お父さんの部屋は、わたしの部屋と同じたたみの和室だ
部屋に入ると、中央にお父さん愛用のちゃぶ台がおいてある。
その奥に圭一郎おじさんがすわっていた。ひょろりとやせて、メガネをかけたやさしそうな顔は、前に見たときとぜんぜん変わっていない。
そのおじさんのちゃぶ台をはさんだむかいに、おない年のいとこのケイがすわっていた。
ケイは、小さいころから鉄仮面でもつけてるの?というぐらい、いつも無表情の男の子だ。
しかも、髪の毛をのばしっぱなしにしていて、色白な顔の半分くらいが隠れていた。
2人は午前中から、うちに来ていたけど、顔をあわせたのは昼食のときだけだ。
いとこといっても、ケイとは、たまにお父さんといっしょに会うぐらいで、話したこともほとんどないし、見てのとおりの愛想のなさで、わたしからはなしかける気なんて、とてもおこらなかった。
お父さんがおじさんのとなりにすわったので、わたしはケイのとなりにすわった。
横目でちらりとケイを見たけれど、こっちに関心なんて、ひとかけらもないみたいだ。
ゴホン、とお父さんがせきばらいをしたので、わたしは視線を前にもどす。
そうそう。
いったいなんの話なんだろう。
おじさんたちまで集まっているってことは、よっぽど重大なことなのだろうか。
お父さん
へっ?いきなり、なに?
お父さんの質問に、おもわずわたしは首をかしげた。
この3人を集めて、話題が、怪盗レッドのこと?
飛鳥(アスカ)
混乱しながら、答える。
怪盗レッドというのは、その名前のとおり、泥棒だ。
でも、ただの泥棒じゃない。
日本中、どんな警備のきびしい場所にも、あっさりと忍びこみ、絶対に捕まらない。
そして、ここがいちばん重要なんだけど、怪盗レッドが盗みをするのは、悪いことをしてる人からなんだって!
ル〇ンやキ〇ドと同じ、大胆不敵な怪盗だ。
だけど、レッドは小説やマンガじゃなくて、リアルな話。
現実にいる怪盗だ。もちろん、会ったことはないけどね。
その行動が、正義の味方っぽいってことで、地方新聞の一面とか、インターネットですごい話題になっている......みたい。
みたい、なんて、あいまいな言いかたなのは、わたしはインターネットをやらないし、新聞はテレビ欄専門だからだ。だから、いまの友だちの実咲から聞いた話だったりする。
お父さん
飛鳥(アスカ)
テレビ欄をね。
お父さん
圭(ケイ)
眠そうな声で、ケイが答える。
夜ふかしでもしたのかな。
さっきも、あくびをかみ殺してたし。
お父さんはそこで、話をいったんくぎって、おじさんと視線をかわした。
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