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続き楽しみにしてます!
主
主
主
主
出会った時とか覚えとらん
親同士が面識あって
彼が生まれた時から一緒に居った
1番古い記憶は、彼が俺の指を握ってる姿
まだ1歳にも満たない彼の事を
「護らんと」
そう思ったのを覚えてる
彼は新しいこと楽しいことが大好きで
新しいことに挑戦することが多かった
やからか、いつも違う事をしとった
俺とは真反対やと思った
やけど彼は俺に懐いてくれて
俺が何をしてたとしても、 真似して隣で一緒にやってくれた。
掃除でも
運動でも
勉強でも。
多分彼は
反復や持続、丁寧よりか
新しい挑戦とか思っ切りやる方が好きなんやと思う
けど
彼
って笑顔でいつも隣に居てくれた
どっちかと言うと俺と一緒に何かをやる、と言うよりも
俺と一緒に居てたかったんやと思う
特に勉強の時は毎回途中で寝てもてたし
でも多分全部彼なりの精一杯の丁寧で
飽きてきたとしても俺が終わるまで 眠たそうにしながら俺と同じ事をして
苦手な事でも出来るだけしようと 頑張っとった
その精一杯の丁寧の中で上手くいった事を褒めると
嬉しそうに笑っていたのを覚えてる
彼が小学2年ぐらいの頃かな
1回だけ彼が″ちゃんと″せんとサボった事がある
何もかも全部中途半端で放り出した事がある
俺もその時は子供やったから
北 信介
ってちょっと怒ってん
そしたら彼は大粒の涙を零しながら
彼
彼
彼
と不貞腐れたような顔で言った
この時に初めて 彼が「俺に褒められるため」に
″ちゃんと″してきたんだと気づいた
俺は別に褒められやんでもちゃんとやる
けど
ちゃんとやるよりも新しい事が好きな彼が
新しい事よりもちゃんとやる方を選び続けてきた理由は
俺に褒められるからやったんかも知れやん
彼が小学4年生になり
1月、俺の家に来て拭き掃除を 手伝ってくれていた時のこと
居間のテレビでたまたま付いていた 春高バレーを彼が見る
彼は小さくも高く飛び、空中戦で勝つ「小さな巨人」を知ると同時に憧れた
彼
彼が親に必死に訴えかけとったのを 覚えてる
1学年上がって俺は中学生になった
それと同時にバレーを始めてみた
ずっと俺に着いてきてくれた彼に何か お返しがしたくて、
周りにバレーしてる人が居らんかったから
せめて俺だけでも一緒にバレーできるようになろって思ったんや
バレー部入ったって言ったら彼は嬉しそうに笑った
彼
って彼が言って
俺もそれを心の底から楽しみにしとった
彼が中学生に上がるタイミングで
彼の宮城への引越しが決まった
彼は泣いていた
彼
って
彼
って
それは俺も同じで
けど叶わん夢になってもて
でもここで俺が泣いたら 彼は泣き止まんって思ったから
抱きしめた
ただひたすらに泣き止んで欲しかった
ずっと隣に居てくれた 背の低いオレンジの髪をした少年は
12年間一緒に過ごした後に
引越して行った
毎日やんねん ちゃんとやんねん
全部いつもと同じ 反復 継続 丁寧 は心地ええ
けどあの日から隣に誰も居らんのが 酷く寂しく思う時がある
高校3年、春高前
俺らの初戦は烏野高校か椿原学園高校
勝った方とやる
烏野高校は、俺と彼がバレーを始めるきっかけになった高校
今はどんな選手が居るんやろうと
ネットに上がってる試合を見る
北 信介
思わず声を漏らす
オレンジ色の髪
低めの身長
楽しそうな笑顔と
精一杯の丁寧
間違いない
俺が間違える筈がない
あの日別れたっきりの幼馴染
【翔ちゃん】や
3年越しに見る彼は 新しい仲間に囲まれて
楽しそうにバレーをしてた
高く飛ぶ彼を見てたら色んな思い出が蘇る
北 信介
俺は翔ちゃんの出てる試合の画面に額を近づけ
静かに泣いた