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そこは、不思議な場所だった

何かあるのに、何も無いような

何も無いのに、何かあるような

それでいて、 どこか懐かしいと感じるのだから

僕がどうかしたのかもしれない

彼方者エレベーター No.1

山川優斗の場合

僕は死んだハズだった

死に方は...なんとなく憶えていて

確か飛び降りだった...と思う

なのに...なぜ

エレベーターの前にいるのだろう

扉は開いたままで 階数表示は21階まであった

山川 優斗

...?

恐る恐る隣を見れば 他に何台も エレベーターが並んでいる

山川 優斗

あ...

山川 優斗

あっちのは80階まである...

なんとなく 高い方に行きたくて

手を伸ばした

山川 優斗

ぅわっ!?

バチッと音がして

僕の身体は 見えない何かに弾かれたように

そのエレベーターから遠ざかる

???

...そのエレベーターは

???

貴方のものではありませんよ

山川 優斗

!?

不思議な質量を持った声が 隣から聞こえてきて

咄嗟に後ずさる

誰もいなかったハズの空間に 仮面を付けた男性が立っていた

山川 優斗

だ...誰ですか?

???

失礼しました

???

私、ヤマカワ様の

???

彼方者エレベーター案内人です

山川 優斗

案内人......?

案内人

ええ

案内人

先程貴方が行こうとしたのは

案内人

他の方のエレベーターです

案内人

...ほら、貴方は21歳で亡くなったのでしょう?

山川 優斗

...まさか

山川 優斗

だから、21階まで?

案内人

よくお分かりで

山川 優斗

っ、ちょっと待ってくださいよ

山川 優斗

僕は死んだハズだ

案内人

ええ確かに

山川 優斗

それならなんで...

案内人

死後の世界というものも

案内人

一概に天国や地獄という訳ではございませんのでね

山川 優斗

はあ......?

案内人

....さあ、エレベーターへどうぞ

背中に手を添えられて 押し込まれた?エレベーターは

外で見ていたよりも広くて

...それどころか ソファまであって

案内人

何階に参りますか?

山川 優斗

......これって

山川 優斗

階が歳を表している、ですよね?

案内人

そうです

山川 優斗

......12階に

案内人

小学6年生...ですね

山川 優斗

はい

なんでか、と尋ねられれば 答えに惑ったかもしれない

なんとなく、 思い出が強かったから

あの頃の自分の周りには 常に誰かがいて

温かかったのを憶えている

山川優斗(小学6年)

なあ!コレ見て!!

んー?

っあ!すっげー!

山川優斗(小学6年)

だろー?

案内人

あれが....貴方ですか?

山川 優斗

...はい

山川 優斗

っ、懐かしいなぁ...

伸ばしかけた手を、 案内人は掴んだ

案内人

触れてはいけません

山川 優斗

案内人

これは過去です

これは過去、これは過去...

案内人の言葉が 頭をグルグルと回る

山川 優斗

や、やだな

山川 優斗

わかってますよ

山川 優斗

はは...は......

案内人

それなら良いですけど

漏れるのは 引きつったような笑い声だった

山川 優斗

僕は...ちゃんとわかってますよ

そう言わないと 過去の映像に縋りたくなって

つい、強がりを言った

案内人

――くれぐれも

案内人

過去に取り憑かれないように

優斗母

優斗、ごはんよ?

山川優斗(中学2年)

っ、いらない!

山川優斗(中学2年)

ほっといてよ!

山川優斗(中学2年)

......なんで...

山川優斗(中学2年)

うぅ...くそ......っ

案内人

...これは確か

山川 優斗

14階...中学2年の時です

案内人

......なぜここに?

山川 優斗

好きな人が...いて

山川 優斗

その人に、フラれたんで

案内人

辛い思い出な筈なのでは?

山川 優斗

......はい

山川 優斗

でも、それも全部自分の過去なんで

案内人

そうですか

仮面の下の瞳は分からない

ただ、スっと細められた気がした

山川優斗(19歳)

あの...っ

はい...

山川優斗(19歳)

僕と...付き合ってください

......ありがとう

よろしく...お願いします!

山川 優斗

っ...真奈美......

案内人

触れてはいけません

山川 優斗

わかってるッ

山川 優斗

わかってる、けど...!

案内人

ヤマカワ様、落ち着いて

山川 優斗

......!

案内人

彼女さま...何かありましたか?

山川 優斗

......

山川 優斗

......亡くなったんです、彼女

案内人

ほぅ...

山川 優斗

海での...事故でした

案内人

それは誠にご...

山川 優斗

いや、言わないでください

山川 優斗

真奈美はそこにいるじゃないですか

案内人

......ヤマカワ様

案内人

あれは過去で...

山川 優斗

関係ないんだよッ

案内人

ヤマカワ様っ

山川 優斗

いいんだよ...

山川 優斗

もう僕は死んだんだ

山川 優斗

過去にいたって...良いじゃないかっ

手を伸ばし、 真奈美に触れようとした瞬間

バチッと音がして 体が大きくはね飛ばされる

案内人

っ、ヤマカワ様

案内人

いけません

案内人

それ以上は、過去に取り憑かれてしまいます

山川 優斗

っえ、

山川 優斗

あっ...

グッと肩を掴まれて ふと我に返る

山川 優斗

そう...ですね

山川 優斗

すいません

山川 優斗

この中にずっといたい

山川 優斗

彼女とずっといたい、なんて

山川 優斗

馬鹿なことを...

案内人

......いえ

案内人

そう願ったのは

案内人

貴方でもう13人目です

山川 優斗

そ、そうなんですか!?

案内人

ええ

山川 優斗

その12人は...どうしたんです?

案内人

過去の映像をずっと見る事が出来て

案内人

過去にずっといられる

案内人

そういう世界にいらっしゃいます

山川 優斗

そんなことが出来るんですか!?

案内人

あまりオススメは出来ませんが...

山川 優斗

どうでもいいんです!

山川 優斗

お願いします

山川 優斗

僕をその世界に連れて行ってください!

案内人

......

案内人

ずっといる過去は、ここですか?

山川 優斗

っ、はい!

案内人

わかりました

案内人

クラヒ・ヲケキチテ・ワリノソサシア
(偽りの静止した過去を開けよ)

突如、今まで見ていた過去に 黒い渦が現れた

山川 優斗

えっと、あの...

案内人

どうぞ

案内人

貴方の望む世界を開きました

山川 優斗

......ここに行けば?

案内人

戻ってはこられません

山川 優斗

彼女...真奈美とは?

案内人

永遠に共にいることができます

案内人

...その静止した過去に、永遠にいることになりますから

山川 優斗

そうですか...

山川 優斗

......

山川 優斗

ありがとう、ございました

礼をして 渦の中に足を踏み入れる

奇妙な感覚に惑いながらも 身体の半分を入れた時

案内人

また1人...取り憑かれてしまいましたか......

ガシャン

山川 優斗

(......え?)

案内人の声と共に エレベーターの扉が閉まった

閉まった扉は、 既に歪み始めていた

つまりそれは もう二度と扉が開くことは無い

それを意味していると、 知っている

案内人

だから

案内人

過去に取り憑かれないようにと

案内人

忠告したのに......

案内人

...仕方ないですね

パチン

指を鳴らすと

すぅ、と音もなく 扉が消えていく

案内人

......さて

案内人

次の彼方者は――

彼方者エレベーター No.1

山川優斗の場合 完

彼方者エレベーター

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