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蘭side
玄関で靴を履け終えた私は ドアノブを掴んだり離したりを 繰り返している。
傍から見れば謎の行為だろうけど 本人にとっては退っ引き ならない状態だ。
桃瀬らん
週末のどちらかを 一緒に過ごす__。
夏休み以降は中断していた習慣が いよいよ今日から再される ことになっている。
面と向かって約束したわけでは ないけれど幼馴染としての 勘がそう告げていた。
週末が近づくにつれ お互いにそわそわしていたのが いい証拠だった。
桃瀬らん
奇跡的にスマホのアラームが 鳴る前に起きていつもより 丁寧に髪をセットした。
服も昨夜の内に選んでおいたし 姿見の前で何度となく チェックもした。
手土産は美琴と恋醒と 一緒に作ったクッキーだ。
桃瀬らん
最後に両手で頬をぺちんと叩いて 気合を入れ私は隣の家を目指した。
桃瀬らん
紫龍いるま
勢いよくドアを開け放つと 部屋の主はまだベッドの中にいた。
私から隠れるように 毛布の下に潜り込み こちらに背を向けるように 寝返りを打つ。
桃瀬らん
紫龍いるま
桃瀬らん
紫龍いるま
えー、と唇を尖らせた瞬間 私はハッと我にかえる。
これでは今まで通り 幼馴染の延長線だ。
私はふるふると頭を振り 冷静になれと言い聞かせる。
桃瀬らん
力ずくでも状況を打開してみせよう。
私は気合を入れ直し ベッドに向かった。
えいっと毛布を引っ剥がし そのままフローリングへと 落としてしまう。
流石の威榴真も飛び起き ぎょっとした顔でこちらを見上げた。
紫龍いるま
桃瀬らん
言ってから私はさーっと 血の気が引いていくのを感じた。
上手く話題を選ばなきゃと 反省していたにも関わらず 早速正面からぶつかってしまうとは 我ながら予想外もいいところだ。
桃瀬らん
とはいえ、どこか鈍いところのある 威榴真には正面突破でないと 意味がないのかもしれない。
桃瀬らん
訝しげな表情を浮かべる威榴真の 肩を掴み私はぐっと顔を近づける。
紫龍いるま
桃瀬らん
次の瞬間、しんと沈黙が落ちた。
威榴真はぽかんと口を開けたまま 息も触れそうな距離で 私を見上げている。
紫龍いるま
ようやく動いた唇から放たれた言葉は 私の堪忍袋の緒をぶち切ってしまった
深く息を吸い込み 腹の底から声を出す。
桃瀬らん
再び沈黙が落ちた。
今度は威榴真も流石にムッとした 表情だったが見る見るうちに 青ざめていく。
紫龍いるま
桃瀬らん
紫龍いるま
紫龍いるま
頭を抱えてベッドに転がる威榴真を 私はじーっと見下ろす。
桃瀬らん
桃瀬らん
この際だからとずっと胸の奥で ぐるぐると渦巻いてた想いを零した。
次の瞬間威榴真は腹筋を使って 一気に身体を起こした。
心外だと言わんばかりの表情で 私に向かって反論してくる。
紫龍いるま
紫龍いるま
紫龍いるま
苦しそうに、唸るように 告げる威榴真に 私は何も言えなくなってしまう。
黙って見つめていると ふっと威榴真が自嘲めいた 笑みを浮かべる。
紫龍いるま
紫龍いるま
紫龍いるま
紫龍いるま
桃瀬らん
最初に感じたのは純粋な驚きだった。
そして自分のことに いっぱいいっぱいで まるで気付けなかったことに 悔しくなる。
紫龍いるま
吹っ切れたような語る威榴真の表情は 言葉以上に晴々としていた。
私はいろんな感情が一気に押し寄せ ただ黙って頷くことしか出来ない。
紫龍いるま
ベッドから立ち上がった威榴真の 手が伸びてきてあやすように 頭を撫でられる。
仕方ねぇなと苦笑するその顔は どこか嬉しそうにも見えた。
紫龍いるま
紫龍いるま
桃瀬らん
涙を堪えながら必死に頷いていると 髪を撫でていた威榴真の 手が宙に浮いた。
そして次の瞬間腕をひかれ 私は威榴真の腕の中に 閉じ込められていた。
桃瀬らん
紫龍いるま
問いかけに答える声はなく 威榴真の腕の力が強くなった。
あの放課後の教室のように お互いの心臓の音が聞こえてくる。
私だけではなく威榴真の 鼓動も大きく脈打っていた。
紫龍いるま
桃瀬らん
緊張で声が裏返ってしまい 私は顔から火が出そうになる。
威榴真も堪えきれなくなったのか 盛大に笑い出し張り詰めていた 空気が柔らかくなった。
紫龍いるま
何がと言う私の問いかけより早く 威榴真が悪戯っ子のような笑顔で言う
紫龍いるま
桃瀬らん
桃瀬らん
紫龍いるま
桃瀬らん
紫龍いるま
桃瀬らん
その後はもういつもと 変わらない会話が続いた。
勉強机の引き出しの中では 彼氏から彼女に贈られるのを 待っているお揃いのリングが 2人の賑やかな声に耳を澄ませている。
E N D __
コメント
2件
お疲れ様でした! めちゃ楽しみにしてました!!