赤ずきんちゃん

リックの手元に視線を落とすと

ぐったりとしたレオが居た

オスカーの吐息が耳元にかかかる

オスカーの手が私の腰に伸びてくる

その時…

パシン！

リックがオスカーの手を叩いた

オスカーの顔は真っ赤に染まり

怒りに燃えていた

リックがそう言うと、レオはひょいっと立ち上がり

顔に着いた血を拭き取った

オスカーはニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべた

オスカーは私にだけ見える角度で

何かを取り出した

私がそう言った時には遅かった

オスカーはくるっと向きを変え

迷いもなしにリックを撃った

リックは苦しそうに床に蹲る

私は急いでリックに駆け寄る

幸い、撃たれたのは肩のようで命に別状は無い

出来事は一瞬だった

オスカーが私の方に銃を向け、撃った

全身が痛んで、どこを打たれたのか分からない

視界の端ではレオがガクッと膝を折り

虚ろな目でこちらを見ていた

レオは覚悟を決めたように

キッとオスカーを睨んだ

オスカーは俺を目掛けて銃を発泡した

俺は弾丸を避けて見せた

オスカーは立て続けに2発銃を発砲する

リチャードは苦しそうに喘ぎながら

言葉を紡ぎ出す

オスカーは負けを認めるかのように

俺に背を向けた

俺は静かにオスカーのすぐ後ろまで迫った

オスカーが急に振り返った

その手には、先程とは別の拳銃

銃弾は俺の足に命中した

オスカーは俺の腕に銃弾を撃ち込む

中略

略

オスカーはコトリと首を傾け

扉を開けた

扉の外には複数の人狼がいた

俺の仲間だ

｢助けに来たぞ！レオ！｣

｢お前がピンチなんて珍しいな｣

｢俺達、参上！｣

｢もちろん！｣

｢断る奴なんかいねぇよ｣

｢任せとけ！｣

人狼たちは一斉にオスカーに向かって飛び掛った

シェリーもオスカーの隙をオスカーの腕の中から抜け出した

…………

出来事は一瞬だった

数十人がオスカーに飛び掛ったんだ

奴はすぐ立てないくらいの怪我を負った

｢オラァァアアァァア！｣

仲間の1人がオスカーにトドメを刺そうと石を振りかざす

｢……？｣

｢どうしたんだ？｣

｢レオマルドが言うなら仕方ねぇ｣

仲間は石を手放した

俺はオスカーの方へ近ずく

オスカーは先程より弱々しい目をしていた

オスカーは何を言わず静かに頷く

そうは言いながらもオスカーは立ち上がるのに苦戦している

｢分かりました！｣

仲間たちは去って行った

シェリーは俺に抱きついた

リチャードは何か気に入らなさそうだった

リチャードは俺の方をチラリと見た

シェリーは涙を浮かべながらそう言った

リックは子供のようにはしゃぎ回った

シェリーが静かに支えてくれ

リックが俺を頼り

仲間が俺について来てくれる

そんな日常をこれからも続けていきたい

シェリーの、

いや、大切な人たちの為に

…………

どうでしたか？

童話に出てくる｢赤ずきん｣…

本当はこんな物語だったかも知れません

人を見かけで判断することや

噂を鵜呑みにするのは良くない事だとよく分かりますよね

皆さんがよく耳にする童話…

それは果たして本当の物語なのか…

もう一度、よく考えて見て下さい

｢赤ずきんちゃん｣

[完]

(気が向けば番外編書きます)