ya.
塾に到着するなり振り返ると、そこに大宮ゆあんがいた。なおきりが数学と理科を受け持つ、中三クラスの生徒だ。
no.
もう到底おはようの時間ではないから、「おそよう」。僕もそう思ったけど、一応講師として普通に答えることにした。 ゆあんくんが嬉しそうに笑う。
ya.
no.
no.
no.
ya.
no.
ya.
ワインレッドのおしゃれなリュックを担ぎ直して、ゆあんくんがカラカラと笑った。
ya.
no.
ya.
ゆあんくんが、二階にある自身の教室へと駆けていく。 見えていないのを分かりながら、彼に手を振り、一階の職員室に入った。
鈴木
no.
鈴木は、都内の私立大学の英語科に通う三年で、同期のバイト仲間だ。
鈴木
no.
鈴木
no.
鈴木
no.
苦笑しながら、今日の日付を思い出す。八月十六日、金曜日。中学生にとっては、夏休みも折り返し地点だ。
鈴木
no.
鈴木
苦笑しながら一時間目のクラスで使う教科書やら参考書やらを取り出す。授業が始まる前に、またシュミレーションをしておかないと。
no.
鈴木
鈴木
no.
鈴木
鈴木
no.
鈴木
鈴木が大きな溜息を洩らした。
鈴木
鈴木
no.
鈴木
no.
時計はもう、授業が始まる十分前を示している。僕は授業に必要な書類をかき集め、同僚の講師たちに頭を下げて、いそいそと職員室を出た。
『中明学院』は、都内全域にいくつもの校舎を持つ大手の進学塾だ。対象は高校受験を控える中学生で、それなりの功績を誇っている。 大学の掲示板に、中明学院の講師募集の張り紙が出されていたのが三ヶ月前。他のバイトよりも一つ抜き出て時給が高いのを見て、僕はその日の内に応募した。 そして、僕がバイトを始めた約二週間後、授業が終わった後で、塾長の広瀬に呼び出された。鈴木も一緒だった。
広瀬
僕は反射的に「はい」と答えたが、横にいる鈴木は微かに表情を失って、「まあまあです」と小声で言った。
広瀬
鈴木
広瀬
彼の名前が出た途端、鈴木が完全に表情を失うのが分かった。 大宮ゆあんのクラスは、僕も理科と数学を受け持っている。利発そうで、だけどちょっと勝気な印象のある、丸い瞳の男の子だ。 僕も初日に覚えた。単純に言ってしまえば、かわいいからだ。一般的にそうだというだけで、別に変な下心とか性癖がある訳ではない。 女の子と勘違いしてしまうような顔立ちと、脆弱で、線が細い華奢な体格。“かっこいい”より“かわいい”と形容したくなる容姿を、あの子はしている。
広瀬
広瀬
はっきりとした物言いに、不意打ちを食らって驚いた。
広瀬
広瀬
広瀬
鈴木
広瀬
やや言い淀むように、鈴木が間を空ける。
鈴木
鈴木
鈴木
鈴木
広瀬
広瀬
no.
広瀬
no.
嘘ではなく、正直に答えた。鈴木がゆあんくんに言われたという、『つっまんない』の言葉にも、少なからず驚いていた。
no.
no.
no.
広瀬
少し考えて、首を振りかける。だけどそこで、ふと尋ねてみる気になった。
no.
広瀬
広瀬の答えに、僕は短く息を呑んだ。 一ヶ月。広瀬がさっき、彼には様子見の期間がある、と言った。では、彼の中で講師を排除する心積もりは、わずか一、二週間で為されているということになる。
no.
こっそり感嘆の息を漏らして、そう思う。目立つ子だとは思っていたけど、まさかそんなことができるなんて。
広瀬
広瀬
広瀬
広瀬
広瀬
広瀬
広瀬
鈴木
鈴木が拍子抜けしたように呟く。声を受け、「ええ」と広瀬が頷いた。
広瀬
no.
広瀬
no.
先程から、考えていたことだった。声を受けてすぐに、広瀬が首を振る。
広瀬
広瀬
no.
広瀬
頭を下げて、僕と鈴木が普段は教室に使われる部屋を後にした。
僕にとっては初めて聞く内容だったけど、鈴木が横で「やっぱりな」と呟いた。彼が苦笑しながら、こちらに顔を向ける。
鈴木
no.
不思議に思いながら、一階の職員室に戻ろうとしたところで、玄関の前で家族の迎えを待つ生徒たちの姿に気づいた。 思わず、足を止める。生徒のうちの一人は、大宮ゆあんだった。
生徒
生徒
ya.
生徒
ya.
ゆあんくんが、鼻先で笑う。彼に、よく似合う仕草だ。
ya.
生徒
ya.
ゆあんくんが答えたその時、ガラス張りの窓に黄色いライトが反射した。生徒の一人の迎えの車だろうか。
生徒
生徒
ya.
友達に手を振って、彼が身を翻そうとした。が、その足が一瞬止まる。ぼんやりと彼らを見ていた僕の顔に、ゆあんくんの大きな目が向けられる。 あんな話を聞いた後で、僕は咄嗟に動けず、反応が遅れた。次の瞬間、彼の桃色の口が、ふっと綻んだ。ゆあんくんが笑う。
ya.
僕は小さく瞬きした。上手く返事をすることができないでいると、彼がくるりと背を向けて、ドアをすり抜け、出ていってしまう。 どうしたものかと立ち尽くしていると、いつの間にか、隣に広瀬がいた。
広瀬
彼女の口調はからかっているようにも、満足そうにしているようにも見えた。
広瀬
うづき
うづき
うづき
うづき
コメント
11件
神絵師で小説も上手とかまじで神やん!
こんなイラストが描くのがお上手なのにっっ小説書くのも上手だなんて…尊敬です(ˆ. ̫ . ꜀ˆ)
ちょっちょっと待ってください!! こんなに卯月さんが小説も最高なの初めて知りました! 神過ぎます!ケラケラ笑うって表現がゆあん君らしすぎる、、 講師&塾生パロなんてよく思い付きますね!生徒側が合格か判断するって いう矛盾も最高すぎます!プリ小説って何でやってますか? 早く見たさ過ぎて、、出来れば教えてもらえると嬉しいです!