キミのお弁当に恋をして

ある日の昼休み──

購買でパンを買って教室に戻った私の目に、それは飛び込んできた。

見た目が怖く、中学時代から凶暴だったという噂があり

クラスのみんなから不良と恐れられている

黒木剛（くろきつよし）くんの弁当に、私は心奪われた。

おろした生姜が醤油色に染まって、

しっかりと豚肉に絡んでいるのがわかる。

だし巻き玉子はその色と形が綺麗で、今すぐにもカプッと齧り付きたい。

レンコンの抜群の照り具合に、料理上手な人が作ったことがわかる。

同じ中学校に通っていた麻衣は隣のクラスなのだが、

高校に入ってもお昼は一緒に食べている。

私は、その場から逃げるようにして離れる。

でも…私の頭の中は、さっき見た弁当でいっぱいだった。

両親が共働きのため、お昼はいつも購買のパンか学食で済ませる私にとって

黒木くんのお弁当は眩しかった。

次の日のお昼も…

購買でパンを買ってきた帰りに、窓際の一番後ろの席に近づき…

そっと、黒木くんのお弁当を覗く。

とっさに謝ったのだが、私の目はお弁当の中身に釘付けのまま。

そう答えながら、黒木くんのお弁当をじっと見る。

そう言うと、黒木くんは、だし巻き玉子が取りやすいように

弁当箱の向きを変えて、私の方に差し出す。

私は、親指と人差し指でちょんと玉子焼きをつまむ。

パクッ

モグ…モグ…モグ…

そのだし巻き玉子は、ふんわりと柔らかく…

塩と出汁の加減が素晴らしくて…

黒木くんはバッグから爪楊枝を取り出し、

チキンカツに刺して、弁当箱を私の目の前に出す。

モグ…モグ…モグ…

モグ…モグ…モグ…

一瞬、頭の中が混乱する。