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蘭side
美術室には一年生と二年生が 数人いるだけだった。
黒板の隅に
「先生は今日出張です また明日。」
という走り書きを見つけ 美琴が肩を落とす。
桜黄みこと
桜黄みこと
雨乃こさめ
イーゼルの上に載せられた キャンバスを覗き込み 恋醒が感嘆の声をあげる。
桜黄みこと
桜黄みこと
桜黄みこと
鉛筆などを用意する手を止め 美琴が恋醒の手元を見やる。
そこには昨日と同じく スケッチブックと鉛筆 消しゴムが並んでいる だけだった。
恋醒は肩を竦め、
「えへへ、」と苦笑いする。
雨乃こさめ
桜黄みこと
桃瀬らん
私は机に頬杖をつきながら ぼんやりと2人の会話に 耳を傾けていた。
自分自身もコンクールに 出品するのに キャンバスはおろか スケッチブックもまっさらだ。
コツコツ型の美琴はもとより アイデア待ちだと 言っている恋醒も スケッチブックには おびただしい数のラフが 描かれている事を知っている。
本当の意味で 何も形に出来ていないのは 私だけなのだ。
雨乃こさめ
雨乃こさめ
ふいに恋醒に呼びかけられ 私は小さく肩を揺らした。
桜黄みこと
桜黄みこと
忙しく動いていたペンが止まり 美琴も遠慮がちに 会話に参加してくる。
雨乃こさめ
こうもきっぱりと「好きな人」と 言葉にされると 恥ずかしくなってくる。
私は顔に熱が集まるのを 感じたが、昨日の やり取りが思い出されて 一気に頭が冷えた。
桃瀬らん
桃瀬らん
雨乃こさめ
私の芝居に 恋醒も態々声色を変えて 乗ってくれる。
堪らず美琴も笑い出し すっかり場の空気が 和やかになった。
深刻ぶらずに 済んだ事にホッとし 私はいつもの明るい調子で 冗談混じりの報告をする。
告白は出来たけど、あくまでも 予行練習だと言ってしまった事。
その言葉を信じた威榴真は これからも練習に 付き合ってくれる事。
話を聞き終えた 恋醒と美琴は 仲良く揃って 口をあんぐりと 開けていた。
桜黄みこと
桜黄みこと
綺麗に手入れされた髪から 覗く美琴の丸い瞳が ぱちりぱちりと瞬く。
私は曖昧に笑い返しながら言う。
桃瀬らん
桃瀬らん
駅前のラーメンという単語に 恋醒がぴくりと反応した。
机に身を乗り出し 「もしかして新しく出来た所?」と 目を輝かせる。
雨乃こさめ
桃瀬らん
桃瀬らん
自主ツッコミし 頭を抱える私に 美琴は真剣な表情で 深く頷く。
桜黄みこと
雨乃こさめ
冷静な恋醒の指摘に 私も落ち着きを取り戻した。
コホン、と咳払いし 改めて何をしたかったのか 説明しようとする。
桃瀬らん
桃瀬らん
桃瀬らん
すぐいたたまれなくなり 最後は殆ど雄叫びに なっていた。
椅子にだらぁっと身を任せながら 悶絶する私に恋醒が 可愛らしい笑顔を見せる。
雨乃こさめ
桃瀬らん
桜黄みこと
桜黄みこと
だらしなく開いていた 私の脚を、美琴の 白くて細い指がそっと 閉じさせた。
パッと見ただけでも 爪の先まで手入れが 行き届いているのが分かる。
桃瀬らん
見た目だけでなく 中身まで女子なのが美琴だ。
普段絆創膏を 持ち歩かない私に 持ち歩くよう 勧めたのも彼女だった。
そのお陰で何かとよく 怪我をする威榴真に 何度も絆創膏を 貸す事が出来て 美琴には感謝しきれない程 感謝している。
桃瀬らん
親友と幼馴染が 良い雰囲気なのは 私にとっても 気になる所だった。
2人はクラスも違うし 選択教科が被っている 訳でもない。
接点といえば 休み時間などに須智が なっちゃんや威留真に 会いに来るタイミング くらいのものだった筈だ。
桃瀬らん
以前、それとなく須智にも 聞いた事があった。
明朗快活な彼にしては 珍しく、視線を泳がせ はぐらかすような 答えが返ってきた。
『まぁ、成り行きで ... ?』とか。
桃瀬らん
そもそも須智は 面倒見が良くて 皆んなの保護者的存在ではあるが 女子に対しては 一線を引いている。
つるむのは男子ばかりで 唯一の例外は幼馴染の 私くらいのものだ。
美琴とは話が合うと 言っていたけど きっとそれだけではないだろう。