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はるちの嫁になりたい
はるちの嫁になりたい
はるちの嫁になりたい
舞
イザナ
恋をした
今までの片思いが全部ニセモノだったって感じるくらいの圧倒的な恋だと思った
昨日よりも太陽がうんと綺麗で
春の匂いがくすぐったい
風の歌は優しくて
胸の奥で果実のような甘さが広がって
心が痛いよ
手のひらがあなたに触れたいって叫んでる
五感で
心で
全身で
私はあなたに恋をした
世界の色が全部塗り替わっちゃうくらいの
正真正銘の
"本物の恋を"...
舞
私はそんな事を思いながら一人で盛り上がっていた
私が『圧倒的な恋』と出会ったのは
入学式の後の事
舞
舞
ガラ
黒板に張り出されていた席順表に従って
座席に腰を落とした
男女混合の名前順らしい
『安藤』というか行でも比較的後ろになりやすい
今回も一列目の一番後ろの席になった
舞
舞
そんな事を思いながら椅子の後ろの脚に体重をかけた
舞
一階に位置する教室
廊下を挟んで並ぶ窓の外は桜の花が満開
舞
その姿がこの上なく美しい
ロッキングチェアのように椅子を揺らしながら緊張していた
舞
舞
そんな事を思っていると
柔らかな風が扉の横の廊下を吹き抜けた
春風に誘われて
桜の花びらがひらひらと
窓から迷い込んで宙を舞う
舞
その陳道をなんの気なしに目で追いかけると
桜に続いて一人の男の子が私の横を通り過ぎた
うんと背の高い男の子
私はバランスを崩しひっくり返ってしまった
ガシャン
けたたましい音が教室内に響き渡る
Classmate
舞
舞
舞
舞
椅子を引き起こして目立たぬよう腰を下ろそうとした
その時
ガラ
イザナ
さっきの男の子が入ってきた
舞
イザナ
教室で唯一立っていた私は彼と目があった
その瞬間
時間が止まった
壁の時計と秒針が
クラスメイト達が
宙を舞う桜が
ピタリと一時停止した
そんな気がした
ほんの数秒の視線が会話が
何秒間
何分間
何時間
何日間
何年間
何光年
にも思えた
心臓まで止まってしまったみたいだ
息すらできない
なんにも考えられない
何なふうに私のすべてはいともあっさり奪われた
背が高くて
肌が白くて
整いすぎるほど綺麗な顔立ちをしている
少し寂しげな暗黒の瞳に思わず吸い込まれそうになる
文字通り
彼に"釘付け"になってしまった
キーンコーンカーンコーン
再び世界が動き出したのは
二人の間をチャイムの音が駆け抜けた時だった
彼は黒板で自分の席を確認すると
イザナ
隣の列の一番前の席に座った
大きな背中だ
短い白髪が春の風に揺れている
舞
私の心もゆらゆら揺れていた
舞
席順を見た
そこに記された圧倒的に素敵な彼の名前を知りたかった
舞
口の中で呟いた
それは特別な呪文のように思えた
神秘的で美しい魔法の恋だ
こうして私の恋は始まった
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