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主
主
主
女の子
俺
俺の口から意図せず声が出た。
彼女は静かに首を振った。
女の子
女の子
俺
女の子
女の子
女の子
俺
俺
俺の目が丸くなった。 限界まで開いていると思う。 冷や汗がつる、と頬をつたった。 周りの音が一瞬にしてなくなってしまったような気さえした。 ただ、彼女の声だけが鮮明だった。
俺
俺
女の子
彼女は即座に返した。俺の思考は止まってしまった。 彼女は遠い国の知らない人のことを話すように、 無垢で無心な目を横に向け、人々の風景を眺めながら口を開いた。
女の子
彼女は止まらないで、淡々と語る。 俺は彼女の言っていることを耳で拾うことしかできない。
俺
女の子
彼女は俺をみた。再び微笑んだ。
女の子
俺
俺は力無く呟くことしかできなかった。 俺たちの間に気まずい沈黙が流れる。 彼女は俺から目を逸らし、また俯いてしまった。 俺は動けなかった。 何か彼女に言わなければならない言葉がある気がした。 でも、それはわからない。 思考は動かない。 止まったまま、時間が過ぎた。 ひどく長く感じた。 それは数十秒のことだったのかもしれないし、 もしかしたら何時間も経っていたのかも知れない。
再び俺の耳に届いたのは、間が抜けたアナウンス音だった。 まず流れたのは英語だった。その後は多分、中国語。 全部つらつらと俺の耳の上を滑る。 かろうじて聞き取れた単語はいくつかあったけど・・・ 俺にはわからなかった。 俺は語学が苦手だ。 しばらくして、初めてアナウンスから日本語が聞こえた。
アナウンス
機械で作られたような、薄っぺらい声だった。 男だと思えば男に聞こえるし、女だと思えば女に聞こえる。 老人だと思えば老人に聞こえるし、子供だと思えば子供に聞こえる。 そんな声だった。 放送が終わったあと、黒かった壁に国旗が出現しそこに大きなドアが現れた。 上が黄色、下が青のウクライナの国旗、 黒赤緑に白い礼拝堂が描かれたアフガニスタンの国旗、 その他にも俺が知らない国旗が次々に表示される。 俺の周りにいた人たちも不思議そうな顔をして歩を進める。 俺も辺りを見回した。 とりあえず自分と同じ日系の人の行く方向に進む。 彼女も歩き始めていた。 俺たちの行く方向は同じだった。 俺の頭はぼんやりしていた。自分が死んでたことに気づいた。 気づいた途端、自分が死んだ時の記憶がやけに鮮明に思い出せた。 俺は死んだのだ。 死にたくなかったな。 ・・・いや、死んだ方が良かったのか。 死んだ方がマシだったか。
女の子
俺
後ろから声が聞こえた。俺は振り向いた。話しかけたのはあの女の子だった。
女の子
俺
俺
また、ずしんと肩にリュックが食い込んだ。
俺
俺
下を向いて、自分の靴を見た。 地面がやけに近く感じた。
そう。俺が死んだのは最高速度五十キロメートルの国道だった。 いつもは通らないけど、俺が通っている塾のそばにあった。 夏期講習の帰り、いつもみたいに模擬試験の結果が散々だった。 俺の気持ちは沈んでた。 顔を上げたら、いつも通らない道路が輝いて見えた。 そのまま飛び出して、引越し会社の大型トラックに引き摺られて俺は死んだ。
俺
俺
女の子
彼女は俺のトレーナーを見ている。
俺
女の子
女の子
彼女が俺の服を掴んで、袖を捲った。 その後、彼女の形が整った眉毛の間にしわがついた。
女の子
そう言って袖を戻す。俺は何も言えなかった。
女の子
俺
・・・図星だった。 実際、俺はいじめられていた。 なんで始まったのかは覚えていない。 同じ塾の、友達だと思っていたやつに教科書を破られたのがきっかけだった。 そこから、集団にテキストを破られたり、 隠されたりするのが当たり前になってしまった。 抵抗したら殴られた。 スニーカーに落書きをされることもあった。 まともな勉強もできなくなってしまった。 親に相談することもできなかった。 二人とも忙しくて、家に帰ってくることもなかったから。 彼女は小さな両手で俺の手を包んだ。 柔らかくて暖かい。 彼女は笑ってくれた。 俺も顔が綻んだ。 心のうちが暖かかった。
俺
俺