私
突然貴方は言い出した
貴方
貴方
なだめるように言う貴方
私
やりきれない感情に
思わずうつむくと
貴方
貴方
優しい声が降ってきた
ズルいなぁ…
その声聞くと、寂しさなんて 吹っ飛んじゃうじゃん…
そんな事を思うと 少しだけ笑えた
私
貴方
からかった顔が見えたので
私
ちょっと叫ぶと
貴方
目尻にシワを寄せて
幸せそうに笑った
やっぱり、その笑顔が好きだ。
貴方
貴方
そう言って、抱きしめてくれた
少しの間だから、って
私の頭に手を乗せた
安心するような、大きな手
「いってきます」って
貴方はやっぱり笑顔で
玄関のドアが閉まる音が響いた
一週間後
貴方が帰ってくる日
一通の電話が届いた
私
信じられない言葉の数々に
私は戸惑う
一滴の雫が頬を伝った
「飛行機が墜落…?」
「貴方が死んだ…?」
受話器越しに看護師の 無機質な声が響く
貴方が居ないなんて
まだ…信じたくなかった
大ニュースになって
半壊した遺体が戻ってきて
お葬式が開かれて
段々と現実味が増していった
優しい笑顔を向けてくれた彼
暖かい手で撫でてくれた彼
慰めてくれた彼
愛してくれた彼
──冷たい石になった彼は
少しだけ濡れていた
そういえば 通り雨が降ったっけ
貴方を攫っていったみたい…
そんな事を思うと
少しだけ笑えた
私
貴方が居なくなって一週間
変わらない声で
貴方の遺影に語りかけた
遺品の一つを握りしめて
私
私
何を言っても、額縁の貴方は
あの頃と同じ笑顔で
もう、撫でてくれなくて
二度と抱きしめてくれなくて
私
私
……返事は無くて
私
私
私
私
私
少しずつ、少しずつ
語りかける度に目が潤んで
生暖かい雫が頬を濡らして
こんなにも彼を 愛していたんだ、と
今更になって気付いた
私
私
誰にも聞こえない
聞かれたくもない、独り言
私
投げやりになってうつむくと
ポツッ、ポツッ
不規則に地面を叩く音
優しい雨音が聞こえた
これも、通り雨かな……
私
そんな事を呟くと 少しだけ笑えた
あの頃みたいに…
俯いたと同時に
抱きしめた遺品が見えた
それを開けると、 水滴のように煌めく指輪
貴方が…用意してくれたんだ
私を想って
……渡して貰えなかったけど。
私
そういう所、抜けてたよね。
思いだして笑えた
いつまでも、貴方は貴方で
最期まで、私を想ってくれてたかな
……なんて、分からないよなぁ…
………ねぇ
待っててね、って言ったよね
そう言って、 抱きしめてくれた事
覚えてる?
……今度は、 私が待たせる番かな
貴方の分まで生きて この世の出張から帰る時
お土産話、沢山聞かせてあげる
こんなに幸せだったよ、 って自慢するね
あと、指輪も
二人分、持っていくね
私が通り雨に攫われて
貴方の所に行くまで
待っててね
コメント
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うん、代わりに見てるね、ドラマ笑
わかった~
ごめん…ちょっと体調悪くてさ… 今日はやめといていい?また次に参加するから!