8月26日 近日、ようやく荷物がある程度片付いた所で、理央は新居付近の小学校へは向かっていた。父親の仕事の事情で隣町へ引っ越すことになった理央は、街の景観は勿論、通う小学校も変わり、ここから新たなスタートを切ろうとワクワクしていた。 新居は、案外旧居とそこまで離れていなく、別に転校する程の問題では無かったのだが、理央にとって前籍校での生活はお世辞にも充実しているものとは言えず、リオが必死に両親への説得したことで急遽転校することになったのだ。 そして、今日は待ちに待った転校初日。ところがどっこい、昨日は学校が楽しみで眠れなかったという。それが裏目に出たのか、理央は転校初日だというのに、起床した時刻はなんと朝礼が始まる約10分前であった。 理央は朝食の食パンを咥え、新たな景観に戸惑いつつも、学校へと向かっていく。
佐藤理央の幼少期
理央は全速前進で前へ、前へと進む。 そう、疾風のごとく……
どおおおおおおおん!!!!
佐藤理央の幼少期
急いでいて周りが良く見れていなかったせいで、どうやら壁の死角で誰かとぶつかってしまったようだ。 かなりの衝撃でぶつかったせいか、口に咥えていたパンが見当たらない。吹っ飛んでしまったのか。 どう考えても今のは自分が悪い。早く謝らなければ。理央はぶつかってしまったであろう人の気配を宛に目線をそちらに落とす。
ガタイの良い男
佐藤理央の幼少期
そこには驚きの光景が広がっていた。自身が先程咥えていた、いちごジャムが大量に塗りたくられたパンが理央とぶつかったであろう厳つそうな男のシャツにベッタリとくっついてた。 しかも、いかにも強面の、怖そうな男のシャツに。
ガタイの良い男
佐藤理央の幼少期
理央は今の現状を完全に理解し、ガタイの良い男へ頭を即座に下げ、必死に誠意を示すように謝罪をした。
ガタイの良い男
ガタイの良い男
ガタイの良い男
佐藤理央の幼少期
ガタイの良い男
男は怒りを露わにしながらそう怒鳴り声に近い声質で呟くと、理央の首元の襟を荒々しく掴み、ひょいと軽々持ち上げると、すぐ横にあるブロック塀に容赦なく叩き付けた。
佐藤理央の幼少期
理央は突然の痛みに思わず目を瞑り、身構える。 それからの展開は早かった。男は理央の身に付けていたランドセルを強引に奪い、中身を物色し始める。
ガタイの良い男
男はランドセルから封筒を発掘し、迷うこと無くポケットに入れると、視線を理央に向けた。
ガタイの良い男
ガタイの良い男
理央が返事をする間もなく男はペラペラと話を進める
ガタイの良い男
ガタイの良い男
理央はこれから起こることを何となく理解していた。きっと、気が済むまで乱暴されるに違いない。理央はそう思い、少しでも傷が軽く済むことを願い、身体を丸め込み、腹を下に傾けた。 比較的温厚な家庭で愛され育った理央は、暴力といった反社会的行為を行ったことも、受けたこともなかった。そんな理央にとって今直面している状況は恐怖以上のなにものでもない。 震え、凍りついた様に身体が思うように動かない。今の理央と男はまるで子うさぎと虎。圧倒的な格差を前に小学生3年生、佐藤理央、8歳にしてこの世界は弱肉強食、狩るものと狩られるものの2種類に分類され進行していることを分からせられた。 理央はそう思考を巡らせ、これから起こることを覚悟した。 その時だった__
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突如少年の声が周辺一式に響き渡る。
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ガタイの良い男
理央は思わず顔を上げる。 理央が声のする方に目線を当てると、そこには半袖短パン、ウルトラマン帽子の同い年くらいのいかにもガキ大将のような風格の少年が男に向かって、今にもこぼれ落ちそうな程の石を抱え、ついには投げる始末を繰り返していた。
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ガタイの良い男
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そう言ってその少年は男の胸元にピシッと指を指す。理央も無意識のうちに指が刺されている胸元を見つめる。そこには美しく「しまむら」と刺繍された文字が垣間見えた。
ガタイの良い男
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ガタイの良い男
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そう言ってその少年が腰が抜けた理央に向かって手を差し伸べる
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彼は顔面血だらけで、今にも崩れそうなほどフラフラと体を揺らしていた。それなのに、微笑みを忘れていない。先程までのことがなかったかのように振る舞う。
佐藤理央の幼少期
その姿が非常に痛々しく、理央は反射的に視線を逸らす。そうして差し伸べられた手を無視した。決して不快だった訳では無い。ただ、自分が情けなさすぎた。これ以上この子に負担を掛けたくなかっただけ。 その瞬間、地面に向けた理央の視界が白く、ぼんやりと滲んた。その正体が目に溜め込まれていた涙だと気付いたのはものの数秒後であった。
佐藤理央の幼少期
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佐藤理央の幼少期
頬につたる水滴の熱を感じ、更に情けなさを感じた理央は、両膝に顔を埋める。
佐藤理央の幼少期
うわううわーーーん(理央の鳴き声)
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佐藤理央の幼少期
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謎の少年が突如表情を変える
佐藤理央の幼少期
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佐藤理央の幼少期
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少年は涙を拭くため、腕で目元をゴシゴシと擦る
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佐藤理央の幼少期
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再び差し伸べられた少年の手を、理央は力強く掴む
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佐藤理央の幼少期
少年が勢いよく理央を引き上げると同時に、2人はまるで無重力空間に居るような感覚に襲われる。 どうやら、二人同時に勢いの余り、転んでしまったようだ。
一瞬、辺りの音をすべて持ち去られたように空間が静かになる。
佐藤理央の幼少期
佐藤理央の幼少期
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佐藤理央の幼少期
佐藤理央の幼少期
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佐藤理央の幼少期
多田伊吹の幼少期
ー4月7日 午前 7:45ー
佐藤 理央
佐藤 理央
理央が熟睡していると、突如「カンカンカン!」と、金属の物質同士がぶつかる騒音に起こされる
佐藤 理央
その音の正体を知るのはそう時間が掛からなかった。どうやら母が日課のように行う奥義「フライパン叩き」の音だ。聞きなれた音に心底安心しつつも、理央は急いで支度を始める。
理央のママ
理央のママ
理央の母が部屋のカーテンを開けながら呟く。
理央のママ
佐藤 理央
そう言って理央は小恥ずかしそうに母親の背中を追い出す
理央のママ
佐藤 理央
バタン!と扉が閉まる音が耳に入ると、理央は疾風の如く着替えを始める。まだ未着の、ピカピカな制服に。
佐藤 理央
本来なら鏡を見ながらピシッと決めていきたい所だが、今日はそうはいかない。なぜなら待たせてしまっているからだ。親友を…
玄関から出ると、朝日が理央の全身に差し込む。
佐藤 理央
佐藤 理央
多田 伊吹
コメント
2件
色んな意味でヤバすぎ