もっぷ
こんな感じにテキストに長文を書くことです。
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ドルダム×オリダム
アダム=ユーリエフは目を瞬かせた。 「アダム=ユーリエフです。以後お見知り置きを」 お見知り置き、と言われても。アダムは喉まででかかった言葉を何とか飲み込んで、「はあ…」と曖昧に返した。 そこにいるのは紛れもなく自分自身と同じ顔をした人物。 自分が着たことの無い服に、見たことの無い装飾。 「よろしくお願いします」 到底自分が経験してきた戦いとは無縁そうな姿のアダム=ユーリエフが頭を下げる。 「こちらこそ、その、よろしくお願いします…?」 アダムは事態を把握できなかったが、とりあえず同じように頭を下げた。 「なるほど…」 どうやらコンパスの世界では、コスチュームの違う自分がガチャでこの世界にやってくるらしい。 アダムはちら、と目の前で淡々と説明をしていた『コンサートフォーム』のアダムの方に視線を向けた。 『ヘッドセット』なるものを付け、膝丈のズボンと短いジャケットに黒のグローブ。 「いわゆる、『アイドル』なのですよ」 じっと見つめる先で衣装を纏うアダムが苦い笑みを浮かべた。 「同じ顔でしょう?見つめないでください。そんなに珍しいものですか?」 「いや、その…」 違和感。いつも鏡で見ていた顔の『自分』が見たことも無い衣装に身を包むことに戸惑いを隠せない。 「しかし、確かにいつまでも見つめ続けるのは失礼ですね。申し訳ありません」 相手はいくら自分だろうと不快に感じるだろう。そう考え軽く頭を下げると、くすくすと笑う声が降ってくる。 「貴方は随分と素直ですね」 顔を上げると『アイドル』の彼はそれに相応しい綺麗な笑みを浮かべていた。 「…っ、そういえば、貴方の世界では争いはないのでしょうか?」 アダムは何故かその場に居られなくなるような気恥ずかしさを感じて慌てて話を逸らした。 「…『オリジナル』の世界では争いがあるのですか?」 真っ直ぐに見つめてくる瞳の中に急に現れた真剣な色に焦ったアダムが「ええ。」と頷く。 「俺の世界では戦いがありました。『アイドル』の世界ならばやはり平和なものなのでしょうか…?…っ!?」 『アイドル』のアダムがアダムの方へ足を踏み出した。急に距離を詰められて思わず体が仰け反る。 「あの、どうかしましたか…!?」 何も言わないアイドルのアダムに焦って声を掛けるが返答はなく、代わりに左の手首を掴まれる。 「っ!」 掴まれた手首の痛みに顔を顰めるが、その意図は伝わっていないのか押さえる手の力は弱まることはなく、そのままぐい、と引き寄せられた。 「あの、本当に、何かありましたか…?怒らせてしまったなら謝りますから…っ!?」 沈黙する相手に慌てて声を掛けたその吐息ごと唇を塞がれる。 「…んぅ…!」 驚きと困惑から身を捩って彼を振りほどこうとしたが、空いたもう片方の腕ががっちりと腰に巻きついていて離れない。結局少し体を揺らすので精一杯だった。 「ぅ…む…、…っ!?」 一瞬離れたかと思いきやまた唇を塞がれる。次は唇の間を軽く開かせるようにして舌までもが入ってきた。 驚きのあまり空いている手で突き放そうとしたが片手ではどうにもバランスが取れず力が入らない。 「ん…ふっ…!」 歯列をなぞり舌を無理やりのように絡める。 舌を噛み切ってやろうかと頭によぎる時に限って舌は向こうの口の中に戻っている。 長い長い口付けのあと、ようやく気が済んだのか離した唇と自分との唇の間に銀の糸が引いた。 「、クソが…」 痺れたように感覚が遠くなった舌先を動かしてやっとの事で吐き捨てる。 「…コレが俺の世界での戦い方だ」 アイドルの衣装とは相反して、その表情に影が落ちる。 「仕事を貰うためならなんだってする。この世界で有名になるためのひとつの手段だ」 似ている。アダムはそう思った。やはり『アイドル』の彼もそうなのだ。 アダムは『アダム』であった。 ある意味戦いの中で生きていると、そう言いたいのであろう。 「何も知らないにも関わらず、勝手に決めつけるようなことを言ってすまなかった。」 『アイドル』の前に自分の力でしっかりと立つ。 「…やっぱり貴方は素直ですね」 「…貴方も俺ですよ」 剣呑な眼差しで見つめるが全く意に介さない様子で彼は口に綺麗に笑みを作る。その所作は確かに『アイドル』と呼ぶのに相応しかった。 「そんな『俺』も嫌いではないですよ」
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コメント
6件
ぽん、ぽんって終わっちゃった(((
もちろん見るよぉー!
ヴィオちゃんの小説毎日見てるう!よかったらぼくのおすすめもみてくれえぃ!