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鬼は外!!!!!!() ここ何名か破壊神いらっしゃいますか…?? ニャルゥゥゥゥゥゥ!!!!!()
中人)どこからか「ボクノダゾ!!!!!」と聞こえてくる。頭の中だった 本当に……白が好きなんです……噛みたい……食べたい……飼いたい……「キューキュー」言ってるちみ白を見てたい……眺めてたい…… 藍も好きだ……辛味噌ラーメンなら作れる……振る舞いたい……足だんを見てたい……
茜はー?
⚠ATTENTION⚠ これはチャッピーと僕でにこにこしながら考えたSAN0コメディになります。 全員SAN値ありません。正気はぶっ飛ばして見てください。諦めろ。 モスとノアの立ち絵は更新してます。
皆さんお馴染み、這い寄る混沌ニャルラトホテプは、今日も今日とて碌でもないことを思いついていた。
宇宙的規模の悪意?
人類文明への冒涜?
世界の因果律への干渉?
いいや、違う。
「面白そう」
それだけである。
彼──いや、それは、ある一点に注目していた。
人外。 しかもただの人外ではない。
人間から見れば明らかに狂気。 しかし本人たちは「え?普通だけど?」という顔で、人間社会に溶け込んでいる連中。
祓い屋として人を助ける者。
英雄として讃えられる者。
食人鬼として日常を営む者。
教授として専門知識と戯れる者。
少女の護り神として寄り添う者。
そして──殺人鬼。
……いや、もうこの時点でアウトである。 だが、そういう生態なのだ。
しかも厄介なことに、彼らは互いを認識している。
「知り合い」「同類」「子分」「おやつ」
分類基準がもう狂っているが、本人たちは至って真面目だ。
これは実に良い。 ニャルラトホテプ的に、最高に良い。
というわけで。
──皆さんお馴染み、白い部屋。
壁も床も天井も、影すら存在しない真っ白な空間。
逃げ場?ない。
意味?ない。
あるのは理不尽だけ。
そこへ、ぽいっと人外達を放り込んだ。
それが始まりであり、同時に──
この混沌の神ですら「やりすぎたかも」と後で思う羽目になる、真の深淵へのカウントダウンでもあった。
そして。 最初に目を覚ましたのは、一人。
藍(アイ)
沈黙。 だが、沈黙の中でぴんと立つものがある。
白い──うさ耳。
警戒するように、左右に忙しなく動く。 まるでレーダー。いや、ほぼレーダーである。
少し跳ねた水色の髪。男の子にしてはやや長めで、寝癖だろうがそうでなかろうが元から跳ねている。 よく揺れるアホ毛付き。
深い海の底を思わせる、暗く美しい青の瞳。
不機嫌そうな表情。……なのに、無駄に顔がいい。
しかももちもちしている。
首元には赤いマフラー。 頭には黒いゴーグル。
ぶかぶかの紺色の上着の内側には── 銃。爆弾。その他いろいろ。 さらに、黒と赤で構成された見たことのない封印札。
正気?どこかに置いてきた。
その下は緑がかった水色のノースリーブタートルネック。
茶色いベルトに、藍色のデニムショートパンツ。 足元は黒い靴。
身長、147cm。 要するに、チビである。
彼の名は、藍。 元・神に仕えていた月兎。 絡繰人形化を経て、怪異化。通称、オーパーツ。
藍の内部から、カチ、カチと絡繰の音が鳴る。 心音のようで、聞いた者をなぜか安心させる──いや、させてしまう。
神に仕えていた過去?ある。
そしてその結果、今は神が大嫌いである。
想像を絶する過去?ある。
なので、SAN値はとっくにない。
それでも彼が人間と共に暮らしている理由はただ一つ。
ラーメンが美味いから。
理屈?知らん。 美味いものは美味い。それでいい。
藍(アイ)
低く、機嫌の悪い声。 藍はゆっくりと上体を起こし、辺りを見回す。
白。白。白。 影、ゼロ。
藍(アイ)
理解は一瞬だった。
藍(アイ)
叫ぶ。全身で。うさぎのように。 いや、うさぎそのものの怒り方で。
小さな体で足を踏み鳴らし、耳を逆立て、全力でキレる。絡繰になっても怪異になっても消えない、月兎の本能。
善神を除く神全般が嫌いな藍にとって、 ニャルラトホテプは──
遊び道具であり、最大級に嫌いな存在。
そんな相手に、また閉じ込められた。 屈辱。屈辱。屈辱。
その怒声が白い空間に反響した、その直後。
ひらり。 上から、紙が一枚、落ちてきた。
藍(アイ)
半ギレで拾い上げる。 読まずとも嫌な予感しかしない。
案の定。
ここは、いつものみんなとシェアハウスしないと出られない世界だよ。 期間は僕の気まぐれだから、まぁ、頑張ってね。
藍(アイ)
ビリッ。
藍(アイ)
紙は、真っ二つ。
うさぎの足だん。 ドン。ドン。ドン。
白い床に八つ当たり。 無意味。だがやらずにはいられない。
……とはいえ、ここで何もしなければ、何も起こらないことも、藍はよく知っている。
藍(アイ)
吐き捨てるように呟き、 いつの間にか出現していた扉を見る。
あいつらとなんて、ロクな生活になるわけがない。
確信しながら、それでも藍は扉を開けた。
扉の先に広がっていたのは、 「あ、普通に住めそう」 という感想が真っ先に浮かぶ、そこそこ広めのリビングだった。
床は清潔。壁も白すぎない、目に優しい色合い。 ソファもテーブルも、最低限だが揃っている。
藍(アイ)
振り返る。
白い部屋は、もうない。
藍(アイ)
慣れ。完全に慣れである。 神に理不尽を押し付けられ続けた者の、悟りにも似た境地。
──そう思った、その瞬間。
バンッ!!!
別の扉が、勢いよく開いたのではない。
吹っ飛んだ。
蝶番ごと、理性ごと、常識ごと。
ドアはそのまま一直線に、藍の顔面めがけて飛来する。
藍(アイ)
回避?しない。
藍は一歩も下がらず、拳を振り抜いた。
ドゴォン!!
ドア、粉砕。
木片が四散し、壁に突き刺さる。 リビングの安全基準、即死。
加減?知らない。
その破壊行為を「風が吹いたな」程度にしか気にしない様子で、瓦礫の向こうから、堂々と現れた存在がいた。
白(ハク)
胸を張り、腕を組み、 全力で偉そうにリビングの中央に立つ。
身長150cm。見た目は完全にガキ。 だが、中身は──神話生物。
名を、白という。
藍を含む全員を「子分」と認識しているが、その辞書に悪意という概念が存在しないという、ある意味最悪の存在である。
雪のように白く、癖のある髪。白く長い睫毛。 凛と澄んだ、空色の龍の瞳。
自信に満ちたその顔は、人間どころか人外ですら「……拝んどくか」となるレベルの美貌。
頭には、白から青へとグラデーションする、丸く湾曲した龍の角。
さらに──どの聖典にも載っていない、白いひし形が輪状に連なった、青く輝く天使の輪。
耳は上向きに尖り、純金製の円形イヤリング。
首、手首、足首には、古代文字が刻まれた黄金の首輪、腕輪、足輪。聖とも魔ともつかない、 「説明する気のない力」が、そこから漏れている。
服装は、古代人が「これでいける」と判断した白い布が、胸と腰に巻かれているだけ。
腹、肩、腕、太もも、全開。 人間がやったら即風邪。
腰には、大天使と呼ばれても誰も反論しないであろう、巨大で清浄な翼。そして、感情に合わせてぶんぶん動く、白く力強い龍のしっぽ。
足元は、異様な力を放つ黄金のサンダル。
彼はかつて、太古の北を統べた氷龍と、万物に光を与えた天使の間に生まれた、唯一無二の存在。
要するに──
氷河期の元凶。
……なのだが。強烈なストレスによる健忘により、その辺は全部忘れている。
なので現在のSAN値は、人外基準で「そこそこ」。 人間基準では、もちろんゼロ。
普通なら、見た瞬間にSAN値チェック不可避。
だが、藍は見慣れている。向こうからガンガン来る。SAN値はもう減らない。
結果。
藍(アイ)
呆れつつ、ついでに将来の夢を的確に刺す。
白(ハク)
白(ハク)
ブレない。自分で直さない。 というかできない。子分にフル任せ。
しかも、悪意ゼロ。
藍(アイ)
藍(アイ)
……口は悪いが、完全に正論である。
白(ハク)
この発言にも、悪意は一切ない。 恐ろしい話である。
藍(アイ)
藍(アイ)
責任転嫁。仲間任せ。 どっちもどっち。
……だが。
白(ハク)
白が、無自覚に庇う。
藍(アイ)
藍、うさ耳ぴん。足だん。全力抗議。
白も負けじと、腰の翼をばさっと広げる。
完全に、子供の喧嘩。
……そこに。
珠(タマ)
藍の真後ろから、声。
……普通なら悲鳴。だが藍は、
藍(アイ)
で済ませる。SAN値、仕事しない。
現れたのは、珠。
藍とは少し違う白いうさ耳が二つ。さらに上向きに尖る耳が二つ。計四つ。
珊瑚珠色のショートヘア。ぱつんと切り揃えた前髪。ハート型のアホ毛。 ぱっちりした目。人懐っこい笑顔。
服装は完璧。 白いワイシャツに、赤いネクタイ、灰色のベスト。引き締まった体にぴったり。
腰には本物のレイピア。 黒いズボンに、茶色い革靴。歩くたび、コツ、と心地よい音。
背後には、黄緑色の植物のような大きなしっぽ。感情に合わせてよく揺れる。
指先は、悪魔を思わせる黒く鋭い爪。 口元には吸血鬼を思わせる牙。肌は少し白い。
……ここまでは、まだいい。
問題は──瞳。 エイリアンのように、白く発光している。
形は可愛い。だが、目を合わせた瞬間、本能が「やばい」と叫ぶ。
顔も、造られたかのように整っている。
キメラ。いや、
地球外生命体製・人工生命体。
なお、失敗作。 過去もロクでもない。SAN値?ない。
藍(アイ)
白(ハク)
珠(タマ)
と言いつつ。
冷蔵庫を開け、材料を取り出し、 プロの動きでアイス制作開始。
しっぽ、ぶんぶん。
珠(タマ)
軽くウインク。きらーん。
効果音が、確実に飛んだ。
その横で。
本当に、ひょこっと。 効果音がつくレベルで、唐突に現れた存在がいた。
くん、くん。鼻を動かすたび、頭から生えたぴょこ毛──いや、植物が、まるで意思を持つかのようにぴこぴこ揺れる。
橙(トウ)
場の空気?読まない。 読む気もない。
プロの手つきでアイスを作る珠の真横に、いつの間にか立っていたのは──
身長140cmの、男の娘だった。
肩まで伸びた、艶やかな黒髪。左右に飛び出す、反応抜群の植物。 揺れるたびに、自己主張が激しい。
女の子のように長い、黒く綺麗な睫毛。 右が黒、左が橙のオッドアイ。 光は宿らず、瞳孔は捕食者のそれ。
──なのに。
瞳の奥でくるくる回る、白いぐるぐるマークが、妙な愛嬌を生み出している。
耳は下向きに尖り、 指先には珠と同じ、黒く鋭い爪。
腰には、蝙蝠のような形の黒い翼。
周囲には、まるでペットのように動くカボチャのツタ。興味深そうに、つんつんと珠を突く。
服装は、ノースリーブの黒いワイシャツ。赤と青のボタンが可愛らしい、橙色のベスト。 薄い土色の、短いズボンのようなもの。
襟元は無防備。 肩も、腕も、太ももも、全部露出。
なのに、足元だけは、膝まであるチャック付きの茶色い厚底ブーツ。
──完全に、ハロウィン。
彼の名は、橙。
もっちりしたほっぺは、 「これ、食べられるんじゃない?」 という錯覚を起こさせるほど。
もちもち。 実に、もちもち。
だが、それは罠である。
彼は、食人植物。そして本質は、祟り神。
命を喰らう美食家。禁忌と呪いと魔術をフルコースで扱う、とんでもない存在。
いつも腹ぺこな彼にとって、藍のような絡繰でなければ──みんな美味しそうに見える。
実際、美味しい匂いがする。 それでも、まだ食べない。
珠(タマ)
珠は、作業を止めずに一言。気にしない。
わかっている。けど、面白いから一緒にいる。
橙(トウ)
橙(トウ)
柔らかい声。 だが意味するものは──人肉。
珠(タマ)
珠、即答。
SAN値?消滅済み。
人肉が冷蔵庫にある前提で話す時点で、ツッコむ側が負けである。人外だもの。
橙(トウ)
橙、素直。 冷蔵庫を開ける。
あった。
橙(トウ)
満面の笑みで手に取り、魔術で温め、もぐもぐ。美味しそうに頬張る。
藍と白?見ていない。
白(ハク)
藍(アイ)
通常運転。
──カチャ。
今度は、ちゃんと扉が開いた。
……だからといって、まともとは限らない。
ノア
軽い。実に軽い。
ドアへの力加減は完璧。 壊さない。壊さないが、安心もしない。
現れたのは──ノア。
肩までの茶髪。 致命的に空気を読まない、大きなアホ毛。 前髪は左寄りで、ぱつん。
背中で揺れる、長い手編みの赤いマフラー。
白い長袖。 年季の入った青いオーバーオール。 赤いスニーカー。
何十年も前のもののはずなのに、それら全てが新品同様にピカピカ。
顔立ちは、造られたように無害。 体つきも、男とも女とも言えない設計。
……だが、瞳。
血のように赤い。悪魔を思わせる鋭い瞳孔。 光はなく、澄みもしない。
そこにあるのは──悪意のなさと、純粋さ。
何十年も前に造られたゴーレム。 またの名をオーパーツ。
そして、邪神の従者。 元・敵。今は仲間。
藍(アイ)
藍、半ギレ。 ノアの事は嫌いじゃない。 でも、ドア片付けるのは嫌。めんどい。
ノア
ノア、きょとん。 改めて、リビングを見回す。
吹っ飛び。粉砕され。 壁に突き刺さったドアの残骸。
ノア
理解。 笑顔のまま、全部察した顔。
ノア
張り切って作業開始。 慣れた手つき。器用。黙々。
破片を回収し、壁を直し、床を整える。
藍(アイ)
よしじゃない。
白(ハク)
藍(アイ)
白(ハク)
しっぽで床を──べちん、べちん。
床、ひび割れる。
さらに、鋭利に盛り上がる。
──まるで、 「これ以上やるな」と言わんばかりに。
だが、そんな床の意思などお構いなしに。
ガッ
という、嫌な音が鳴った。
見ると、そこにはまた別のドア。
というか、向こうから開けようとしている存在が、完全に床に阻まれている。
しっぽでべちべちされたせいで、床がせり上がり、ドアが途中で止まっている。
普通の人間なら、 「……ごめん」の一言くらい出る。
だが。
白(ハク)
藍(アイ)
……この二人、反省という概念がない。
扉の向こうの存在は、一瞬遠い目をした。
そして。
ドゴォン!!!!
──ドア、蹴破られた。 またもや粉砕。破片四散。
白に当たるだろ? いいや。何故か全部当たらない。
奇跡的回避。いや、とんでもない幸運。
破片の雨の中を、ヒールの音が響く。
カツ、コツ。
砕けたドア。割れた床。 それらを踏みしめ、悠然と現れた存在。
──恐ろしい程の美貌。
長い灰色の睫毛。光の宿らない、すみれ色の瞳。 絶望しか映していないはずなのに、異様なまでに美しい。目が合った瞬間、思考が止まる。
ふわりとうねる灰色の髪。 整いすぎた、女のような体型。
だがオスだ。
黒いノースリーブタートルネック。 わざと着崩した、ファー付きの紫色の上着。
黒いデニムショートパンツ。 灰色のタイツに包まれた美脚。 品のある紫のヒール。
……ここまででも、人外すら虜にするレベル。 だが、それだけでは終わらない。
頭には、人間が本能的に忌み嫌う、 くすんだ紫の蛾の触角。
数億分の一まで薄められた匂いすら、感知する。
背には、紫・黒・赤の警告色で構成された、 禍々しく、毒々しい、巨大な蛾の翅。
四つの眼状紋が、こちらを見ている錯覚。 翅が動くたび、呪いの毒の鱗粉がふわりと舞う。
本来なら、見た瞬間にSAN値チェック地獄。
なのに。
中心にある人型の美しさが、 それら全てを芸術作品にしている。
──名は、モス。 ノアと同じく邪神の従者。元敵。今は仲間。
だが、嫌なものは嫌。それは譲れない。 鋭い視線で、藍と白を睨む。
……身長146cm。藍より1cm小さい。
だが、威圧感と存在感は、白と張り合える。
……が。
藍(アイ)
藍、理不尽。
モス
モス、呆れ半ギレ。
それもそのはず。 彼には、守るべき大切な少女がいる。
突然引き離されたら、そりゃキレる。 ましてや、執着心の塊みたいな人外だ。
そして、藍と白が壊したドアを片付け終えたノアが、モスの壊したドアを見る。
ノア
──呆れない。 自然に近づき、自然に手を差し伸べる。
エスコート。
モス
モス、渋々降りる。 そのまま、ノアが張り切ってドアを修理。
……普通なら、感謝の言葉が出てもいい。
だが。
珠(タマ)
珠のその一言で、全てが吹き飛んだ。
白(ハク)
ぱぁぁぁぁっと輝き、一直線。
舐める?しない。ガリガリ噛み砕く。
幸せそうに、しっぽぶんぶん。
その横で、喜んでもらえたのが嬉しい珠も、 しっぽぶんぶん。
さらに横で、橙が人肉もぐもぐ。 頭の植物ぴこぴこ。
……人外の前では、人の常識は通用しない。 ツッコむ側が負け。
ノアも、全く気にしない。
ノア
自然な提案。笑顔。いい子。
……と思いきや。出てきたのは、外国製スプラッターホラー映画。
珠(タマ)
珠(タマ)
珠、ノリノリで参加。
藍(アイ)
藍、無言で参加。
橙(トウ)
橙、スプラッターを食材目線で参加。
モス
モス、気怠げだが参加。
白は、ホラーと分かった瞬間、ピタッ。
ぷるぷる。
藍(アイ)
藍、少し考えて──
藍(アイ)
急にノリが良くなる。
理由?白の反応が面白いから。完全にガキ。
ノア
ノア、そんな思惑など露知らず、再生。
──鑑賞中。
白(ハク)
白、号泣。
他は、普通に視聴。 藍は「ざまぁ」と煽りながら楽しんでいる。
……そして、ノア。
無言。画面から目を逸らさない。
瞳に、熱。 明らかに楽しんでいる。
もちろん素。もちろんSAN値ゼロ。
それを見て、周囲が一斉に「oh」と、 英語で声を漏らした。
すると、限界になった白が、
白(ハク)
画面の中にしか存在しない“何か”に向かって、必死の威嚇。だが無力。
ドンッと藍に体当たり。そのまましがみつく。
藍(アイ)
鈍い音と共に、藍の中の絡繰が嫌な悲鳴を上げる。痛くはない。だが、確実に壊れる予感がする。
自業自得である。
藍(アイ)
当然、引き剥がそうとする。 腕に力が入り、内部機構がギギギ……と軋む。
白はというと、翼としっぽをじたばたさせ、
白(ハク)
と、必死にしがみつく。
恐怖が臨界点を超えるたび、周囲に冷気がばら撒かれ、空気が白く曇る。
……その光景を見ていた珠。
珠(タマ)
思わず口を押さえ、悶える。 三人称で見れば完全に恋愛事故。脳内で勝手に物語が完成し、オタクが爆発している。
モス
モスの冷たい一言が、現実に引き戻す。 なお、冷やす原因はすでに目の前に存在している。
橙とノアは、相変わらず画面から目を離さない。 橙に至っては本気でどうでもいい。
──その時。
白の冷気が、氷へ。 氷は鋭利な塊へと変質し、一直線にテレビへ。
ズドンッ!!
突き刺さり、貫通し、テレビ、大破。
沈黙。誰も言葉を発しない。 白はそっと視線を逸らす。
──怒られる。絶対怒られる。
そう思った直後、
ノア
ノアが、穏やかな声で言った。 そしてテレビの残骸に触れる。
壊れたはずの画面が、割れたはずの外装が、みるみるうちに元に戻っていく。
最後に、にこっと笑って親指を立てる。
……空気を壊さず、誰も責めず、ドアも直し、テレビも直し、怒りも呆れもしない。
SAN値が存在しないことを除けば、この場で一番の良心だった。
白(ハク)
必死の自己防衛。 偉そうだが、内心は必死である。
ノア
ノア、いい子。計算も、悪意も、見返りもない。 ただ自然体で狂っている。
そうしてなんとか、ホラー映画は最後まで見終わった。
白は撃沈していた。
藍(アイ)
そんな空気の中で、珠が何でもない事のように言った。
珠(タマ)
まぁ、ニャルラトホテプのことだ。 用意してないわけがない──と、普通は思う。
珠(タマ)
なるほど。シェアハウスならではのやつだ。 ……と、普通の人間なら思う。
珠(タマ)
珠(タマ)
珠、突然の発狂。 モスは素で困惑した。
……だが。
藍(アイ)
白(ハク)
橙(トウ)
ノア
即・全会一致。
なお、藍が手にしているのは枕型の爆弾である。 銃もある。完全に戦場。
それを見た白、雪と氷の防壁を展開し、 枕代わりに光の玉を生成。威力調整?知らない。
橙は全方位に橙色の魔法陣を展開。 無駄に隙がない。本当に無駄に。
ノアは指をゴキリと鳴らし、楽しそうに構える。 本人は「枕投げってこういうもの」と思っている。
正気は、ない。倫理も、ない。 あるのは狂気だけ。
モス
モスは、ただ遠い目をした。
……こうして。 枕投げという名の発狂が、正式に開幕した。
銃弾が壁を穿ち、
爆音が天井を揺らし、
閃光が視界を焼き、
氷塊が床を砕き、
魔力弾が空間を歪ませ、
斬撃が空気を切り裂き、
蜘蛛糸が縦横無尽に張り巡らされ、
灼熱の炎が走り、
拳と蹴りが純粋な暴力として飛び交う。
──誰も、枕を投げていない。 もはや定義はどうでもいい。
そんな中。 「……もう付き合ってられない」と言わんばかりに、モスは静かに踵を返した。
戦場と化したリビングを背に、ヒールを鳴らし、退出。
この場で唯一、SAN値が1くらいは残っていそうな存在である。
そして、枕投げ(戦闘)は、夕方になるまで続いた。
モスが戻ってきた時。 リビングはおろか、家は半壊。 周囲の地形すら怪しい状態へと変貌していた。
モス
もともと光の宿っていなかった瞳が、 さらに死んだ。
ということで、ノアがまた残骸に触れる。 床、壁、天井、家具、庭。ありとあらゆるものが、逆再生のように修復されていく。
ノア
モス
モス、感情のない棒読み。
──何事もなかったかのように、夕飯の時間。
……が。
白(ハク)
白が胸を張った、その瞬間。
説得も警告もなく、藍の無言の回し蹴り。
白(ハク)
白、間一髪で回避。 腰の翼をばさっと広げ、しっぽをぶんぶん。
<なんでなのだ!!!
<俺は失敗なんかしないのだ!!!
<本当なのだ!!!
<無礼であるぞ!!!
廊下に響く抗議。説得力?ない。
以前、七色に輝く劇物を食わされた恨みは深い。
……ということで。 メシウマ要員(白以外)で、じゃんけんにより調理担当を決めることになった。
勝った方が作る。
藍(アイ)
藍(アイ)
藍、拳を鳴らす。 ケツイがみなぎっている。
橙(トウ)
橙(トウ)
橙、ほわほわした笑顔。 だが、譲れない意志が確かにある。
珠(タマ)
珠(タマ)
珠、プロの空気。戦う覚悟がある。
……その修羅場を見た瞬間。
ノア
モス
モスとノア、即座に戦線離脱。賢い。
藍(アイ)
橙(トウ)
珠(タマ)
ぽん。
藍、圧勝。
両手をグーにして掲げ、完全勝利のポーズ。 よかったね。
……廊下では。
白(ハク)
白が不貞腐れていた。
なお、そのしっぽでべちべち叩かれた壁に見事な穴が空いたのは、言うまでもない。
ケツイがみなぎった藍は、有言実行というやつを叩きつけるように、即座にキッチンへ立った。
……藍は、絡繰兼怪異。だが、元は月兎。
当然、動きがめちゃくちゃ俊敏。
コンロに火を入れ、鍋を振り、麺を放り込み、包丁が走る。
いや、走るどころではない。 速すぎて手が見えない。
大胆。雑に見える。だが一切無駄がない。
切り方は豪快なのに、厚みは均一。 味付けは感覚的なのに、寸分狂わない。
暇ができた瞬間、 「ついでだ」と言わんばかりに別の鍋で中華料理を作り始める。
珠が、その横で目を輝かせる。
珠(タマ)
珠(タマ)
「おそろしく速い手刀」のパロディ。
藍(アイ)
藍はそう言うが、別に追い出しもしない。 ただ、手は止まらない。
鍋の中で湯が踊り、油が弾き、香辛料の香りが空気を支配する。
そして。
テーブルの上には、湯気を立てるラーメンがずらり。餃子、炒飯、回鍋肉、青菜炒め。 「ついで」のはずの中華料理が多い。
モス
藍(アイ)
白はというと。
白(ハク)
と、胸を張りながら、自分の塩ラーメンをキンッキンに凍らせていた。
表面がうっすら霜を吹き、 湯気どころか冷気が出ている。
藍(アイ)
藍、半ギレ。
橙は橙で、餃子を完全ロックオン。
橙(トウ)
藍(アイ)
藍、即答。 食に関しては異様に真面目だ。
その背中で、うさぎのしっぽが満足そうにふりふりと揺れている。
そして、一同。
「「「いただきます」」」
そこは、ちゃんとしていた。
──食後。 それぞれ、自由行動。
白(ハク)
白はそう言った瞬間、腰の翼をばさっと広げ、窓からそのままぶっ飛んで行った。
玄関?知らない。
橙は庭へ向かい、 ノアと並んで家庭菜園を作り始める。
必要だから?違う。気まぐれ。
ノアは楽しそうに土を耕し、橙はほわほわしながら種を植えている。どこか平和。
ちなみに珠は、
珠(タマ)
と言って外出。恐らく、ニャルラトホテプですら想定していない専門物資を集めに行った。
いらない?いる。絶対いる。後で「あー!あれ買っとけばよかった!」ってなるやつだ。
……そして、残ったのは。
藍とモス。
藍は一応、家事をしていた。 食器を洗い、台を拭き、床を片付ける。
珍しく、静か。
モス
モスが、やることもないしと思って声をかける。
藍(アイ)
藍(アイ)
藍も、素直に仕事を振る。平和。
……だったのだが。
藍(アイ)
藍が、唐突に口を開く。
藍(アイ)
突然の発狂。
モス
モス、完全に硬直。 気付いた時には、藍の手には既に殺虫剤。
……じり、じり。 距離を詰める藍。目が好奇心で輝いている。
藍(アイ)
モス
モスが一瞬、諦めたように目を伏せ──
次の瞬間、距離を詰めた。
速い。藍と同等か、それ以上。 殺虫剤をひったくり、反対の手で。
デコピン。
藍(アイ)
乾いた音。頭を押さえてしゃがむ。
うさ耳、ぺたん。
モス
モス、呆れ半分。
が、頭を押さえたまま、ふと天井を見上げた。
藍(アイ)
その一言に、モスの頭の蛾の触角が、ぴくり、と反応する。まるで「確かにその問題は避けて通れない」と言っているかのように。
……そもそも。
藍は絡繰であり、怪異であり、生き物のように汗をかいたり皮脂が溜まったりする存在ではない。
汚れたら拭けばいい。壊れたら直せばいい。普段は面倒だから入らないというか、家がない。
入るとしたら気が向いた時に温泉。シェアハウスを始めたことで、風呂に入るという概念が急に現実味を帯びてきた、そんな顔をしている。
白は白で問題児だ。氷龍と天使の混血児。 風呂が苦手どころか、嫌い。下手をすれば溶ける。精神的にも物理的にも。
帰ってきて「風呂だぞ」と言った瞬間、泣き喚き、暴れ、最終的に風呂場が氷河期になる未来が見える。
橙は食人植物。そもそも不潔になりにくいが、風呂自体は嫌いじゃない。
家庭菜園が終わったタイミングで声をかければ、 「はぁ〜い」と素直に入るだろう。
珠は地球外生命体が造ったキメラ。 代謝は普通。本人曰く、毎日入っている。
たぶん買い物から帰ってきたら、 何も言わずに勝手に沸かして入る。
ノアはゴーレム。オーパーツ。生き物ではない。 代謝もない。汗もかかない。
それでも、生きてるみたいだからという理由で入る。家庭菜園が終わったら、声をかければ普通に入る。
……そして、モス。
入りたくない。
水が弱点。触角と翅を畳んでも、湯に浸かるという行為自体に慣れていない。
浸かった瞬間、 石像みたいに固まる未来しか見えない。
藍(アイ)
藍は少し考えて、そして──
藍(アイ)
悪意しかない。
モス
即答。表情には隠しきれない嫌悪。
藍と入ったらどうなるか。 それはもう、考えるまでもない。
小学生みたいなノリで水をかける。 洒落にならない威力の水鉄砲を乱射する。 「うぇーい」とか言いながら追いかけ回す。
確信できる。
藍(アイ)
藍(アイ)
藍はうさぎのしっぽをふりふりさせながら、 距離を詰める。
モス
モス
モスの声は低く、明らかに不機嫌。
紫、黒、赤の警告色で構成された、禍々しく毒々しい巨大な蛾の翅が、ゆっくりと広がる。
威嚇。
……普通の人間が見たら、冗談を言うガキと、冗談の通じない子供の口論に見えるだろう。
だが、違う。
藍はマジで殺る。
冗談の皮を被った発狂。 ニャルラトホテプ級のロクでもなさ。
モスが本気で「もう一発デコピンを入れるべきか」を悩み始めた、その時。
ミシッ
内部機構が悲鳴を上げるような音。
藍の肩に、片手が置かれていた。
振り返るまでもない。ノアだ。
今の会話を全部聞いて、家庭菜園作りから戻ってきて、無言で藍の肩を掴んでいた。
もちろん、笑ってない笑顔。
上着の上からでも分かる。藍の体の表面に、うっすらとヒビが入っている。
──加減している。加減して、これ。
藍(アイ)
ノアから放たれる、無言の圧。
藍(アイ)
舌打ちして手を引く。
流石に分かっている。 ノアを怒らせたら洒落にならない。
モスは、目に見えてほっと息をついた。
玄関の扉が、がちゃりと音を立てて開く。
鍵?閉めてない。 そもそも、ここにいるのは変質者が入ってきた瞬間に消し飛ばせる人外ばかりである。
珠(タマ)
軽い声と共に現れたのは珠だった。 ……が、その背後。
廊下に大荷物。 リビングにも大荷物。 更に、二階へ向かう階段の途中にも大荷物。
藍(アイ)
藍、言葉を失う。
珠はそれらを、一つ運び、また戻り、更に運び、迷いも無駄も一切ない動きで配置していく。
ノア
と、ごく自然に声をかけたノアが加わる。
明らかにサイズも重量もおかしい荷物なのに、珠はひょい。ノアもひょい。
珠は無駄のない最適化された動き。 ノアは慣れ切った手つき。 二人とも、重いという概念を忘れている。
あっという間に運び終わった、その瞬間。
ガシャァァン!!
窓が、ぶち破られた。
白(ハク)
満面の笑みで帰還する白。 破片?当然、飛ぶ。
藍(アイ)
全部、藍に降りかかる。
だが藍は、ひらりと上着を翻す。
防弾チョッキならぬ、防弾上着。
ガラス片は、 カン、カン、と音を立てて弾かれる。
……なぜ上着にそんな性能があるのか。 考えたら負けだ。
白(ハク)
白は満足そうに翼を畳み、しっぽをぶんぶん。
一方その頃、割れた窓ガラスなど一切気にせず、家庭菜園から橙が戻ってくる。
くんくん。鼻を鳴らし、匂いを辿り──
橙(トウ)
きょとん。
橙(トウ)
床に置かれた袋を見つける。
すると珠が、さも当然のように言った。
珠(タマ)
珠(タマ)
福は内?知らない。 外だけ。
……藍とモスは、数秒固まった後。 「……そうだった」と、同時に呟く。
イベントなんて覚えてない。 昔からいる人外だもの。
珠(タマ)
珠(タマ)
珠、即拒否。
白(ハク)
白も即拒否。理由は明白。 龍の角がある=当てられる=痛い。
橙(トウ)
橙、無関心。
ノア
ノア
ノア、名乗り出る。ナイスガイ。
……が。
藍とモスが、露骨に顔をしかめる。
だってノアだもん。流石の藍でも、罪悪感という概念が微かに残っている。
……その時、藍の脳内で、何かが閃いた。
藍(アイ)
沈黙。
藍(アイ)
藍(アイ)
その瞬間。 珠の目が、きらりと光る。 モスの翅が、ゆっくりと開く。
やる気が可視化された。
ニャルラトホテプに理不尽を押し付けられ続けた三人。SAN値なんて、とっくに燃え尽きている。
ノア
ノア、察した。
こうして三人は家を出る。
そして一瞬でニャルラトホテプが招来される。
理不尽の権化。混沌の化身。
困惑するニャル。先に呼び出したのは自分なのに、逆に呼び出されている。
普通なら、SAN値チェック1D10/1D100。 だが。全員SAN値はない。
藍(アイ)
藍、拳を鳴らす。
珠(タマ)
珠、豆袋を構える。
モス
モス、低く呟く。 その背後で、翅が禍々しく震える。
そして、外から響く。
「神はぁぁぁあ外ぉぉおおおぉおお!!!!!」
三人の声が、完全にシンクロ。
銃声、爆音、斬撃、呪い、理不尽。
それは、次の日の朝方まで続いた。
一方、残された白と橙とノア。
ノア
橙(トウ)
白(ハク)
三人で適当に楽しみ、白以外は風呂に浸かり、そして勝手に就寝。
こうして、シェアハウス一日目は、 混沌のような終わりを迎えたのだった。