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悔し涙と君

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悔し涙と君

1 - 悔し涙と君

♥

174

2019年12月24日

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先生

もっと全力出して!!

先生

今までの自分を超えなさい!!

萌々香

はぁ…はぁ…

萌々香

も、う…無理…

先生

そこ!止まらない!

萌々香

は、はいっ!

息切れしながらも校庭を走り続ける

「マラソン大会まであと2日!」と書かれた看板が時々視界に映り込む

私たちの学校では6年生だけ毎年マラソン大会があり、他の学校の人達と長い距離を走り順位を競っている

運悪く私の学校は毎年いい順位をとっているらしく、先生も厳しかった

先生

ピピーッ、戻ってこーい!

夏帆

うっ…ゲホッゲホッ…

萌々香

夏帆、大丈夫?

夏帆

疲れたね…笑

萌々香

そうだね、本番近いよ…

夏帆

雨降ってくれないかな〜

萌々香

ほんとほんと!マラソン大会なんて何であるんだろう…

萌々香

潰れればいいのに笑

夏帆

萌々香は足速いからいいじゃん!!

夏帆

去年だって8位じゃん…私なんて41位なのに!

萌々香

えぇ、早くないって…

確かに運動は得意な方だ。毎年確実に10位以内に入ってるから早い方なのだろう

けれど、運動は大嫌いだ

萌々香

でも運動大嫌いだもん…

萌々香

マラソン大会するなら3日間ご飯抜いた方がましだよ…笑

夏帆

えっ、嘘ー!

夏帆

でも嫌いでもさ、早ければすぐ終わるもんじゃない?

萌々香

そうかな〜

皆にもそう言われる

夏帆

でもさ、6年生最後でしょ?ちゃんと走りきっていい思い出にしたい…!

笑顔でそう言う

「6年生最後」この言葉を何度聞いてきたか

萌々香

いい思い出なんかにならないよ…サボれるならサボりたい…

きっとこの一言は、走りきりたいと努力してる人傷つける

夏帆

私もサボりたいけどさ〜、せっかくだし笑

萌々香

そ、そうだよね…!

何事も楽しもうとする素敵な貴方にみとれた日だった

それから何度も夏帆が校庭で走ってるのを見た

息を切らしながら、全力で

とても辛そうに走る夏帆が私の目には輝いて見えた

けれど私は、1度も少しも走ろうとしなかった

夏帆

はぁ…はぁ…

萌々香

一緒に走ればいいのに

せめて飲み物でも渡せたのに

萌々香

(何で私はこんなに弱いのか…笑)

先生

ピピーッ!

先生

皆準備運動!

とうとう本番当日が来た

緊張で今にでも息がなくなりそうだ

萌々香

ふぅ…ふぅ…

夏帆

1、2、3、4!

隣を見ると、晴天の光に照らされながら笑顔で準備運動をする夏帆

まるで太陽のようだった

先生

皆緊張してると思うが、“6年生最後”だ!全力を出し切れ!

萌々香

(またそのセリフかよ…)

先生

じゃあここから30分待機だ!

夏帆

ふぅ…緊張する笑

萌々香

分かる、、笑

鳴り止まない心臓の音

夏帆

うっ…

萌々香

夏帆!?

夏帆

お腹痛い…吐き気がする…

萌々香

ちょっと、大丈夫!?

萌々香

せんせーい!

先生

夏帆大丈夫か?

夏帆

大丈夫です…

先生

待ってろ、保険の先生呼んでくるからな

夏帆

だから大丈夫です…

萌々香

夏帆、大丈夫じゃないって…

保険の先生

夏帆ちゃん大丈夫?

夏帆

あの…昨日の夜に女の子の日来ちゃって…

保険の先生

あらら…昨日なったばっかりだと危ないわよ

保険の先生

今日見学する?

夏帆

大丈夫、です…

保険の先生

ほんと?じゃあ様子みててね

夏帆

はい

二人の会話を私は眺めることしか出来なかった

夏帆がどうしてあんなに見学したがらないのかが私には分からない

萌々香

(私だったら見学してるのに)

夏帆

う…うぅぅぅ…

萌々香

夏帆ほんとに大丈夫!?

夏帆

ヤバいかも…

萌々香

無理して走らなくても…

夏帆

でも!ここで見学は…

夏帆

いった…ゴホッゴホッ…

保険の先生

夏帆ちゃんそろそろ本番よ、大丈夫?

萌々香

先生、夏帆走らない方がいいと思います

保険の先生

そうよね、見学しなさい

夏帆

はい…

萌々香

(あぁ、見学いいなー)

本当はきっと、夏帆の方が辛い思いをしている

でも絶対に走りたくなかった

そして気づいたら…

萌々香

先生、私もお腹痛いです…

そう言っていた

保険の先生

萌々香ちゃんも!?大丈夫?

萌々香

いやっ、あの…

私はその場にしゃがみこむ

走れる、走れるのに

萌々香

痛い…です…

嘘をついてしまった

けれどそれでも私の心の中は

走りたくない

走りたくない

走りたくない

先生

萌々香、お前も痛いのか?

萌々香

は、はい…

嘘の感情を表に出して辛そうな顔をする

先生

顔色も夏帆に比べたら大丈夫そうだが…

先生

どうするか?見学するか?

萌々香

えっと…

先生

走っても辛かったら途中でギブアップできる

先生

そっちで様子見るか?

萌々香

いや、見学…

言ってしまった

先生

分かった。じゃあ2人とも見学スペースに

保険の先生

私が連れてきます。

そして連れてかれた空と同じ青色のレジャーシートの上

夏帆

萌々香

会話が1つもない静まった屋根の下

そこに急に鳴り響くホイッスルの音

先生

ピピーッ!皆並べ!

萌々香

(始まるんだ…)

ぞろぞろと歩いてくる6年生と、違う学校の知らない人達

お腹なんて全く痛くない むしろ元気、走れる

先生

よーい!

待って、走れる…

パーンっ!

ピストルの音とともに皆がいっせいに走り出す

その光景を私は眺めるだけだった

夏帆

あーあ、始まっちゃった…

辛そうな顔でそう呟く君

夏帆

せっかく練習したのに、全部無駄になっちゃっな笑

萌々香

夏帆

萌々香、お腹大丈夫?

痛くない。少しも

萌々香

うん、多少は…笑

また1つ嘘をつく

萌々香

夏帆は?

夏帆

私は意外ときついかも…

萌々香

そっか…

夏帆

あ、見て!皆折り返し地点まで来たよ!

萌々香

凄い…はやっ

夏帆

萌々香も早いでしょうが!笑

萌々香

だからそんなこと…笑

辛いのを抑え笑顔で話しかけてくれる君

けれどすぐに表情が曇る

夏帆

私さ、あの後も練習してたんだ

一生懸命走っていた夏帆の姿が思い浮かぶ

夏帆

でも…出れな…かった…

萌々香

夏帆…

君の目に涙が溜まる

夏帆

本当は、走りたかったのに、!

夏帆

あの後諦めてなければ!

夏帆

この弱者!!

萌々香

違う!

萌々香

夏帆は危なかったんだよ?もしかしたら倒れてたかもしれないんだよ?

萌々香

お腹痛くて苦しかったんだもん。諦めたことにはならないよ…

そうだ、諦めたのは私だ

練習もせず、弱音を吐いて、最終的には仮病まで使って

弱者は私なんだ

先生

みんなゴール!

先生

お疲れ様!

皆がぞろぞろと歩いてくる

一人一人の顔が凄く清々しい

夏帆

うっ…えぇ…グスッ

隣にいる貴方はまだ泣いている

けれどその涙も悔しさの涙。

悔し涙を流す君は私の憧れる人だった

ガラガラガラ

扉を開けると皆がいっせいにこちらに顔を向ける

するとたくさんの女子がこっちに向かってくる

クラスメイト

夏帆ちゃんお腹大丈夫!?

クラスメイト

辛かったよね…保健室でまだ休む?

その人たちはいっせいに夏帆の周りを囲む

夏帆

大丈夫…だよ!

クラスメイト

萌々香ちゃんは?

萌々香

えっ、私?

クラスメイト

萌々香ちゃんも辛かったよね…大丈夫?

萌々香

そんな…私は…

途端に夏帆が言ってた言葉を思い出す

萌々香

私は…っ!

萌々香

っ…

萌々香

走りたかった…!

「走りたかった」なんて初めて思った

初めて学校で泣いた

初めて悔し涙を流した

クラスメイト

萌々香ちゃん!?

クラスメイト

本当に大丈夫!?

夏帆

萌々香!?

周りがざわつく。でもそんなのどうでもいい

萌々香

走れたのに!!走れたのに!!

萌々香

諦めなければ…良かった…!

萌々香

走れば…良かったんだ…

そっか、これが罪悪感って言うんだ

クラスメイト

そんなことない!萌々香ちゃんは頑張ってるよ!

クラスメイト

そうだよ!

やめてよ…こんな酷い私に優しくしないでよ…

クラスメイト

萌々香ちゃん落ち着いて?

夏帆

萌々香…

きっとこの罪悪感は二度と消えない

一生心に残されるだろう

「後悔」皆1度はしたことあるだろう

1度考えてみよう。後々後悔しないか

それは思いやりと同じだと思う

夏帆

萌々香、落ち着いた?

萌々香

うん…!ありがとう…!

萌々香

(夏帆のおかげでいろんなことに気づけたな…)

これからは後悔しないように、悔いのないように。

何事も諦めずに前に進んでいこうと思う

萌々香

(夏帆みたいにね…笑)

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174

コメント

52

ユーザー

感動した·····( ᵒ̴̶̷̥́ ⌑ ᵒ̴̶̷̣̥̀ )

ユーザー

そんなことみんな1回はあると思う…… 感動した……( ;∀;)イイハナシー 心に響くいいお話だったよ!

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