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幼馴染が
リストカットをしている
気付いたのは
高校2年の夏
一緒にプールに行った時だった
修哉
幼馴染である紬の親と自分の親が旅行に出かけるという
せっかくなんだから一緒にプールでも行けば?
そう言って大規模レジャー施設のペアチケットを 渡してきたのは、紬の母だった
じゃ、くれぐれも間違いのないようにね
そう言い残して2人は箱根へ旅立って行った
紬
修哉
修哉
修哉
中学生にもなると、幼馴染とは言え 女子と馴れ馴れしくするのも気が引けるようになった
人見知りのひどい紬と、誰とでも仲良くできる修哉は いつからか話さなくなっていったし
修哉自身、それでもいいと思っていたのだ
修哉
紬
紬
紬
修哉
いつからか紬は
昔みたいに明るく話すことがなくなっていった
長い前髪、お世辞にも手入れしているとは 思えない肌や髪、それに眼鏡
わざわざ話しかけようと思えないような容姿だ
修哉
紬の髪に触れ、言う
昔の紬はもっと可愛かった 裸眼だったし、ポニーテールが似合っていた 彼女の変わり様を少し残念に思った
紬
修哉
紬
修哉
紬
思春期の女の子は、男子に触れられるのも嫌なのか
なんとなく、そう納得した
紬
紬
紬
紬が言う
修哉は、紬のこんなところが嫌いだった
修哉
修哉
紬
紬
修哉
修哉
修哉
こんな奴とプールなんて行っても楽しくない
そう思ったが
なんとなく、帰るのは気が引けた
紬
ロッカールームから紬が出てくる
修哉
半ズボンに薄水色のラッシュガード 幼稚園生の親が着ていそうな水着を見て苦笑する
紬
紬
そう言って紬は自分の腕に触れた
修哉
笑顔でそう言うと
いいんじゃない?修哉くんらしい
紬は昔のように屈託のない笑みを見せた
修哉
当初予想していたより、何倍も楽しい時だった
紬も、幼馴染である修哉といるからか、 昔のように笑うようになった
眼鏡を外して、髪を縛った紬はやはり愛らしく、 デートをしているようにさえ思えた
紬
紬が指さしたのはウォータースライダー
ぐるぐる回って落ちていくやつだ
修哉
紬
ドキッ
紬が言う浮き輪は、恐らくカップル用に作られている 2人の距離がとても近いやつだ
修哉
紬
明るい紬は可愛かったし、浮き輪の2人乗りくらい 満更でもなかった
修哉
弾む足で階段を登っていく紬
お兄さん
お兄さん
どうしよっか? 悪戯っぽく笑う紬
修哉
修哉
紬
お兄さん
ゆっくりと進み出す
次第に速くなり、コースの横スレスレを滑る浮き輪
きゃー!と楽しそうにする紬の胸が背中に触れる
修哉
滑り終わり、小さなプールに着水した
それは
偶然だった
たまたま修哉の手首についていたコインロッカーの鍵
それが
紬のラッシュガードに引っかかって
修哉
紬
顕になった幾つもの赤い線
驚く修哉に、紬が表情を失う
紬
修哉
紬
修哉
紬
修哉
泣きそうになりながら弁明する紬に、声を荒らげる
紬
修哉
紬
紬
紬は静かに涙を流し始めたかと思うと
突然走り出し、群衆に紛れてしまった
修哉
修哉
紬がリストカットしていた
その事実は、修哉を混乱させた
修哉
リストカットなんてする理由が思い当たらない
紬は物静かだが、いじめられているという話は聞かない
心を病むことなんてないはずだ
修哉
そう思い、再び辺りを見渡す
修哉
コインロッカーからそそくさと出ていく人影 縛りっぱなしの髪と、花柄のワンピースは彼女のものだ
修哉
急いで走り出し、声をかける
紬
振り向いた紬は、観念したように首を振る
修哉
紬
紬
喫茶店で向かい合う
紬
修哉
紬
紬
紬
修哉
修哉
修哉
よかった、そう言って紬は弱々しく微笑んだ
紬
修哉
紬
紬
修哉
修哉
修哉
紬
紬
紬
紬
修哉
紬
紬
紬
修哉
紬
紬
紬
紬
紬
紬
修哉
紬
紬
紬
修哉
修哉
修哉
自分を傷つけさせてしまったのは俺だ
そう思うと情けなかった
恥ずかしい、そんな子供っぽい理由で
紬を放置していた自分が
こんなに愛らしくていじらしくて不安定な女の子に
辛い思いをさせてしまった自分が
紬
修哉
紬
修哉
修哉
修哉
紬
修哉
修哉
修哉
修哉
優しい声でそう言って
懺悔の気持ちと共に、彼女の震える方を抱きしめた
修哉
修哉
紬
紬
小声で囁く紬に
そっと口付けをした