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なまこの肉詰め
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なまこの肉詰め
俺が中学2年生の頃、それは急に起こった。
俺は動物の餌やり当番だったので校舎裏のウサギ小屋に行っていた。
するとウサギ小屋に背を預け、顔を腕に埋めている友達のリナがいた。
カナタ
カナタ
リナ
リナ
リナ
その言葉の意味が理解出来なかった。
リナは学年の中でも常に成績トップで性格も良い優等生だった。
そんなリナが何で人を殺したんだ?
カナタ
圧をかけないように目線をリナと同じ高さに持っていく。
リナ
リナ
リナの声は震えていた。
カナタ
リナ
リナ
リナ
そう言ってリナは少し微笑んだ。
リナ
そんなリナに俺は言った。
カナタ
リナ
リナ
カナタ
リナ
リナ
リナ
カナタ
カナタ
カナタ
リナ
財布、ナイフ、ケータイ、ゲームをカバンに詰める。
そんな準備の時間すらとても楽しかった。
いらない物は全部ゴミ箱に捨てた。
クラス全員の集合写真、クラス全員の交換日記。
今となっちゃあもう全部要らない。
カナタ
リナ
カナタ
リナ
リナ
カナタ
こんな時でも明るい彼女を見て自分も嬉しくなった。
リナ
リナ
カナタ
カナタ
そして俺達は逃げ出した。
この醜くて狭いこの世界から。
家族も、クラスの奴らだって全部捨てた。
だってリナと居る方が楽しそうだったから。
カナタ
カナタ
リナ
リナ
リナ
カナタ
リナ
カナタ
小声でそう呟く。
リナ
リナ
カナタ
空き家に1度身を置いた。
リナ
カナタ
リナ
リナ
カナタ
リナ
カナタ
リナ
リナの手を握った時、微かな震えも既に無くなっていた。
あの時あんなに震えていた手も、今は頼れる手になっている。
リナ
カナタ
電車が来るのも恐れずに、線路の上を歩く。
誰にも縛られない、線路の上で。
金を盗んで、2人で逃げた。
リナ
カナタ
カナタ
リナ
額の汗も、落ちたメガネだって。
リナと居れば全部どうでも良かった。
カナタ
リナ
リナ
カナタ
人気の無い神社に入る。
罰当たりかもしれないが賽銭箱の前で寝転がる。
リナ
リナ
リナ
カナタ
カナタ
リナ
リナ
リナ
リナ
リナ
カナタ
リナ
カナタ
物音がする。
大人数の足音、恐らく俺達を探す声。
カナタ
カナタ
リナ
宛もなく彷徨う蝉の声がうるさい。
水分だってろくに取らずに揺れる視界。
迫り狂う鬼達の怒号。
カナタ
リナ
バカみたいにはしゃぎあった。
リナ
カナタ
リナ
リナ
ふとリナはナイフを持った。
カナタ
リナ
カナタ
リナ
リナ
リナが叫ぶようにそう言う。
それと同時に俺の全身が今まで感じた事の無い感覚に包まれる。
リナ
リナ
リナ
リナ
ㅤ⠀ ㅤ⠀
ㅤ⠀
カナタ
そうしてリナは首を切った。
まるで何かの映画のワンシーンだ。
白昼夢を見ている気がした。
気づけば俺は大人に捕まっていて。
リナが何処にも見つからない。
リナだけが何処にも居ない。
リナの姿が消えると同時に、先程まであった全身の感覚が嘘のように無くなっていた。
カナタ
1ヶ月ぶりくらいに登校した。
先生も、クラスメートも、俺の事を心配していた。
家族も、近所の人達も。
でも、リナだけはどこにもいなかった。
それどころか、周りの奴らはリナの事を聞いても来なかった。
学校のリナの机の上には、8本の花が生けてあった。
5本のバラ、ハーデンベルギア、スイートピー、ガーベラ。
この花は、リナが家族に自分が死ぬ時は学校にこれを置いて欲しい、と頼んでいたそうだ。
数ヶ月前から頼んでいたそうだから、こうなる事は予想していたのかもしれない。
その予想が合ってしまった事が1番悲しかった。
そして時は過ぎていった。
ただ暑い暑い日が過ぎてった。
家族も、クラスの奴らも居るのに何故かリナだけは何処にもいない。
あの大雨が降っていた日を思い出す。
俺は今も今でも謳ってる。
"君"をずっと探しているんだ。
一緒に居たら不思議と笑顔になって、一緒に居たらなぜか楽しくて。
いつも明るくて、元気をくれた君の事を。
君に言いたい事が沢山あるんだ。
あの日から4年後の9月。
あの日の雨の匂いを繰り返す。
リナの笑顔は
リナの無邪気さは
ずっと俺の頭の中を渦巻いている。
「カナタは何も悪くないよ」
この一言だけで俺の心臓が握り潰されるように痛い。
悪くないのはリナなのに。
リナは何も悪くはないから。
カナタ
カナタ
カナタ
カナタ
カナタ
カナタ
カナタ
ねぇ、リナ。
俺さ、トリガーって言う能力みたいなのがあったらしいんだ。
トリガー使いって言うらしい。
俺はトリガー使いの中でも特に珍しいトリガーを持ってたんだ。
『洗脳・被害妄想』だってさ
多分、リナが自ら命を絶ったのも、俺に何も悪くないって言ってたのも、このトリガーが勝手に発動してたんだと思う。
今はリナが居なくなってからずっと独りだった俺の事を救ってくれた人が居るよ。
リナみたいに明るくて、一緒にいると不思議と元気が出てきて。
彼らは俺と同じ様にトリガーを持ってたよ。
そのトリガーを使って依頼を解決していってるらしい。
俺もその依頼を片付ける手伝いをさせてもらう事になったんだ。
でも俺は皆みたいにトリガーは使わない。
リナみたいに、また大切な人を失いたくないから。
皆にはトリガーを使えない理由は話してないよ。……1人を覗いて。
彼らは優しいから。
俺がそんな事言ったら皆を心配させる。
だからあの時の思い出はトリガーと一緒に、誰にも開けられない所へ隠しておく。
それが俺の今出来る事だろう。
……ねぇ、リナ。
もう俺は皆みたいにトリガーが無くてもこんなに強くなったよ。
昔みたいに弱くなくなったんだ。
だからさ、
帰ってきてよ
お願い
俺はリナを失ったまんま死ねやしない
今でもリナは俺のせいで現世に居る。
彼が教えてくれたから分かる。
「いつかは行かせてやれよ」って言ってた。
でもごめんね。
俺はまだ離したくない。
あの日の思い出ごとリナを離したくない。
離したら、もう何もかも忘れてしまう気がするから。
だから俺はリナを昔からずっと現世に留めている。
……ごめんね。
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カナタ
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カナタ
カナタ
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カナタ
カナタ
カナタ
カナタ
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カナタ
カナタ
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カナタ
カナタ
どうかこれ程幸せな日々を
もう二度と奪われませんように
コメント
1件
うわあ……読んでて胸が苦しくなった……。 リナの「カナタは何も悪くない」って言葉が、本当は自分に言い聞かせてたんだろうなって思うと切なすぎる。 最後の「帰ってきてよ」、すごく伝わってきたよ。 トリガーの真相も含めて、この重さをちゃんと描ける蒼乃さん、ほんと尊敬です🖤 続きも読みます。