ユンギ
ユンギ
俺は慌ててジンを起こす。
ジン
幸せそうに寝返りをうつ君。
その愛しい姿に、 俺は思わず口づけをする。
唇が微かに触れたその時。
ジン
ユンギ
ジンの目が覚めたようだ。
微笑む俺。
唇が触れた頬を抑えるジン。
愛しい君の照れ顔は、 やがて歪んでゆく。
そんな君に、 俺は「おかえり」と言った。
ジン
言った途端に泣き出す君。
ジン
ジン
そう言ってまた泣き出す。
先程のことを思い出したようだ。
そう、死神との契約は、 1ヶ月が終わったら俺の命を渡すこと、
が交換条件だから。
もちろん、 ジンの命は生き返ったとみなされ、
この世界に残る。
残酷な条件だ。
涙で睫毛を震わす君に、 俺は優しく言う。
ユンギ
ユンギ
息を吸い直して、 一息に言う。
ユンギ
ジン
大きく目を見開いた君。
その瞳からはまた、 涙の粒がこぼれだしたー。
ユンギ
ユンギ
ジンの自殺前に送られてきた言葉だ。
愛してたよ、だって?
馬鹿言うな。
過去形なんて使わせないんだから。
それから僕たちは、 大きなワンルームを借りた。
一ヶ月契約、で。
ジン
ジン
朝起きたら、 大きなキッチンで朝食を作ってる ジンがいて。
それから俺はおはようって言って、 ジンにバックハグをする。
ジン
ジン
困ったように言う君が可愛くて、 もっと強く抱きしめてしまう。
俺今、すごい幸せ。
ジンも幸せだといいな。
一瞬、本当に一瞬。
もしジンが死ぬ前に告白していたら、 今頃どうなっていただろうか、
極端な死を選ばなかっただろうかって
そういう考えが頭をかすめて、 思わず涙が出そうになるけど。
俺は泣かないって決めていた。
ただただ笑って、 愛し合って。
どうせなら、 悲壮感にまみれた1ヶ月じゃなくて
一生分の幸せを過ごしたいから。
遊園地に行った。
ユンギ
ジン
ジン
ユンギ
水族館にも行った。
ユンギ
ユンギ
ジン
久しぶりにはしゃいだ。
翌日、熱を出した。
ジン
ユンギ
ジン
ジン
看病してもらった。
一日で治った。
残された時間。 その後も、
服を買って、
映画を見ながら泣いて、
ちょっとおしゃれなバーで 飲んだりもした。
抱えきれない思い出が 嬉しかった。
それでも、 日は無情にも過ぎてゆく。
残された時間が、 ちょうど一週間になった。
ジン
涙目でいう君。
ユンギ
ユンギ
最後まで幸せでいたい。
悲しみに浸るまもなく、 楽しむことに忙しい最期でありたい。
そんな俺達が最後に企画したのはー。
ジン
旅行だった。
ジン
ユンギ
叫んで、
ジン
なんていうもんだから。
夕方まで海にいた。
これが最後の海。
悲しくなんかない、 最後に見れた海がジンとで良かった。
そう思うことにする。
残る時間はあと少し。
家族にも電話した。 遺書も書いた。
あとは残り限られた時間を、 目一杯過ごすだけだ。
ジン
ユンギ
ジンが喋りだした。
ジン
ユンギ
その話題がここで来るとは 思わなかったけれど、
きっとジンは俺が死ぬ前に 話したいんだと思ったから、
あえて止めなかった。
ジン
ジン
ユンギ
優しすぎるジンのことだ。
きっとギリギリまで涙は見せずに
いきなり、 ポキンと折れてしまったのだろう。
ジン
ジン
ジン
苦しそうに言うジン。
なんて答えればいいのかわからなかった。
その後は、 予約していた部屋に行った。
キャンドルの炎で、 とても幻想的な空間だった。
今だ。
俺はポケットから小さな箱を取り出す。
そう、 俺からジンへの、最後のプレゼント。
ユンギ
ユンギ
心臓はバクバクうるさいし、 顔は火照るように熱い。
不器用な俺は かっこいい言葉なんて かけられなかったけど。
それでもジンは、
ジン
涙を目にためながら でも大きな笑みを浮かべて、 そう言った。
それから俺たちは、 手をつないで抱きしめあった。
残り時間はごくわずか。
俺はジンの匂いを覚えておけるように 思い切りジンに顔をうずめ、
ジンは俺の髪をサラサラと撫でる。
11時58分。
鼓動が早くなる。
息がうまく吸えない。
大きく口を開けているのに、 空気が入ってこない。
11時59分
頭が割れるように痛い。
もう目前まで迫る「死」。 俺は夢中で人の腕を握りしめる。
そして、部屋中に鐘が響き渡った。
プツッという音が、した。
そこには、 一人の青年が大声を上げて 泣く姿があった。
その青年の腕の中には、 微笑みを浮かべる肌の白い青年がいる。
ジン
ジン
肌の白い青年は、 眠ったままである。
ジン
そして泣き叫ぶ青年は、 悲痛な声でこう言った。
自殺なんか、 しなきゃよかったー。
眩しい光。
ああ、 俺はとうとう死んでしまったのか。
ここが天国なのだろうか。
そう思って目を開けると、 隣にはジンがいる。
隣にはジンがいる。
隣にはー。
ユンギ
慌てて飛び起きる、俺。
昨日のホテル。
横には泣きつかれた顔をした ジンが眠っている。
ベットを飛び降りると、 解き放たれていた窓から 紙ひらが入ってくる。
ユンギ
拾い上げる俺。 目を通すと、そこには。
幸せになれ。死神
たどたどしい文字で、 そう綴ってあった。
エピローグ
死神の使者
死神の使者
死神の使者
そこには、 焦った様子の使者がいる。
そう、死神の仕事は人数整理。
月に提出するよう定められている 心臓の数を きっちり合わせるのが仕事である。
死神
死神
死神の使者
今更何を言っているんですか? とでも言いたげな使者。
すると次の瞬間ー。
死神
そう言って、 死神は自身の腹部に剣を差し込んだ。
死神
そう、言い残して。
終
コメント
8件
主さん凄く感動させられました TERRORで久しぶりに涙も 流しちゃいましたww 他の話も期待してます! あっでもゆっくり自分の ペースでやってください! 応援してます。
う、死神さん、結婚しましょう。うん、そうしよ。そして、今回もめっちゃ語彙力がえぐすぎましたwお疲れ様でした!もし、良ければ続編作ってほしいです!あ、無理しないでくださいね?!!