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第1話 - あ

2023年05月24日

#恋愛

結城真矢

シバタ

おい、ヒカル！

ヒカル

急にどうしたの？

ヒカル

今からちょうど寝るところだったんだけど…

シバタ

お前来週の土曜日暇か？

ヒカル

あぁ、別に何の予定もないよ

シバタ

先週出た課題とかも終わらせてるのか？

シバタ

本当に暇なんだな？

ヒカル

うん、その日はバイトもないし完全に空いてるよ

シバタ

ほーーん、そうか

シバタ

なるほどな…

ヒカル

そうだよ。今週は全部空いてるかな、珍しくだけどねー

ヒカル

課題ももう全部終わらせてるしね

シバタ

なんだお前、友達の一人もいないのか？

シバタ

寂しいやつだなぁ

シバタ

そんなお前に朗報だぞ

ヒカル

別に友達がいないから空いてるわけじゃないけど…

ヒカル

まぁいいや、なに？

シバタ

お前を俺の家で開かれるパーティーに招待してやるよ

シバタ

うれしいか？

ヒカル

お、行く行く。

ヒカル

パーティーするのも好きだけど行くのも好きなんだよね

ヒカル

本当に行っていいの？

シバタ

ああ、もちろんいいぞ！今回はお前に俺の寛大さを味合わせてやろうと思ってな！

シバタ

それにお前みたいな金のないやつを見るのは楽しいしな！

シバタ

俺は金持ちだからな

シバタ

お前とかみたいな貧乏な家と違うから

シバタ

たくさん人を呼べるんだ

シバタ

感謝しろよ？

ヒカル

まぁ呼んでくれるのはうれしいけど…

ヒカル

その言い方はあんまりしないほうがいいんじゃないかなぁ…

シバタ

なんだよ

シバタ

貧乏人風情が俺に文句をつけようっていうのか？

ヒカル

別に文句じゃないんだけど…

ヒカル

他に誰が来るの？

シバタ

お前以外だとクラスのやつらは半分くらい誘ってるな

シバタ

ああそうだ、今思い出した

シバタ

お前の家、この前見たけどひとり暮らしでかわいそうだな！

シバタ

あんなボロアパートに一人で暮らして本当に涙が出そうだったよ

ヒカル

いや、まぁボロアパートではあるけども

ヒカル

別にあそこには親に言われて住んでるだけだから…

シバタ

親にも見捨てられてるのかよ笑

シバタ

いよいよかわいそうな奴だわ

シバタ

ま、いいや。今度の土曜日、駅前に１０時に集合しとけよ。

ヒカル

分かったよ…

ヒカル

よろしくね

～土曜日、昼～

ヒカル

駅前についたけど、みんなどこにいるの？

ヒカル

え、違うほうの出口だったりする？

ヒカル

おーい

ヒカル

どこにいるのか教えてくれないとわからないんだけど…

シバタ

お！

シバタ

お前ほんとに来たのかよ、貧乏人！

ヒカル

本当に来たも何も…君が呼んだから来たんじゃないか

ヒカル

それで、今一体どこにいるのさ

シバタ

はーー

シバタ

お前本当に金もなければ知恵もないんだな

ヒカル

どういうことだよ

ヒカル

なんでそんなこといちいち言われなきゃいけないんだよ

シバタ

まだ分かんないのかよ笑

ヒカル

分かんないよ…

シバタ

最初からお前なんかうちのパーティーなんかに来れるわけないだろ？

シバタ

お前みたいなボロアパートに住んでるやつがいたら

シバタ

みんな来たくないって言っちまうよ

ヒカル

はぁ？

ヒカル

だったら最初から呼ばなかったらいいだろ？

ヒカル

なんでわざわざ呼んだりなんかしたんだよ

ヒカル

別に僕にも君にも得なんてないじゃないか

シバタ

いやいや

シバタ

面白かったぞ？

シバタ

お前みたいな貧乏な奴がのこのこ駅前に来て人を探してる姿を見るのは

シバタ

腹抱えて笑っちまったわ！

ヒカル

はぁ……

ヒカル

わざわざここまで行くんじゃなかった

シバタ

今からでも遅くないぞ？

シバタ

来たかったら次俺に逢った時土下座したら来させてやるよ！

ヒカル

土下座なんかするわけないだろ…

ヒカル

そんな無理なことばっかり言って楽しい？

シバタ

ま、お前みたいな貧乏人は早くボロアパートに帰って一人でパーティーでもすることだな！

ヒカル

はぁ……

ヒカル

わかったよ

シバタ

ん、なんだ？

シバタ

パーティーでも開いてくれるのか？

シバタ

一人暮らしのお前が何やったってうちのには勝てないだろうがな！

ヒカル

そんなのそもそも開こうと思わないよ

ヒカル

じゃあね

～同日夜～

キララ

ヒカル、最近あなた大丈夫？

ヒカル

ん、どうしたのお姉ちゃん

ヒカル

特に変わったことはなにもないけど…

キララ

本当？今日知り合いから聞いたのよ

キララ

なんかあなたが最近シバタとかいうやつに目をつけられたって言ってたわ

キララ

そいつ、いったいぜんたいどんなやつなの？

ヒカル

んーー親が会社の社長らしくて結構金持ちっぽいよ

ヒカル

今日もパーティーやってたらしい

キララ

ふうん、なんか成金みたいだしすごく見栄っ張りそうな性格ね

ヒカル

まぁ確かにね…

ヒカル

あんまり話したことないやつすら集めてるみたいだからね

ヒカル

僕はなんか招待されなかったけど

キララ

それよそれ！

キララ

なんかヒカルだけ嘘の集合場所教えられてたって…

キララ

もしかして最近虐められてるの？

ヒカル

いや、そんな深刻な問題じゃないよ

ヒカル

あっちが金持ち自慢したくてやってるだけだし…

ヒカル

駅まで歩いたのはまぁいい運動だったかなー

キララ

やられたらやりかえしなさいよ！

キララ

ホントにあんたは昔からあんまりそういうことで怒らないんだから…

ヒカル

怒ってはいるしめんどくさいからきっちり対応はするよ？

キララ

はーーー

キララ

ほんとあなたってお人よしな性格なんだから…

キララ

困ったらお姉ちゃんである私に甘えていいのよ？

ヒカル

家族の力は使うけど、根本的には解決しないからね

ヒカル

ちゃんとそういうのは自分ではっきり言って解決するよ

キララ

もう…

キララ

あ、そういえばヒカルが今住んでるあのアパートもそろそろ築年数やばかったでしょ？

キララ

そろそろ引っ越してもいいのよ？

ヒカル

いいよ、そんな

ヒカル

それにあそこの大家さんと仲がいいから卒業まではあそこに住みたいんだよね

ヒカル

今日も畑で取れたって野菜いっぱいもらっちゃったよ

キララ

あんたが無欲すぎてお姉ちゃん怖くなっちゃうわ

キララ

まーそういうことなら大丈夫そうね

キララ

なんだか心配して損したわ

ヒカル

うん、そういうことだから

ヒカル

よろしく、お姉ちゃん！

ヒカル

またね！

キララ

うん、またねヒカル

～１週間後～

シバタ

おい！貧乏人！

シバタ

久しぶりだな！

シバタ

そろそろ俺に土下座する準備はできたか？

シバタ

来週にクラス全員を呼んでやろうと思っててな

シバタ

お前もその中にしょうがなく入れてやろうってわけだ！

ヒカル

いや、いいよ

ヒカル

そもそも君にわざわざ土下座してまで頼むことじゃないだろ

シバタ

あぁ？

シバタ

いいのかな、そんなこと言って

シバタ

お前みたいな貧乏人がこのクラスに必要ないってことを教えてやろうか？

シバタ

明日以降学校に行くことが嫌になるぐらいやってやるよ

ヒカル

普通にそんなことしてどうなるんだよ…

ヒカル

どうしようもないでしょ…

シバタ

なんだなんだ、今日はやけに反抗的だなぁ

シバタ

あ、そうだ

シバタ

お前の家族にも嫌がらせしてやろうかなぁ

ヒカル

はぁ？

ヒカル

何言ってるんだお前

シバタ

だからわかんないか？

シバタ

お前の家族を全員無職にしてやろうか？って言ってるんだよｗ

シバタ

あー頭が悪すぎて涙が出るぜ

シバタ

この地域一番の大企業の社長の息子だぜ、俺は！

シバタ

お前の親なんかどうせしょぼい仕事しかしてないんだろ？

シバタ

そんなもん俺が親に言えば一発で首だよ

ヒカル

はぁ…、君同じことしか言わないじゃん

ヒカル

毎回毎回しかもしつく何回も言ってくるからいい加減聞き飽きたんだけど…

シバタ

なんだと？

シバタ

お前、マジで腹立ってきたわ

シバタ

一家全員路頭に迷わせてやるよ！

シバタ

覚悟しとけよ

ヒカル

別に大丈夫だよ

ヒカル

そんなこと起こりえないから

シバタ

あ？疑ってんのか？

シバタ

おめでたいやつだなぁ

ヒカル

別に言ってることをできないって否定してるわけじゃないだろ？

ヒカル

そう思ってたらいいじゃないか

シバタ

お前なぁ！

シバタ

いちいちイラつかせるやつだな！

シバタ

じゃあなんで俺様がお前の親を無職にできないって言われないといけねぇんだよ！

ヒカル

なんでって

ヒカル

僕の家族、きみのご両親の会社の親会社の社長と役員だからなんだけど…

シバタ

へ？

ヒカル

君の父親が経営してる会社にお金を出して実際に経営してるいのはうちの家族がやってる会社だよ？

シバタ

え、へ？じゃ、じゃあなんでお前あんなボロボロのアパートに…？

シバタ

俺なんかよりよっぽど金持ちのはずじゃねぇか！

シバタ

なんでなんだよ！

ヒカル

あぁ、それは家族ルールみたいなものだよ

ヒカル

家の方針で高校生の時は自分でバイトして自炊してしっかり普通の感覚を得れるようにしよう

ヒカル

っていう我が家の教育方針なんだよね

ヒカル

あ、あと君の父親から聞いてない？

シバタ

なにがだよ！俺は何も聞いてねーよ！

ヒカル

聞いてないなら僕から教えてあげるよ

シバタ

な、なんだよ…

ヒカル

君のお父さんの会社、経営が悪化して１か月後にはうちの会社からの出資が打ち切られるんだよね

ヒカル

だから君ももうそんな豪華な生活はできないと思うよ

シバタ

そ、そんな… そんなわけないだろ！大体昨日だってうちの親父はずっと普通だったぞ！

ヒカル

父さん曰く「息子に心配かけたくないかららしいだってさ」

ヒカル

君の父親も悲しむんじゃない？

ヒカル

息子がやってるのが人をお金で集めて騒いでるだけ、なんてさ

シバタ

うるせぇよ！！

シバタ

お前にそんなこと関係ないだろ！

シバタ

だ、大丈夫だよ！まだうちには貯金だっていっぱいあるんだからよぉ！

ヒカル

それもどうかなぁ

シバタ

は？まだあるのかよ？

ヒカル

君のご両親、かなりうちの系列に借金してたみたいだし…

ヒカル

多分お金あるように見えてたのは見た目だけだったんじゃないかな？

シバタ

くそ…！

シバタ

俺はいったいどうしたらいいんだよ！

ヒカル

どうしようもないんじゃない？やる気があるのならバイトでもしてみたら？

シバタ

そんなことできるわけないだろ！

シバタ

生まれてこの方俺はバイトなんかしたことないんだぞ！

シバタ

それに俺が何でバイトなんかして人のために働かないといけないんだよ！

ヒカル

つくづく意味の分からないことしか言わないね…

シバタ

そ、そうだ！

シバタ

お前が俺のために金持って来いよ！

ヒカル

何で僕が君のためにわざわざ働かないといけないんだよ笑

ヒカル

なんだったけ

ヒカル

君流に言うと「金もないし知恵もないんだなだったっけ？」

ヒカル

そのまま返してあげるよ

シバタ

うるせぇよ！！

シバタ

持ってこないならお前の家に火でもなんでもつけてやる！

ヒカル

もうひとつ言い忘れてたけど

ヒカル

君がしゃべった内容、全部僕の親と君の親に見せてるからね

シバタ

はぁ？！親は関係ないだろうが！

ヒカル

いや、保護者なんだから関係あるでしょ

ヒカル

それにきみがパーティーうんぬんの嫌がらせをしてきたこと知ったとき

ヒカル

激怒してたよ

シバタ

や、やべぇ…

シバタ

どうすればいいんだよ…、もうなにやっても無駄じゃねぇか！

ヒカル

素直に怒られるしかないんじゃない？

ヒカル

それと君のいまの発言も恐喝だからりっぱな犯罪だよ？

シバタ

た、助けてくれよ！

シバタ

お願いだよ！土下座でもなんでもする！本当に一生のお願いだ、いやお願いです！

ヒカル

君の土下座なんかいらないよ笑

ヒカル

じゃあ、明日からもお金持ち生活楽しんで！

シバタ

待ってくれーーーーー！

～後日談～

ヒカル

あれからしばらくして、シバタの家の会社は出資を打ち切られ倒産寸前になりました。

ヒカル

それと今まで自分の息子がとんでもないことをしていたと知ったシバタの親が

ヒカル

菓子折りをもってうちに謝罪しに来ていました。シバタは頭を丸められてすっかりおとなしくなっていました。

ヒカル

今回の一件を通じて僕はなんだか人間として大事なことを学んだ気がします。

ヒカル

あ、それとアパートから引っ越しました。最後に管理人のおじいちゃんが悲しんでいたのだけが心残りです。

ヒカル

やっぱり人間、謙虚に優しく生きるべきですね！

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結城真矢

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