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桜瀬 ころ
水瀬 さと
るぅ
一瀬 りぬ
コンコン、と静かな病室のドアを叩く音が響いた。
桜瀬 ころ
ベッドの上で、いつも通りの明るい声で返事をした。 僕は少し体調を崩して入院している。入院していること自体は、恋人の桃くんも含めてみんなが最初から知っている。だから、ころは「ただの入院で、病室でゆっくり休んでいるはずだ」と信じ切っていた。
けれど・・・・・・僕には、さとくんに絶対に言えない秘密があった。 それは、すでに医師から「余命宣告」を受けていて、今日はその宣告を受けてから2日目だということ。残された時間はあとわずか。けれど今は、まだこうして普通に起きて、普通に話すことができる。
ガチャリとドアが開くと、そこには少し息を切らせたさとくんの姿があった。全国ツア一の準備やリハーサルで誰よりも忙しいはずの、大好きな彼氏だ。
水瀬 さと
水瀬 さと
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
さとくんはベッドの横の丸椅子に腰を下ろすと、少し照れくさそうに、持ってきてくれたゼリーや着替えをサイドテーブルに置きながら、愛おしそうに僕の顔をじっと見つめた。
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
僕がいたずらっぽく笑うと、さとくんは少し顔を赤くして、ふいっと目をそらした。
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
そんなさとくんの姿を見つめながら、僕の胸の奥は、優しさと切なさでいっぱいになっていた。
19歳のあの日。 夢だったバンドのメンバーとうまくいかずに絶望し、自ら命を絶とうとしていたさとくんを、僕は必死に手を伸ばして救い出した。あの日から、さとくんは僕の姿が見えなくなるだけで過呼吸を起こしてしまうほど精神的に脆かったけれど、僕が引き合わせたソロ活動中のりぬくんたちと一緒に音楽をやって、最近はもう本当に過呼吸を起こさなくなってきている。
さとくんは、もう僕がいなくても前を向いて歩いていけるくらい、強くなってくれた。 でも、もし今「余命宣告を受けた」なんて本当のことを言ってしまったら、さとくんは絶対に自分のことも一緒に・・・・・・と、後を追おうとする。僕はさとくんに生きてほしくて、あの時命を救ったのだ。 だからこそ、これ以上さとくんを傷つけたくなくて、ツアーの夢を壊したくなくて、弟のるぅくんやりぬくんに口止めをして、余命宣告のことを必死に隠し続けていた。
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
水瀬 さと
さとくんの真っ直ぐな言葉が、僕の胸に、 痛いほど突き刺さる。 そのステージを一番前で見ることは、もう叶わない。けれど、僕は涙を必死にこらえて、 最愛の彼氏に微笑みかけた。
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
水瀬 さと
水瀬 さと
さとくんは優しく微笑むと、僕の手をそっと握りしめた。
僕が隠している命のタイムリミットに、さとくんはまだ、何も気づいていない。 窓の外には綺麗な夕日が広がっていて、2人の穏やかで幸せな時間を、切なくも温かいオレンジ色で包み込んでいた。
『全国ツアー初日』の朝は、驚くほど静かに始まった。 窓の外を見上げると、雲ひとつない、どこまでも真っ直ぐな青空が広がっている。 けれど、ベッドの上で横たわる僕の体は、数日前のお見舞いの時とは比べものにならないほど重くなっていた。
桜瀬 ころ
朝から胸の奥が焼けるように熱くて、小さく息をするだけでも鋭い痛みが走る。
今日だけは耐えなきゃいけない。だって今日は、さとくんたちの夢の全国ツアーが始まる、一番大切な日だから。
その時、急に喉の奥から熱い塊がせり上がってきた。
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
激しく咳き込んだ瞬間、口の中から生暖かい液体が溢れ出し、白いシーツの上にドクドクと広がっていった。
あまりの苦しさと恐怖に、ベッドの柵を掴む手から力が抜けていく。
ガラガラッ!!!
るぅ
るぅ
るぅ
ちょうどその時、僕にお見舞いの荷物を持って病室のドアを開けた弟のるぅくんが、その光景を目撃した。
るぅくんは持っていた荷物を床に派手に落とし、顔から一気に血の気が引いた状態で、 僕のベッドへと全力で駆け寄ってきた。
るぅ
るぅ
るぅ
るぅくんは僕の体を必死に支えながら、狂ったようにナースコールを押し、廊下に向かって叫んだ。
ドタバタと医師や看護師たちが部屋に押し寄せ、僕の体はストレッチャーに乗せられて、 すぐに緊急治療室(ICU)へと運ばれていく。
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
酸素マスクをあてられても、僕の呼吸は狂ったように激しく荒れていた。
荒い呼吸をするたびに、胸が激しく上下して、僕の意識はそこで急速に遠ざかっていった。
――だから僕は、この後自分に何が起きるのかも、大好きな人から電話がかかってきていることすらも、何も知らなかったんだ。
るぅ
ころにぃのスマホを握りしめ、廊下で一人待ち続けてくれている。
緊急治療室の重い扉の上が、赤く点灯している。
「治療中」の文字を見つめながら、僕は廊下のパイプ椅子に一人、ぽつんと座っていた。
ころにぃのあの、今にも止まってしまいそうなほど激しくて苦しそうな、荒い呼吸の音が頭から離れない。
自分の両手をじっと見つめる僕の身体は、恐怖でガタガタと震えている。
1週間前、ころにぃが余命宣告をされたあの日の病院の帰り道。
ころにぃいは小さく震える声で、僕にこう言ったんだ。
桜瀬 ころ
るぅ
桜瀬 ころ
るぅ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
桜瀬 ころ
大好きな、自慢のころにぃが泣きながら命をかけて頼んできた、最初で最後のお願い。
だからこそ、僕は今日まで、どんなに辛くてもその約束を胸に刻み、笑顔で嘘をつき続けてきた。
その時――静まり返った廊下に、僕が持っていたころにぃのスマートフォンが、冷たく震えた。
画面に表示されたのは、ころにぃが大好きな『さとくん』の名前。
けれど、ころにぃは自身は今、緊急治療室の中で必死に命を繋ぎ止めていて、電話に気づくことすらできていない。
廊下で一人、画面を見つめる僕は、 頭が真っ白になっていた。
出ないほうがいいのか、でも出ないとさとくんが不審に思うかもしれない。
ころにぃは
桜瀬 ころ
って言っていた。
僕は溢れる涙をゴシゴシと拭うと
さと) あっ!ころ?
スピーカーから、本番直前の緊張と、声を聞ける喜びで弾んでいる、ころにぃが大好きなさとくんの声が聞こえてくる。
けれど、目の前の緊急治療室の赤いランプ、 そしてさっきまで聞いていたころにぃのあの荒くて苦しそうな呼吸の音。
るぅ
さと) ん?るぅ?どうした?ころは?
るぅ
さと ) るぅ………?
るぅ
これ以上話したら、ころにぃが激しく呼吸を荒くして、今まさに緊急治療室の中で命の危機なんだって、すべてをぶちまけて泣き叫んでしまう。
そしたら、ころにぃがあの日に命がけで僕に託した「さとくんには言わないで」という約束を、僕の手で破ってしまうことになる
限界を迎えた僕は、ころにぃとの約束を守るため、そして溢れる涙を隠すために、通話終了のボタンを乱暴に押し込んだ。
ピッ――。
コメント
1件
読ませていただきました〜! まずもう冒頭から胸がいっぱいに🥺✨ 同じ病気持ちでありながら明らかな元気側面として振舞っているところ・役者の詳細対比光景素晴グラフィックですね… > 「愛している相手だからこそ正体隠しながら逝こうとする」 ここ絆深まればなお辛くなりますよね😭 全員感じ方が本気人だなと思いました!! ただ個人的萌:オチへ向けて時間制限淡々放置→赤ランプ付いた夜場誘発による通話挫折… 完璧🌲ですかココ!! 話としては暗ーーだけどこそば過呼吸ではなく信頼される停止察知かつ助け合える関係性構築されて変化途中,それが映像鮮烈(緊急刻々)所以訴求シーンする心地再現美麗!! 続編己自身待ち遠ですが慌捏なく自分のペース進化楽しんでください📝🤍
届かなかった声。
#ttjp
るるか🪼
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