シオ
ここの道で合ってるか…?
(飛び跳ねてくるハネムシを筆で地面に叩きつけながら進む)
シオ
むっ
(頭上から落ちてきた巨大なオオハネムシの攻撃をかわす)
シオ
ったく相変わらずここは敵が多いな…
シオ
そこまでして孤独に浸りたいものか…
シオ
メイトーが嫌ならおれと住めばいいのに
シオ
…なんて言えるわけないが
シオ
あいつにはあいつなりの道があるんだろう
シオ
誰にも譲らないし誰にも理解されなくてもいい己の道が…
(背後からオオハネムシが2匹同時にシオめがけて襲いかかる)
シオ
またかっ
(素早く振り返り絵の具を撒き散らす、不意をついて絵筆で足払いを食らわせ叩き潰す)
シオ
キリが無いな…
シオ
さて、オロの家はっと…
シオ
まさか…この小さい穴を通るのか…
シオ
…
シオ
…よし、行くぞシオ!
(狭い穴をどうにかくぐり抜けると釘があちらこちらに刺さった家が現れた)
シオ
良かったギリギリだ…もう少し太ってたら入らなかったかもな…
シオ
しかし…なんて言って話を切り出せば…
シオ
…
シオ
…これならいけるかもしれん…
シオ
というかこれでいけなかったら無理だ
シオ
…すまない、少し名を借りさせてくれ小さな釘師よ
(意を決し家の中に足を踏み入れ、瞑想しているオロのもとへ近づく)
オロ
…
シオ
…
オロ
…この気配、シオか?
シオ
ああ、そうだ
シオ
いきなり訪ねてきてすまない
オロ
…
オロ
何の用だ?
シオ
ちょっとこの辺に用事があったから寄ってみたんだ
オロ
…そうか
シオ
少し話さないか?
オロ
…
オロ
まあいいだろう
オロ
長居は不要だが少しぐらい居てもいい。気が済んだら帰れ
シオ
…
(塩対応が増したように思えるオロにため息が出そうになるのを堪える)
シオ
…おれら兄弟がそれぞれ独り立ちしてから
シオ
おまえは何をしていたんだ?
オロ
…
オロ
…おれはあのときからずっと修行を続けている
オロ
…おまえは…
オロ
おまえは…
オロ
…一緒に修行をしていたときに新しいことをしたいと言っていたな
オロ
その身なりからして、どうやらその目標は達成出来たようだが
シオ
…ああ
シオ
今は芸術に精を出している
シオ
芸術とは釘の道と似て奥深いものだよ
シオ
それと釘鍛冶のおっさんにも会ってな
シオ
おれとそのおっさんは同じ創作をする者としてなにか通ずるものがあったみたいで
シオ
今度おまえにも紹介したいな
シオ
暇があれば気軽におれの家に来てくれ!
いつでも歓迎する
オロ
…そうだな
オロ
だがおれはするべきことがある
オロ
暫くは行けそうにない
シオ
そうか…それは残念だ
オロ
…
シオ
…
シオ
なあ
オロ
ん?
シオ
おまえに弟子ができたと聞いたのだが
オロ
…誰からそんなことを聞いた
シオ
その弟子からだ
シオ
そいつはおれの家にも来てな、釘の奥義を学んでいったんだ
シオ
芸術にはあまり興味が無いみたいだがな
オロ
…そうか
オロ
あいつはなにか俺に関して何か話していたか?
シオ
そうだな〜
シオ
塩っ気が強いと話していたぞ
オロ
塩…
シオ
ああ、それと優しいんだと
オロ
…
シオ
そいつはおまえに花を贈ったらしいんだが…
(横目でオロの後ろにある花瓶に丁寧に生けてある花を見る)
シオ
あの花の名前は『繊細な花』といってな、少しでも傷つけるとすぐ傷んでしまうらしい
シオ
おまえが何を言ったのかは知らないが、捨てられないか酷く心配していたな
シオ
だから行くたびにしっかり花瓶に生けてあるのが見れて嬉しいらしいぞ
オロ
…フン
シオ
あとはだな、お前から教えてもらった奥義が一番使いやすいとも言っていたな
シオ
よく使うらしい
オロ
…そうか
シオ
…
シオ
あいつの話で思い出したんだが…
シオ
おまえの弟子がこの前おれの家に訪ねてきてな、
シオ
なにやら息抜きに絵が描きたかったみたいで
シオ
なんの絵を描くのか見ていたんだが、あいつはこんなものを描いてな
(荷物からメイトーに渡したものとそっくりな地図を出してオロに手渡す)
シオ
ほらこれ
オロ
…
シオ
あいつ何を思い出したのか知らないが、これともう1枚描いた後とっとと出て行ってしまって
シオ
そのもう1枚もセットで持っているぞ
(だいぶ前に兄弟全員を描いてもらったときの絵を取り出し、その中でもオロの絵を渡す)
シオ
ほらおまえを描いた絵
オロ
…下手くそだな
シオ
《あ、嬉しそう たまたま持ってて良かった…》
シオ
まあまあ、芸術は虫それぞれの表現があるからな
シオ
あいつはだいぶおまえのこと慕っていたぞ
シオ
この絵を描いてるときも楽しそうだったな
オロ
…
シオ
ああ、それとその宝地図のことだけど
シオ
見たらわかると思うがバツ印のとこまで行ってもらいたいらしい
オロ
…おれは一緒に行かないぞ?
シオ
…残念ながらおれも行かない
シオ
創作活動が忙しくてな、
オロ
…
オロ
…その宝の地図はおまえの家で書いて置いていったものだろ
オロ
だったらそいつはおまえに行って欲しくて書いたんじゃないのか?
シオ
あー…
シオ
だけどこの地図はオロの絵付きだったんだ
シオ
おれの絵じゃなくてな
シオ
ということはおまえに行って欲しいんじゃないかと思って…
シオ
ほら
シオ
あいつって無口で伝わりにくいとこあるだろ?
オロ
…
オロ
…おまえ本当にたまたま寄り道したのか?
オロ
随分用意が良いみたいだが。
(冷や汗を握りながら何とか言い訳を探すシオの顔を見つめる)
シオ
…ッ
オロ
…
オロ
まあ良い
オロ
行けばいいんだろ?
シオ
…すまない、変な言い訳して…
オロ
…あいつは絵が下手だが、おまえは嘘が下手くそだな
シオ
む、
オロ
背丈や技術は変わったが、根本的な性格ら昔から変わらんな
オロ
…いいだろう
オロ
ここから久しぶりに出よう
シオ
ほんとか!
オロ
ああ、
オロ
おまえは昔から自分じゃない他の虫のために頑張るよな
オロ
そういうところはメイトーそっくりだ
オロ
…
シオ
《ああ、気にしてるんだな昔のこと…》
シオ
行ってくれる気になってくれてありがとな
シオ
あいつも喜ぶよ
オロ
…まあおれはあいつが悲しもうが喜ぼうがどうでもいいがな
シオ
ツンがすぎるぞ全く…
シオ
そういうおまえも変わらないな
オロ
…
シオ
あとおまえの弟子から聞いたんだが、行って欲しい指定の日があるらしくて
オロ
いつだ?
シオ
明日らしい
オロ
突然だな
オロ
別にいいが
シオ
そりゃよかった!
シオ
もうそろそろおれは帰ろうかな
シオ
その絵、いるか?
オロ
いらん
オロ
置いて帰ってもゴミになるだけだ
オロ
それか外にいるヤツらの餌になるかだな
シオ
了解わかったよっと…
(サッと地図の下に絵を重ねて何も無かったかのように床に置き、オロにバレぬよう空気を荷物に入れる)
シオ
よし。
シオ
また来るな!
シオ
それかおまえが遊びに来いよな〜!
オロ
…そこまで私は暇じゃないが
オロ
気が向いたら言ってやらんことも無い
オロ
おれの家はいつでも空いてるから来たいときに来い。
オロ
歓迎ももてなしも何もしないがな。
シオ
わかったよっと
シオ
ふー、
シオ
とりあえずは大丈夫だな
シオ
オロはああ見えて約束はちゃんと守るタチだ
シオ
来るか来ないかの心配は無用だろう
シオ
にしても…
シオ
ハネムシ多すぎだな
シオ
今日だけでジオいくら溜まったんだ?それに絵の具どのぐらい使ったかな…
シオ
…とりあえずうちに帰って報告だな