客
今日も雨か…
客
億劫になるな
客
空の色が嫌いだ
客
重くて眩しくてめまいがする
店員
気圧もテンションも下がってますね
客
うわ!
客
びっくりした
客
何ですか、いきなり
店員
それはこちらのセリフですよ
店員
ここに入るなりグチグチとして…
店員
冷やかしならお断りですよ
客
ここって言ったって…
客
客
あれ?!
客
どこだここ?
店員
いらっしゃいませ
客
無意識で建物の中に入ってたのか
客
これはすみませんでした
店員
いいえこちらこそ
店員
それにしても嫌な天気ですね
客
店員さんもそう思いますか
客
まぁ、こんな天気じゃ客足も遠退くもんな
店員
おや
店員
そうでもないんですよ
店員
現にこうしてあなたがいらっしゃった
客
たしかに…
客
みんな雨宿りでお店に来るのかな
店員
そうかもしれません
店員
そうじゃないかもしれませんが
客
曖昧な返答だな
客
どういうことですか?
店員
曇天も悪くないってことですよ
客
はあ、
店員
皆さん鬱々とするでしょう?
店員
そうすると何か華を求めるんですよ
店員
ストレスの雨に晒されて
店員
少しでも気を晴らそうと楽しいことを探しにいらっしゃるわけです
店員
店員
アジサイを見て一瞬でも心が和んだりしませんか?
客
店の前に咲いてたんだ
客
見向きもしなかったな
客
うーん、別に何とも
店員
童心を置いてきちゃったのですか?
客
うわ、なんですかその言い方
店員
アジサイはひとの手が入って次の年も綺麗に咲くものです
店員
今年成長した枝には花がつきません
店員
なので新しい枝を切る必要があります
店員
そうやって低木の美しい外観は保たれます
客
面倒な華ですね
店員
華とはそういうものです
店員
タダで美貌が手に入ると思わないことですね
客
また言い方が突っかかるな
客
しかし一理ある
店員
あなたも雨をしのぐ為に入って来たように見えて
店員
実は何か楽しいことを探しているんですよ
客
そうなんですかねぇ
店員
そうこう言っているうちに晴れてきましたよ
客
本当だ、雨がすっかりあがってる
客
客
私は雨上がりのアジサイなら好きですよ
客
太陽で雨粒がキラキラして宝石みたいだ
店員
綺麗ですね
客
そろそろ行かなくちゃ
店員
結局冷やかしですか
客
わかりましたよ、ではコーヒーひとつお願いします
店員
かしこまりました







