんな言葉達が頭をめぐり頭痛が酷くなる。
本田菊
細い声はそれしか発することが出来ずに力なく腕は床に倒れかけ呼吸をすれば胸から肩は上下に動いた。
つくづく運が悪いものだ。 菊は勇気を出せずに苦しい思いをしただけだった。
ルート・ヴィッヒ
本田菊
本田菊
そういった時軽く頬を両手で叩かれた。 左右同時に、痛くは無いけれどそれを行ったフェリシアーノの心情は全く分からなかった。
フェリシアーノ・ヴァルガス
本田菊
これで嫌われてしまうのだろうか。 悪い癖を直せなかった。嫌がられただろうか、面倒臭いだろうか苛立つだろうか。
過去の経験からそう思うとまた友達が離れていってしまう。それが常に辛かった。
真剣な眼差しで見つめ両手で頬を触るフェリシアーノを菊も真っ直ぐ見ていた。 目だけで菊を安心させるように見つめてくる。
ルートは知ったばかりで、真面目だからこその解決案を出してくれたかもしれながいか、彼も人間だ。人の心を理解しそっとしておいてくれた。
浅く呼吸を繰り返す。落ち着いてきた時にフェリシアーノの手から自ら手を重ねる。 そのままするりとしたに手を持っていき、目を瞑りそのまま大丈夫だと笑って見せた。
フェリシアーノはその一瞬の手の震えを感じていた。
フェリシアーノ・ヴァルガス
本田菊
本田菊
体調が悪く、酷く優れぬ顔をしていた菊が言うのもおかしいが菊はフェリシアーノやルートの曇った顔を見たくはなかった。
何よりそれが自分が原因であるということに辛く思えたのは正に菊自身であった。
ルート・ヴィッヒ
本田菊
菊はその言葉にどれだけ救われたことだろうか。
少し前まで他人だった自分を救ってくれると言う二人はまるで運命の友達のように思える。そんな風に言ってしまうと現実味がないが、それでいい。
両親をなくしてからあの人にもどう接したらいいか分からなくて、離れてしまって、そのまま頼り方だとか分からなくなってしまった。 気づけば一人でなんでもこなせるようになった。
でも話してみれば胸の重荷は少しずつ落ちて行った。
フェリシアーノが初めて帰ろうと言った時、友人との約束をし忘れたからだと言った。その言葉はまるでその友人の代わりとして使われているようで心底悲しかった。
でも違った。その友人は恐らくルートであり三人一緒に登校してくれた。ルートがいるからと言って菊を置き去りになんてしなかった。
どことなく、何があっても嫌われそうにないと思えた。
フェリシアーノ・ヴァルガス
本田菊
突然のフェリシアーノの言葉に驚く。声に漏れていたのだろうかと思うもそれは違った。 フェリシアーノとルートはその言葉にクエスチョンマークを浮かべたからだ。
菊の幻聴とでも言うべきだろうか。菊はそう言ってもらえれば心が救わられるだろう。
本田菊
でもきっといつか言ってくれそうな言葉であると、菊は思っていた。
どことなく心の片隅で思っていた物だった。 そんなことを望んではいけないと蓋をした醜い欲望。それが一つの言葉で一気に引き摺り出された。
友人がいなければ弄れ、嫌な言葉を返しかけてしまう自分には到底訪れないと思っていたものだった。
フェリシアーノ・ヴァルガス
ルート・ヴィッヒ
本田菊
本田菊
心配してくれる友人に笑ってお昼を促す。 有難い限りだ。
フェリシアーノ・ヴァルガス
ルート・ヴィッヒ
本田菊
フェリシアーノ・ヴァルガス
本田菊
そう会話をし笑いあった。
大きな声が聞こえた瞬間、王耀は心底驚いた。
空き教室にいた生徒と話し合い解決したらしいが、その話し合った生徒は叫んだ声の主ではないとその場にいた全員がわかった。
当然分かるだろう。声が低く男なのは分かるが発声の仕方が明らかに日本人とそうではないと分かる、し癖が違う。
その中の王耀は心底声の主と話し合いがしたかった。 お節介を焼きたかった。 昔のように話し合ってちょっとした事で言い合いをして最後に笑いあって。
あの時向き合っていればよかった。意見を尊重して、度が過ぎぬようにしていたら。
王耀
そんな想像が巡るが意味は無い。過去は変えられない、それは王耀の隣にいる人も同じだった。
長らく続いた沈黙を割って入ってきたのはイギリス人、そして現生徒会長であるアーサー・カークランドだった。
アーサー・カークランド
それに対しての返事はなく、嫌な感じの沈黙がさらに続いた。
誰も何も返さなかった。 気まづさが続き、無神経な声を出したのはアルフレッド・F・ジョーンズだ。
アルフレッド・F・ジョーンズ
呑気な声で遠くから聞こえる。 何も気にせず先に進んでいたアルフレッドはなんとも空気の読めないやつだ。
フランシス・ボヌフォワ
呆れ気味に言うフランシス・ボヌフォワ。彼は現生徒会副会長である。アーサーとは犬猿の仲と言われているが喧嘩するほど仲がいいと言うやつで、腐れ縁としても有名である。
フランシス・ボヌフォワ
フランシスは目を瞑りアルフレッドの方へ向かいながら語り出す。
フランシス・ボヌフォワ
フランシス・ボヌフォワ
アーサー・カークランド
怒りが現れているアーサーにのらりくらりとうまくかわすフランシスは仕事に対してのイライラからなのかそれともいつものような喧嘩なのか。わざとイラつかせるような発言する。
王耀
王耀
そんなのを見て王耀は呆れ気味にそして前向きに「また考えればいい」と思えた。 先程出てきたのは菊の友人だろうか?ならば今更現れるより友達といた方がきっといい。
でもいつかは
話し合いたい。
そんな王耀の発言に前にいたものは振り返る。ぽかんとした後少し笑い王耀の事情を知っている皆がまるで変な物を食べたんじゃないかと疑いたくなるほど優しい行動をとった。
かと思えばまた喧嘩を始めた。 王耀は呆れはじめるとその火は王耀にまで飛んできた。
それに反応した王耀からまた喧嘩が勃発する。まるで腹が減っているのを忘れているようにとても元気に。
それこそが"生徒会"だろう。
いや、それはあくまで表向き。 この学校の中でそれぞれ歴史的な国の出身、その集まりは連合国と同じである。
元ヤンキー、そして現生徒会長であり圧倒的な権力を持つアーサー・カークランド。 そんな権力者とともに行動をしそれなりの実力を持つフランシス・ボヌフォワ。 正義、それさえ守ればなんだろうがいい自分はヒーローであると力を使うアルフレッド・F・ジョーンズ。 何を考えているか分からない、が気が付けば逆らうやつが消えている謎の存在イヴァン・ブラギンスキ。 弟子から慕われそして明らかに強い、その強さは生きてる年数以上な実力、王耀。
それぞれイギリス人。 フランス人。 アメリカ人。 ロシア人。 中国人。 である。
故に恐れられそして慕われる存在。 連合組である。 安直だろうがその強さはとても似合うだろう。
イヴァン・ブラギンスキ
アルフレッド・F・ジョーンズ
イヴァン・ブラギンスキ
笑いながら最悪な仲の悪さが喧嘩をしている。 ここが喧嘩しているもの危ない物だ。 まさに笑ってはいるものの喧嘩の冷たさは歴史的な冷戦のようだからだ。
そしてこの二人が喧嘩している時は割り込まない方がいい。
フランシス・ボヌフォワ
フランシスが止めに入る。も
イヴァン・ブラギンスキ
アルフレッド・F・ジョーンズ
怖い目で睨まれる。とても怒りに見た顔だ。
このように互いから圧をかけられるからだ。
王耀
王耀も呆れていた。
そうこうしている間に菊がいたであろう教室から離れていく。それを少し惜しく思いながらどうか彼が幸せであるようにただ願う。
足を止めれば呼んでくれる相手が自分にいてもこれまでは相手にそんな人がいなかったからだ。
絵を描くのがいつしか嫌いだった。 それはまさに血を引き才能とも呼べれば幼き頃から描いていたくせだろう。
少し前までは絵が描けると言うことは喜ばしい物だった。 自分の手を愛し思考をも愛せた理由だった。
だがいつしかそれはとても気持ち悪く悲しいものとなった。 血を引いているからだろう。死んだ人のことを考えてしまうし、この手で実の兄を傷つけた。
いつも言い訳している。俺は悪くないと。 それでも何が悲しいかと言えばその兄のことも大好きだからだ。
菊に言った言葉は何も嘘じゃない。
フェリシアーノ・ヴァルガス
フェリシアーノ・ヴァルガス
そう判断したのは目の前に置かれている絵だった。 その絵は拙くて子供が描いたと信じやすい絵である。事実幼い頃にフェリシアーノが描いた絵だからだ。
似顔絵、かつてなる初恋の甘酸っぱい記憶その物がここに込められている。
でももう彼は居ない。 その事実に顔を背けたくてこの絵はずっとずっとしまってある。
もはやどこにやってしまったのかが分からないほど昔に。
フェリシアーノ・ヴァルガス
フェリシアーノ・ヴァルガス
涙が毀れる。目はあつくなり、泣いていると自分自身に知らせているようだった。 夢なのに泣けるている上に暑さまで分かる。
現実味をおびすぎた夢だ。 キャンバスには拙い絵、人の特徴を本当に捉えられているのかも分からない。 だからこれが本当に彼なのか全く分からない。
夢で謝り続ける以外フェリシアーノには出来ず、たっていた足は膝から崩れ落ちた。
涙がぼろぼろと溢れおさまることは無い。 それに対して苛立ちを覚えるもそれは忘れてしまった自分が悪いのだ。
コンコン
フェリシアーノ・ヴァルガス
不意にドアをノックされ埋めていた顔を上げる。だがノックされた後容赦なくドアを開ける音が部屋に木霊した。
フェリシアーノ・ヴァルガス
フェリシアーノ・ヴァルガス
言葉に表せないほどに驚く。 この夢に一切関係ないであろう者が目の前に立っている。 冷たく笑う相手にフェリシアーノは怯む。
フェリシアーノ・ヴァルガス
喉から出た細い声に自ら驚いた。 笑いながらただ見つめてくる菊はいつの間にかフェリシアーノを抱きしめた。
崩れていたフェリシアーノにはいつも自分の方が背が高いと言うのに今回ばかりは菊の方が大きく菊に包まれた。
体温を感じる。変な夢だ。
本田菊
口がそう動いて見えるのに声が聞こえない。 夢は夢にしか過ぎぬ。それでも菊の胸は居心地が良かった。
その夢が己の欲望なら、フェリシアーノは今菊を求めている。菊にこう言ってもらうことを望んでいる。
フェリシアーノは友達にこんなことを思うだなんてと自分に対して冷笑した。
本田菊
やがてうっすらと声が聞こえるようになる。
フェリシアーノは菊の低く穏やかな声に安心してきた。 それと同時に肩がゆらされるのを感じて目を覚ました。
フェリシアーノ・ヴァルガス
本田菊
母親のように笑ってみせる菊に少しドキリとした。 授業中に寝ていたから後でノートを貸してくれると言われた。こういう時はいつもルートに借りていたため少し慣れない。
本田菊
笑いながら少し眉毛を下げてそう聞いてくる。 嫌なら答えなくていいと心遣いか付け足してくれた。
フェリシアーノ・ヴァルガス
はは、と笑えば涙がまたこぼれた。 止めたかった。菊の前で情けない顔を晒しているというのがとても嫌に感じた。
フェリシアーノ・ヴァルガス
涙を止めようと袖で拭うも菊はその腕を細い手で止めてハンカチを使って涙を拭いてくれた。
菊はまるでどうしようもないなと言うような顔で話しかけてくる。 その優しさに対してただ口を開けてされるがままされるしかなかった。 菊はお構い無しに涙を拭いたり休み時間にできるだけのことをしてくる。
本田菊
本田菊
涙を拭きながら首を傾げて聞いてくる。 その優しさに手を取って頷くしか無かった。 菊は何も聞かない、そばにいてくれることだけをしてくれる。
喋りはできるのに涙が溢れだして止まらない。糸がプツンと切れたようだ。 菊は周りの目すら気にしないで手を差し伸べてくれる。
その手をとって保健室まで連れてかれる。 もちろん優しい菊は立てるか動けるか聞いてくれた。 教師には後で行ってくれると言ってくれた。
たった瞬間フラっとしてしまい菊はそれを受け止める。 身長差も体重の差もあるのにどうにか持ちこたえて心配してくれる。
本田菊
フェリシアーノ・ヴァルガス
保健室についた時聞き覚えのある声がした。 それを聞いた瞬間菊は固まり石のように動かなくなった。 肩を上下にさせ過呼吸気味になる。
フェリシアーノ・ヴァルガス
本田菊
逃げることも叶わないこの場で菊は焦りに焦り頭を働かせているのが分かった。 フェリシアーノはそこからどうするのが正解か全く分からなかった。
声の主はアーサーである。
フェリシアーノ・ヴァルガス
フェリシアーノ・ヴァルガス
腫れた目で笑い菊を安心させるようにペラペラと小声で喋って見せた。 菊は少し悩みながら謝り保健室から出ていった。
アーサーはベッドにいた。それが不幸中の幸いでその後カーテンが開けられる。 すると保健師はこちらに近づき事情を聞く。 今では精神的な問題として保健室を使うのは有りだ。許してもらえフェリシアーノもベッドに連れてかれたが寝るわけでもなく座った。 その後すぐ保健師は仕事に戻ってしまった。
その場合は職員室に向かう。
フェリシアーノが黙っていると隣から声をかけられた。
アーサー・カークランド
フェリシアーノ・ヴァルガス
自分らしくもない冷たい言い方で、それは菊のことがあったからだろう。 あれだけ怯えるならば相当の事があったのだと思う。
アーサー・カークランド
フェリシアーノ・ヴァルガス
バチバチとした空気にフェリシアーノは怯む。 あまり喧嘩とかそういうのは得意では無い。
強い言い方をしてくるアーサーに負けじとカーテンとカーテンを挟んで話し合いをしている。
アーサー・カークランド
アーサー・カークランド
フェリシアーノ・ヴァルガス
続く
コメント
8件
多分………………アーサーは菊と仲良くなりたいんでしょうね!!多分ですが…それかこれ以上の関係になりたいのか…?