⚠めずらしくそらまふじゃなくて そらろんです。
ろんさんから連絡が来たのは 突然で その内容も唐突で。
「活動を全部辞めようと思うんだ」 というメッセージの後に続いたのは 「きっともう連絡をするのも最後だと思うからそらるさんに会ってみたいな」という彼女らしくない 言葉だった。
疎遠になって数年 それでも仲の良かったあの頃を 忘れたわけじゃない。 思い出さないわけじゃない。いつかどこかで 零した本音をろんさんは聞いていただろうか。
「2分で着く電車に乗ったよ」
12時に駅で、ととんとん拍子で決まった約束の当日。ろんさんからのLINEを眺め、改札を出たところで壁に背を預ける。女の子と遊ぶってどんな感じだったかなぁ もうそんな浮かれたイベントはずいぶんとしてなくて想像がつかないや
Ron
そっとかけられた声の方を向けば 俺よりも頭1つ分小さな女の子が立っていた。白と薄い緑色の花柄のワンピース。肩にかかるボブの黒髪がサラリと揺れる。大きな瞳で見上げる彼女は、確かにその声はろんさんなのにただ純粋に1人の女性だった。
Srr
Ron
はじめまして?
ひさしぶり?になるのかな。
Srr
なんだかとても現実味のある女の子だ。
Srr
Ron
緊張してる?
なんだか恥ずかしくて 無意識に前髪を指先でいじってしまう
Srr
Ron
Srr
Ron
おそろいだね。
Ron
そらるさんの顔見るの初めてだし
Srr
他の歌い手たちは 誰もろんさんの姿を見たことがないという。だからなんかレアだなぁと思っていたけど
Srr
後ろからスピードを上げて追い抜いて行った自転車にろんさんの手を引いた。
Ron
会うとやっぱり男の人だねぇ
Srr
オカマだったの?
Ron
そうじゃないよ〜w
俺を見あげるろんさん てか隣に並ぶと身長差やべぇな 普段女の子と歩く事とかないからなぁ
Ron
Srr
Ron
イタズラっぽく笑うろんさんは 小さな左手を俺の方に向ける。
最初で最後…そうだね それならデートっぽいことを するのも悪くないかもね
Srr
白くて細い、 柔らかい拳を握りこんで指先を絡めた。俯いた横顔が何よりも可愛かった。
Srr
Ron
ホットサンドにしようかなぁ。
Srr
Ron
そらるさんは?
Srr
なんとなく 道端の看板につられて入ってみた 静かで落ち着いた雰囲気のアンティークなカフェ。
向いに座るろんさんは 楽しそうに店内を眺めている。 本当に少女のようだ。 年齢はそんなに離れていないはず なんだけどなぁ。
「おまたせしました。」
ふわりとコーヒーの香りが染み付いたマスターに運ばれてきたホットサンドのプレートとミルクティーとホットコーヒー。
ろんさんちのインコの話 最近行った旅行の話 オススメのアーティストとか 便利だったキッチングッズとか そんな他愛のない小さな小さな話
Ron
Srr
夜はバーになるようだから きっと誰かが歌うのかもしれない。
「弾かれますか?」
マスターが俺のカップに 2杯目を注ぎながら尋ねる。
「もちろん。もう随分使ってないんですよ。あのセッションスペース」
きらきらと目を輝かせるろんさん。 マスターにつられてピアノの方へ
Ron
ピアノ、弾けるんだっけ
Ron
「おや、そうだったんですね。」
Ron
すごい人なの!
「そんな素敵な方のセッションにお客さんが居なくて申し訳ないですね。」
Ron
「そうですか。ごゆっくりどうぞ 」
丁寧にお辞儀をして キッチンの方へ消えていった。
Ron
初めてだね。
まるでその声が 最後だね、と言っているように聞こえた。
ねぇ、ろんさんなんで辞めちゃうの 連絡の手段も閉ざしてどこへ行くの。心のどこかで 俺だけは連れていってくれるって思ってたのは自惚れかな。
Ron
懐かしいあんな曲も 案外覚えてるんだね。
Ron
ろんさんがろんさんをやめようと思った時ね、本当は誰にも会わないでこの姿を見せないで消えちゃおうかと思ってたんだよ。
俺の浅い呼吸音が 空気に乗って
Ron
ろんさんの耳にまで届いてしまっていたようだ。
Ron
ああ、曲が終わってしまう。 音が切れたらもう俺たちは終わりなのにもう二度と会えないのに。
Ron
いつかどこかで街の中とか道端とか
すれ違った時にね、ろんさんの事をね、
ー思い出してくれたらいいなって 思ったんだよ。
いつかまたどこかで出会った時は ろんさんはただの女の子で 俺はただひとりの男として またどこかで歌を歌えたらいいね。
Ron
それまで君が俺を呼ぶその声は 胸の奥のこの辺の木箱に 仕舞っておくよ。






