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白羽汐莉(しらはねゆうり)
そう言葉にして、朝を迎えた 先輩達とまだまだサッカーがしたい そのために今日絶対勝つ キックオフの笛が鳴った瞬間、 鼓動の音が世界の中心になった ここまで来るのに、何度転んで、何度泣いたんだろう クラブチームで試合に出られなかった時期もあった それでも――今日、このピッチに立ってる 「絶対、勝つ」 心の中で小さく呟く 風が髪を撫でる 太陽がまぶしい ピッチの先、ゴールの向こうに仲間の声が響いた ――ボールが回ってくる 一瞬のチャンス ここで…決める 相手ディフェンスの間を抜ける 足元に伝わる感覚、呼吸、汗、全部が混ざって 時間がスローモーションみたいにゆっくりになる シュート 足に当たった瞬間の感触がまだ残っているうちに、 ボールは綺麗な弧を描いて、ゴールネットを揺らした
白羽汐莉(しらはねゆうり)
その時終了の長いホイッスルが鳴る 歓声が一気に広がった 仲間たちが走ってきて、抱きしめてくる 涙がこぼれた 泣くつもりなんてなかったのに、勝手に溢れてきた ――勝った この瞬間、全国大会出場が決まったんだ ふと、スタンドの方に顔を向けた そこに、りんとそよ、琉真、そして――純 みんな立ち上がって、拍手してくれてた
りんとそよは、相変わらず
りん
そよ
って叫んでる
その中で、純だけは静かに、 でも確かに、まっすぐこっちを見ていた その視線が、まるで何かを伝えようとしてるみたいで 胸の奥が、ぐっと熱くなった
白羽汐莉(しらはねゆうり)
涙がまたこぼれそうになるのを、 笑顔で誤魔化しながら手を振った 青空の下で、あの視線だけがずっと焼きついて離れなかった
七瀬琉真(ななせりゅうま)
琉真の声が、俺の耳のすぐ横で弾んだ りんもそよも跳ねるように喜んでて、 俺はただ、呆然とピッチを見つめてた ゴールを決めた汐莉が、 仲間に囲まれて笑ってる 汗と涙で顔がぐちゃぐちゃなのに、 その笑顔はどこまでも綺麗だった 心臓が、変なリズムで鳴ってる
有馬純(ありまじゅん)
練習の時、誰よりも遅くまで残ってた 夕方、ひとりでシュート練習してた姿 それを偶然見かけた日のことを、思い出す 真剣で、頑張り屋で、でもどこか不器用で あの時、 なんで目が離せなかったのか、 ようやく分かった気がした 観客席の喧騒の中で、 汐莉がこっちを見上げた 目が合った瞬間、笑顔になって、 軽く手を振ってきた その一瞬だけ、 世界から音が消えた気がした
有馬純(ありまじゅん)
誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた ただ、それだけ それだけなのに、 胸の奥で何かが、確かに動いた ――この感情が、なんなのかはまだ分からない でも、あの日の青空の下で、 俺の心は確かに、汐莉に少し触れた 俺…琉真が好きなはずなのに
白いユニフォームが陽に透けて、風が抜ける ピッチの真ん中で、汐莉が走る姿を目で追っていた 汗の粒が光るたびに、歓声が大きくなる ボールがネットを揺らす瞬間、スタンドが弾けた
七瀬琉真(ななせりゅうま)
気づけば、笑ってた 手を叩きながら、となりの純の方を見た 彼は黙ったまま、目を細めてピッチを見つめていた その横顔が、なぜか印象に残った 試合が終わって、観客席を降りる りんとそよが大騒ぎして、
そよ
って声を揃える
七瀬琉真(ななせりゅうま)
有馬純(ありまじゅん)
純が短く答える その声が小さくて、でも妙に優しかった グラウンドの外で汐莉が振り返る 笑顔、汗、涙、全部がまっすぐだった あいつは、どんな時も真っ直ぐだ
七瀬琉真(ななせりゅうま)
自然とそう言葉が出た 心からの言葉だった 白羽は一瞬驚いて、ほぼ泣きながらすぐに笑う
白羽汐莉(しらはねゆうり)
その笑顔が、なんか懐かしい でも、その隣で純が静かに立ってるのを見て、 少しだけ胸の奥がざわついた
七瀬琉真(ななせりゅうま)
前よりも少しだけ、 俺のことを見る目が真剣になった気がする 何か言いたそうで、言わない そんな時が増えた
七瀬琉真(ななせりゅうま)
そう言うと汐莉は力強くうなずいた その声を聞きながら、純が目を伏せる
七瀬琉真(ななせりゅうま)
風が吹いて、 汗の匂いと芝の匂いが混ざる 青空がやけに広い 純の視線がまた、ピッチのほうを向いていた その先には、まだ汐莉がいる けど―― あいつの目に映ってるのは、 本当に“白羽”だけなのか、 それとも“誰かを想う自分”なのか 正直、俺にはわからなかった けど、 なんとなく聞けない気がした
七瀬琉真(ななせりゅうま)
笑って、空を見上げた 真っ青な空が、やけにまぶしかった
ヌッッッッッシ
ヌッッッッッシ
ヌッッッッッシ
ヌッッッッッシ
ヌッッッッッシ
ヌッッッッッシ
ヌッッッッッシ
ヌッッッッッシ
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