テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

君だけに響く音

一覧ページ

「君だけに響く音」のメインビジュアル

君だけに響く音

2 - 出会いの春

♥

46

2025年09月23日

シェアするシェアする
報告する

桜の花びらがひらひらと舞い落ちる中学の校門。

ちなつ

大和ー! 待ってってば!

ちなつが声を張り上げると、大和は眉をひそめて振り返った。

大和

……声でけぇんだよ。周り見ろって

ちなつ

いいの! 今日から中学生だよ? テンション上がるに決まってるじゃん!

大和

……お前だけな

ちなつ

なにそれ! 冷めてる~

大和

冷めてねーよ。普通だろ

ちなつはぷくっと頬をふくらませながらも、 (でも一緒に登校できるのは嬉しいんだよね…) と心の中で思った。

教室に入ると、見知った顔が手を振ってくれた。

みか

ちなつー! 隣だよ、やった!

みかが嬉しそうに笑っている。

ちなつ

ほんとだ! うれしい〜! みかと一緒なら安心だね

みか

うんうん! 小学校からずっと一緒だし、席まで隣とか運命じゃん

ちなつはニコニコしながら荷物を机に置く。 前の方をちらっと見ると、大和は少し離れた場所に座っていた。

ちなつ

……あーあ。席遠いじゃん

みか

誰のこと?

みかがニヤニヤ。

ちなつ

べ、別に……大和のことじゃないし

みか

わかりやす〜

担任が声を張った。

担任

はい、今日は転校生を紹介するぞ。入ってきなさい

ガラリとドアが開く。

玲奈

……綾瀬玲奈です。よろしくお願いします

生徒

A)わぁ、きれい……

生徒

B)同じ中一に見えないよね

クラスがざわつく。

みか

ちなつ、見た? めっちゃ落ち着いてる雰囲気じゃない?

ちなつ

う、うん……すごく大人っぽい

ちなつが返事をすると、視線の先に大和が見えた。 彼は無表情で玲奈をじっと見ていた。

ちなつ

……

みか

ねぇねぇちなつ、なんでそんな顔してるの?

ちなつ

えっ? してない!

みか

ちょっとムッとしてたよ?

ちなつ

し、してないってば!

生徒

A)大和ー、綾瀬さんサッカー好きなんだって!

生徒

B)マネージャーやるんじゃね?

生徒

C)大和、よかったな!

大和

は? 別に……

大和は眉をひそめるが、男子たちは盛り上がっている。

通りすがったちなつには、聞こえていた。

ちなつ

……サッカー部のマネージャー?

ちなつがつぶやくと、すかさずみかがつっこむ。

みか

ほら、顔が赤いよ。気になってるんでしょ?

ちなつ

ち、違うもん!

みか

ふふ、隠してもわかるって〜

みか

ちなつ、部活見学どこいくの?

ちなつ

わたし? うーん……吹奏楽部、見に行こうかな

みか

えっ! 一緒じゃん!

ちなつ

えっ、みかも?

みか

そうだよー。お母さん、フルートやってるの。だからわたしもフルートやってみたくて!

ちなつ

わぁ! 素敵! じゃあ一緒に入ろ!

みか

うん! ちなつは?

ちなつ

クラリネット……かな。音色が好きなんだ

みか

いいね〜! じゃあフルートとクラリネットで隣同士になれるかも!

ちなつ

えへへ、それ最高!

ちなつはみかと手を取り合いながら、心の奥で――

(……でも大和は、玲奈ちゃんとサッカー部で一緒なんだよね) と小さく胸が痛むのを感じていた。

二人は胸を弾ませながら音楽室へきた。

ガラス戸を開けると、柔らかい木管の音、力強い金管の音が 響いてきた。

ちなつ

わぁ……すごい……!」

ちなつの目が輝く。

先輩

新入生? よかったら見学していきなさい

明るく声をかけてくれたのは、フルートを持った3年生の先輩。 髪をひとつに結んだ、元気そうな女の子だった。

川原先輩

3年の川原華(かわはら はな)って言うの。フルート担当! パートリーダー!よろしくね

ちなつ

は、はい! よろしくお願いします!

みか

お願いします!

ちなつとみかは同時に頭を下げる。

川原先輩

やりたい楽器ある?

みか

わたし……フルートに憧れてます!

川原先輩

いいねぇ〜! 私が先輩になっちゃうよ!

川原先輩はパッと笑って、みかの肩をぽんっと叩いた。

ちなつが少し遅れて手を挙げる。

ちなつ

わ、わたしは……クラリネットがいいです!

川原先輩

クラリネットなら――美咲ちゃん!

川原先輩が声をかけると、 奥から眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気の先輩がやってきた。

藤井先輩

藤井美咲(ふじい みさき)。2年でクラリネットやってるの。よろしくね

ちなつ

よ、よろしくお願いします!

ちなつは一気に緊張して背筋を伸ばした。

藤井先輩

最初は音出すだけでも大変だと思うけど、焦らなくて大丈夫だから

美咲先輩が優しく微笑む。

ちなつは胸の中で小さくつぶやいた。 (……この先輩、すごくきれい。クラリネットも似合ってて……わたしもこんなふうになりたいな)

音楽室の窓からは、グラウンドの声が響いていた。

A)大和ナイスシュート!

B)さすが桐谷!

ちらりと見える大和の姿、その横には玲奈の姿。 タオルを差し出し、大和がそれを受け取っている。

ちなつはクラリネットを握る手に力を込めた。

みか

ちなつ?

みかがすぐに気づく。

ちなつ

……べ、別に

みか

ふーん……顔、赤いよ?

ちなつ

ち、ちがうし!

みか

はいはい。図星〜

みか

ちなつ、クラリネットって意外に似合うね

ちなつ

えっ? そ、そうかな?

みか

うん。なんか、ちなつらしいって感じ

ちなつ

……ありがと

みかと歩いていると――前に大和と玲奈の姿が見えた。 二人は並んで歩きながら、なにか話している。

玲奈

……桐谷くん、サッカーすごいね

大和

べつに

玲奈

ふふ、照れてる?

ちなつの足が止まった。 みかが小声で耳打ちする

みか

……大和と玲奈さん、なんか仲良さそう

ちなつ

……っ!

ちなつは慌てて笑顔をつくる。

ちなつ

き、気にしてないし!

みか

はいはい。わかりやす〜

夕暮れの空の下、ちなつの胸は少しだけざわついていた。

この作品はいかがでしたか?

46

コメント

2

ユーザー

凄 、🫶🏻✨

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚