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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

海外出張?!

突然貴方は言い出した

貴方

だから…

貴方

少しの間だから、って…

なだめるように言う貴方

なんでよ……

やりきれない感情に

思わずうつむくと

貴方

貴方

寂しい…?

優しい声が降ってきた

ズルいなぁ…

その声聞くと、寂しさなんて 吹っ飛んじゃうじゃん…

そんな事を思うと 少しだけ笑えた

………別に

貴方

ふぅん……

からかった顔が見えたので

うるさいっ!

ちょっと叫ぶと

貴方

何も言ってないけど?

目尻にシワを寄せて

幸せそうに笑った

やっぱり、その笑顔が好きだ。

貴方

たった一週間だから。

貴方

待っててね

そう言って、抱きしめてくれた

少しの間だから、って

私の頭に手を乗せた

安心するような、大きな手

「いってきます」って

貴方はやっぱり笑顔で

玄関のドアが閉まる音が響いた

一週間後

貴方が帰ってくる日

一通の電話が届いた

え………っ?

信じられない言葉の数々に

私は戸惑う

一滴の雫が頬を伝った

「飛行機が墜落…?」

「貴方が死んだ…?」

受話器越しに看護師の 無機質な声が響く

貴方が居ないなんて

まだ…信じたくなかった

大ニュースになって

半壊した遺体が戻ってきて

お葬式が開かれて

段々と現実味が増していった

優しい笑顔を向けてくれた彼

暖かい手で撫でてくれた彼

慰めてくれた彼

愛してくれた彼

──冷たい石になった彼は

少しだけ濡れていた

そういえば 通り雨が降ったっけ

貴方を攫っていったみたい…

そんな事を思うと

少しだけ笑えた

ねーぇ、貴方。

貴方が居なくなって一週間

変わらない声で

貴方の遺影に語りかけた

遺品の一つを握りしめて

もっと、話したかったなぁ…

もっともっと、
貴方を知りたかった

何を言っても、額縁の貴方は

あの頃と同じ笑顔で

もう、撫でてくれなくて

二度と抱きしめてくれなくて

もっと一緒に笑いたかった

私の心臓が止まるまで
一緒に居たかった…な…っ

……返事は無くて

置いてかないでよぉ…っ

勝手に居なくなんないでよ…

もっと…貴方と幸せに
なりたかった

幸せを分かち合って

苦しさは半分こして…

少しずつ、少しずつ

語りかける度に目が潤んで

生暖かい雫が頬を濡らして

こんなにも彼を 愛していたんだ、と

今更になって気付いた

待っててね、って
言った…くせに。

一週間、なんて…
大嘘…じゃん…っ

誰にも聞こえない

聞かれたくもない、独り言

バカ…っ

投げやりになってうつむくと

ポツッ、ポツッ

不規則に地面を叩く音

優しい雨音が聞こえた

これも、通り雨かな……

貴方を攫ったみたいな…?

そんな事を呟くと 少しだけ笑えた

あの頃みたいに…

俯いたと同時に

抱きしめた遺品が見えた

それを開けると、 水滴のように煌めく指輪

貴方が…用意してくれたんだ

私を想って

……渡して貰えなかったけど。

……ふふっ

そういう所、抜けてたよね。

思いだして笑えた

いつまでも、貴方は貴方で

最期まで、私を想ってくれてたかな

……なんて、分からないよなぁ…

………ねぇ

待っててね、って言ったよね

そう言って、 抱きしめてくれた事

覚えてる?

……今度は、 私が待たせる番かな

貴方の分まで生きて この世の出張から帰る時

お土産話、沢山聞かせてあげる

こんなに幸せだったよ、 って自慢するね

あと、指輪も

二人分、持っていくね

私が通り雨に攫われて

貴方の所に行くまで

待っててね

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