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LINE831

第1話 - あ

2023年06月30日

#恋愛

結城真矢

ミユキ

コズエさん、仕事はいつ辞めるのかしら？

コズエ

お義母さん、またその話ですか…

ミユキ

それはそうですよ！

ミユキ

今までも散々辞めろと言っているのにまだ仕事をしているなんて

ミユキ

どうせ、贅沢をしたくて仕事をしているんでしょう

コズエ

いいえ

コズエ

私は将来のための貯金と

コズエ

何より自分の好きな仕事だから働き続けているだけです

ミユキ

女が働くなんてみっともない！

ミユキ

あなたには私の息子、旦那がいるんですよ？！

ミユキ

その稼ぎで十分でしょう

コズエ

ショウタくんの稼ぎだけでも生活はできますよ？

ミユキ

だったら、働かなくていいじゃない

コズエ

でも、相当切り詰めて生活をしなければなりませんよ？

コズエ

物価が高騰し続け、夫婦の収入が減っている現在

コズエ

夫婦の共働きが当たり前になっている時代なんですよ

コズエ

もちろん、専業主婦がダメとかそういう話ではないですが

コズエ

結婚前にショウタと2人で話し合って、将来のことについて考えました

コズエ

その中で、私は結婚後も仕事をし続けるという結果になったんです

コズエ

ですから、少なくとも今は仕事を辞めるという選択肢はありません

ミユキ

コズエさん

ミユキ

何なんですか、その言い方は

ミユキ

あなたのワガママがいつまでも通用するとは思わないでね

コズエ

ワガママですか？

ミユキ

姑である私が仕事をやめなさいと言っているんです

ミユキ

旦那の稼ぎがあるにも関わらず…

ミユキ

いい加減、仕事を辞めて専業主婦になりなさい！

コズエ

それはできません

ミユキ

姑の私に逆らったら嫁としては失格ですよ？

コズエ

専業主婦になったら嫁として合格なんですか？

ミユキ

ええ、そうよ

ミユキ

当たり前のことをいちいち聞かないでちょうだい

コズエ

ちなみにお義母さんはショウタくんの意見を聞いたことがありますか？

コズエ

妻に仕事を辞めてほしいのかとか、今後の生活についてとか

ミユキ

そんなこと、いちいち聞かなくてもわかりますよ

ミユキ

あの子は専業主婦として家を守って来たこの私を見て育って来たんですよ？

ミユキ

妻であるあなたにも専業主婦になってほしいと思っているに決まっています

コズエ

そうですか

コズエ

では、私もショウタくんに聞いてみます

ミユキ

聞かなくてもわかります！

コズエ

何にしても、ショウタくんと一度話し合う必要がありますので

コズエ

これで失礼します

〜その日の夜〜

ショウタ

コズエ、お疲れ〜

ショウタ

ごめんなぁ、遅くなって

ショウタ

今会社出て、帰りの電車に乗ったよ

コズエ

ショウタ、お疲れ様

ショウタ

なぁ、母さんからメッセージが届いてたんだけど

ショウタ

コズエが仕事を辞めることにしたって本当？

コズエ

え？

ショウタ

いや、母さんからコズエが仕事を辞めて専業主婦になることにしたっていう話が来てたから

コズエ

いや

コズエ

今日たしかに日中、そんなメッセージはやり取りしてたよ？

コズエ

でも、一方的に仕事を辞めろと言われてただけで

コズエ

私は辞めるつもりはないって言ったんだけど

コズエ

いくら言っても私の意見を聞き入れてくれないから

コズエ

ひとまずショウタと話しますって言ってメッセージを終えたの

ショウタ

そうだったのか

ショウタ

コズエが自ら辞めるって言ってるみたいな書き方だったからさ

ショウタ

職場で何かあったのか心配になってさ

コズエ

ううん

コズエ

職場では何もないよ

コズエ

ありがとう

コズエ

休憩時間中にお義母さんからメッセージが来て、ショウタには帰ってから話そうと思っててさ

ショウタ

なんで母さんはコズエが自ら仕事を辞めるって言い出してるみたいな書き方したんだろう

コズエ

自分が専業主婦になれ！って押し付けてるとバレるのが嫌だったんじゃない？

ショウタ

へ？

コズエ

お義母さん曰く

コズエ

ショウタも私が専業主婦になることを望んでるはずだ！ってさ

コズエ

ショウタの意見を聞いてないのに決めつけてるから

コズエ

一旦メッセージを終えたの

ショウタ

俺は一言もそんなこと言った覚えはないんだけどな…

コズエ

そうでしょ？

コズエ

結婚前に決めたことだもんね

ショウタ

ああ

ショウタ

そのメッセージのやりとりさ

ショウタ

俺が帰ってから見せてくれる？

コズエ

ええ、いいわよ

ショウタ

仕事を辞めろと催促してきたのは今日に限ったことじゃないんだろ？

コズエ

ええ、以前から事あるごとに何度か催促はされたわ

ショウタ

そうか…

ショウタ

メッセージの内容によっては父さんを巻き込んで話をする必要があるな…

コズエ

お義父さんも？

コズエ

なんか、私が思ってるより深刻な感じ？

ショウタ

ああ、たぶんな

ショウタ

この前、実家に帰った時父さんが何か話を聞いてほしそうだったんだ

ショウタ

そのとき、隣に母さんも居たから話すことはできなかったんだけど

コズエ

そうなんだ

コズエ

まぁ、帰って来てから話の続きをしましょ

コズエ

気をつけて帰って来てね

ショウタ

ありがとう

〜１週間後〜

ショウタ

コズエ、お疲れ様

コズエ

ショウタ、お疲れ様

コズエ

今日は私が仕事で一緒に行けなくてごめんね

ショウタ

いや、良いんだ

ショウタ

父さんも2人に話を聞かれるより俺だけに話したほうが気が楽だと思うから

コズエ

そうね

コズエ

で、どうだったの？

ショウタ

まず、夫婦共働きを辞めて専業主婦になる話だけど

ショウタ

父さんと母さんは一回り離れてて結婚してたらしい

コズエ

うん

ショウタ

だから、結婚した時点で父さんも会社内である程度の地位があったし

ショウタ

収入もそれなりにあったから

ショウタ

母さんは働かなくて済んだんだってさ

ショウタ

もし、母さんが自分と同年代で結婚していたら

ショウタ

きっと共働きにならざるを得なかっただろうって

コズエ

…そうなんだ

ショウタ

母さんは一度も働いたことがなくて

ショウタ

学生時代にアルバイトもしたことがないらしい

コズエ

そっか…

コズエ

私もね、あれから考えてたんだけど

ショウタ

ん？

コズエ

今後の働き方についてね

ショウタ

ああ、以前言ってたアレか

コズエ

覚えててくれたんだ

ショウタ

当たり前だよ

ショウタ

時期は決めたの？

コズエ

うん

コズエ

そろそろかな？って思って

ショウタ

俺は全然良いと思うよ

ショウタ

コズエは結果を出してるんだし

ショウタ

そのコズエが今だと思ったタイミングが一番なんじゃないかな？

コズエ

ありがとう

ショウタ

父さんには報告したし

ショウタ

また、一緒に話をしたいんだってさ

ショウタ

深刻な話らしくって、4人で話をする必要があるって

コズエ

わかった

ショウタ

コズエの今後の仕事についてもあるし

ショウタ

また話をしよう

ショウタ

詳しくは帰ってから決めよう

〜２週間後〜

ミユキ

コズエさん

ミユキ

あなた、まだ仕事を辞めてないの？！

コズエ

お義母さん、どうしました？

ミユキ

この前の話よ！

ミユキ

ショウタと話し合うって言ってたじゃない

ミユキ

あの子は私と同じ考えのはずだから

ミユキ

あなたが早く専業主婦にならないと離婚を言い出すかもしれないわよ？

コズエ

そうなんですか？！

コズエ

でも、もう仕事は辞めました

ミユキ

あら？

ミユキ

そうなの？

コズエ

正確には辞表を出しました

コズエ

今は引き継ぎと残務整理をしています

ミユキ

そうなのね！

ミユキ

じゃあ！

ミユキ

今月末には退職する感じなのね？！

コズエ

はい

ミユキ

それは良かったわね！

コズエ

ええ

コズエ

私としても仕送りをしなくて良くなったことはよかったです

ミユキ

へ？

ミユキ

仕送り？

ミユキ

何のこと？

〜その直後〜

ショウタ

仕送りのことについては俺が説明するよ

ミユキ

ショウタ！

ミユキ

え？なんで？

ショウタ

今、コズエの隣にいるからね

ミユキ

そうなの

ミユキ

仕送りって何のこと？

ショウタ

半年ぐらい前かな

ショウタ

父さんから生活が苦しいと頭を下げられて

ショウタ

俺たちから月に10万円仕送りをしていたんだよ

ミユキ

え？

ミユキ

なんで？

ミユキ

私そんなこと聞いてないわ

ショウタ

母さんには生活が苦しいこと、そのために支出を減らす必要があることは言ったって

ショウタ

でも、適当に流されたと言ってたよ

ミユキ

どうして、そんな…

ショウタ

母さんがお金を無駄遣いしてるからだろ？

ミユキ

え？

ショウタ

母さんは今まで働いたことがなくてお金の重みを知らない

ショウタ

だから、父さんが稼いだお金を湯水のごとく使って来たんだ

ショウタ

父さんが現役のころは、それでもわずかに父さんの収入が上回っていたから

ショウタ

生活できていたけど、定年退職してからも母さんの浪費癖は変わらなかった

ショウタ

現役時代も貯金は満足にできず

ショウタ

退職後も同じようにお金を使い続ければ、尽きるに決まっているよ

ミユキ

でも、年金が…

ショウタ

そりゃあ、父さんの現役時代を考えれば年金の受給額は高いほうだと思うよ？

ショウタ

それでも、収入は減るに決まってる

ショウタ

母さんの浪費癖が変わらないから家計の赤字が続いてたんだ

ショウタ

だから、父さんは恥を忍んで息子夫婦に頭を下げてまで仕送りをお願いすることになったんだ

ミユキ

でも退職金があるじゃない

ショウタ

父さんが退職してから何年経ったと思ってるの？

ショウタ

そんなお金残ってないんだよ

ショウタ

父さんから預金通帳を見せてもらったけど

ショウタ

毎月のクレカの引き落とし額が受給額の２倍以上になってたよ

ミユキ

そんな…

ミユキ

あの人は一度もそんなこと…

ショウタ

そうなんだよ

ショウタ

父さんも随分母さんに対して甘かったと思うよ

ショウタ

クレカの出費が止まらないなら取り上げるなり、使用停止にするなりやり方はあったのに

ショウタ

それをしなかった

ショウタ

父さんは言ってたよ

ショウタ

たまに話はしていた

ショウタ

いつか気づいてくれると思ってたって

ショウタ

俺からすれば母さんに甘すぎると思うよ

ショウタ

自分で策を講じずに息子夫婦に援助を求めて来たんだから

ショウタ

だから、父さんに言ったんだ

ショウタ

俺たちに毎月10万もの仕送りをねだっておきながら

ショウタ

母さんは

ショウタ

コズエに専業主婦になれと迫って来ている

ショウタ

それはどういうことだって

ショウタ

俺1人の稼ぎでは夫婦だけの生活でも切り詰めなくてはならないのに

ショウタ

その上、両親の生活を支えることなんて不可能だ

ショウタ

俺たちに路頭に迷えと言ってるのか？

ショウタ

とね

ミユキ

え

ショウタ

父さん…驚いてたよ？

ショウタ

母さんがコズエにそんなことを命令していたなんて…って

ショウタ

で、今日うちに来てもらってコズエと母さんのメッセージのやり取りを実際にみてもらったよ

ミユキ

え

ミユキ

あの人、そこにいるの？

ショウタ

ああ

ショウタ

父さん、実際にメッセージの内容を見て

ショウタ

いかに自分が母さんを甘やかして来ていたか痛感したみたい

ショウタ

仕送りはしなくていい

ショウタ

今まですまなかったと

ショウタ

コズエに頭を下げていたよ

ミユキ

え！？

ミユキ

仕送りで今までの生活ができていたのに

ミユキ

仕送りがなくなったら…

ショウタ

そうだよ？

ショウタ

だから、母さんも今後の身の振り方を考えなよ

ショウタ

父さん言ってたよ

ショウタ

今後も母さんの浪費癖に改善が見られなければ、考えなきゃいけないことがあるって

ミユキ

考えなきゃいけないこと？

ショウタ

それは、自分で考えてほしいけど

ショウタ

とにかく、母さんはお金の使い方について考えを改めたほうがいいよ

ミユキ

お金の使い方…？

ショウタ

それと

ショウタ

コズエが言ってた会社を辞める件だけど

ショウタ

今の会社を辞めるだけであって専業主婦になるわけじゃないから

ミユキ

え？

ショウタ

コズエは会社と並行して副業をしていたんだ

ショウタ

その副業が軌道に乗って来て会社との両立が難しくなって来たんだ

ショウタ

その上、収入も会社の給料より上回っているから無理に働き続ける必要がなくなったってこと

ショウタ

収入に関しては俺より上だしね

ミユキ

なんですって？！

ミユキ

夫より稼ぎが多いなんて…

ミユキ

ショウタはそれでいいの？

ミユキ

妻より稼ぎの低い旦那なんて…

ミユキ

近所で噂されたらどうするの？！

ショウタ

夫婦共働きなんて今じゃ当たり前だよ

ショウタ

稼ぎに関しても男が女より上なんて古い考え方だよ

ショウタ

今は能力がある人が稼げる時代なんだよ

ミユキ

でも…

ショウタ

父さんが今から帰るそうだよ

ショウタ

きちんと二人で話し合いなよ

〜後日談〜

コズエ

お義父さんは帰宅後、お金の使い方についてお義母さんにきちんと説明したそうです

コズエ

でも、お金の使い道が自分からお義父さんに変わっただけで

コズエ

10万円もする高級なネクタイを5本買って来たときにはお義父さんは怒りました

コズエ

言っても聞き入れないお義母さんとは離婚し

コズエ

そんな義母とも付き合いきれないので私たちもお義母さんとは絶縁しました

コズエ

お義母さんがどこで、どう暮らしているのか…それは誰にもわかりません

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結城真矢

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