拝啓亡くなった君へ

テレビで放送されている彼を見て、人は変わるんだなと思った

連日怪盗と世間を騒がせていた鳴瀬は俺の従兄弟

優しかった彼の姿はなく、全身に刺青など怖い姿になっていた

彼を変えてしまったのは俺なのかもしれない

だから、もう

大切な人を失いたくなかった

ゆさんが受けた余命宣告。治すための莫大な費用

費用を集めるために怪盗をすると誓ったちむ達

ゆさんともずっと一緒に居たかったし、捕まって離れ離れにもなりたくなかった

でも分かっていた

時には選択をしなくてはならない

俺も1人の医療従事者として余命を宣告する現場に立ち会ってきた

患者さんの中には、心配させたくないという思いから家族、親友などの周りに伝えないという人もいた

だから、ゆさんもそう長くは生きられないと悟ったのはいつの日だったのか

ある時、ゆさんに相談をされた

なに言ってるの？

疲れちゃった

治りますように

そしてみんなでまた遊べますように

あんたなんかいなければ良かったのに...

ﾂｰﾂｰ

数年前

ｶﾞﾗｶﾞﾗ（出ていく）

母さんはその日から、病院に来なくなった

来てくれるのは従兄弟の鳴瀬だった

段々と俺の体は衰弱していき、治療費だけが残っていた